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 優斗は頭が良くて、真面目。大学の課題は締め切り前に終わらせるし、テストの点数も安定して高い。だからこそ、優斗から「大学ってつらいね。」という言葉が出たときは驚いてしまった。


「優斗...どうしてつらいの?」


「息苦しい感じがする。ずっと何か重いものを背負ってる気がするんだよ。」


「...そっか。」


 周りの人には分からない、優斗の心の黒い靄が何なのか、私にはわかった気がした。


「優斗。明日、大学に行かないで。一緒に休もう。」


「それは...できないよ。行かなきゃいけないんだよ。」


 多分優斗は、出された課題は完璧にできないといけないし、成績も良くないといけないと思っているんだろう。そしてそれは、大学に入って優斗が「頭が良い優等生」というポジションについてしまったからだ。


「優斗。...優斗。」


「美月...」


「ずっと一番でいる必要なんてないんだよ。」


「...」


「一番じゃなくても、私は優斗の隣にいるよ。」


 優斗は、「頭が良い優等生」というポジションを守ることに必死なんだ。優しすぎる優斗のことだから、課題の答えを聞かれて、困りながらも全部教えてあげているんだ。もしそのポジションから外れてしまったら、課題の答えを教えなかったら、大学のみんなからどう思われてしまうのか不安で仕方ないんだ。


「...でも、俺には、これしかない。」


「そんなことない。他にも優斗の良いところはあるの。だから私は優斗と一緒にいたいって思うんだよ。優斗、お願い。」


「...ごめん、美月。」


「ありがとう、って言って。」


 私は少しの間、優斗を抱きしめた。優斗の方がつらいはずなのに、私も悲しくなってしまった。他の人より「できる」だけで、こんなにつらい思いをするなんて。


「...俺、どうすればよかったんだろう。」


 優斗の眼は、見つめることが怖くなるぐらい、真っ黒に見えた。

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