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「ただいま、美月。」
「おかえり、優斗。」
正直、俺にとって大学は想像より何倍も大変なものだった。なんというか、精神的につらいし、緊張する。そんな自分にとって、「おかえり。」と言ってくれることはとても安心する。
「...ありがとう。」
「...どういたしまして。」
うん、やっぱり安心する。突然感謝されても、こっちの事情を考えて深入りしてこない。本当に、ただ一緒にいるだけなのが、気楽でいい。
ただ、いつも一緒にいてくれることに対して、何も返してあげられていないのは良くないと思っている。何かしらプレゼントしたいな~なんて思いながら美月の顔を見つめる。
「...?」
いや、こいつに何をあげても絶対「ありがと。」で終わるじゃん。まあ、それでもいいんだけどさ。
そもそも、美月が欲しいものが全然分からない。これだけ一緒にいるのに?と思うかもしれないけど、一緒にいるだけだから分からないんだよ。
まあ、俺にサプライズは似合わないってことにして、本人に聞いちゃおう。
「なあ、なんか欲しいものある?」
「急だね。んー、特にないかな。」
「まあそうだよな。」
「なんで?」
「いや、美月にプレゼントでも渡そうかなって。でも、サプライズは俺が失敗しそうだし、欲しいものが分からなかったから聞いた。」
「別にプレゼントなんていらないよ。」
「でも、なにかしないと、申し訳ないっていうか...」
「私、そんな感謝されるようなことしたっけ?」
「...いつもおかえりっていてくれるし、一緒にいてくれるし...」
「じゃあ、私にもおかえりって言って。一緒にいて。」
「それだけでいいの?」
「うん。」
「...そっか。」
きっと美月も、俺と同じなんだろうな。
「おかえり、美月。」
「んー、今日はずっとここにいるんだけどね...まあ、ただいま。」
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