2
優斗は頭が良くて、真面目。大学の課題は締め切り前に終わらせるし、テストの点数も安定して高い。だからこそ、優斗から「大学ってつらいね。」という言葉が出たときは驚いてしまった。
「優斗...どうしてつらいの?」
「息苦しい感じがする。ずっと何か重いものを背負ってる気がするんだよ。」
「...そっか。」
周りの人には分からない、優斗の心の黒い靄が何なのか、私にはわかった気がした。
「優斗。明日、大学に行かないで。一緒に休もう。」
「それは...できないよ。行かなきゃいけないんだよ。」
多分優斗は、出された課題は完璧にできないといけないし、成績も良くないといけないと思っているんだろう。そしてそれは、大学に入って優斗が「頭が良い優等生」というポジションについてしまったからだ。
「優斗。...優斗。」
「美月...」
「ずっと一番でいる必要なんてないんだよ。」
「...」
「一番じゃなくても、私は優斗の隣にいるよ。」
優斗は、「頭が良い優等生」というポジションを守ることに必死なんだ。優しすぎる優斗のことだから、課題の答えを聞かれて、困りながらも全部教えてあげているんだ。もしそのポジションから外れてしまったら、課題の答えを教えなかったら、大学のみんなからどう思われてしまうのか不安で仕方ないんだ。
「...でも、俺には、これしかない。」
「そんなことない。他にも優斗の良いところはあるの。だから私は優斗と一緒にいたいって思うんだよ。優斗、お願い。」
「...ごめん、美月。」
「ありがとう、って言って。」
私は少しの間、優斗を抱きしめた。優斗の方がつらいはずなのに、私も悲しくなってしまった。他の人より「できる」だけで、こんなにつらい思いをするなんて。
「...俺、どうすればよかったんだろう。」
優斗の眼は、見つめることが怖くなるぐらい、真っ黒に見えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます