3 みんな違ってみんないい、わけねえよ

結構、喋れるようになってきたな。


なるほど。


そろそろ幼稚園に入るんだってさ。


見ろよ。自分の年齢を指で立てているぜ。


おいおい、それは三歳だぜ? もうお前は5歳だろう?


実をいうと、幼稚園の時にあまりいい思い出がないんだ。


思い出すのはいつだって、少し嫌な記憶さ。


始まるみたいだな。


母親に手を引かれて門をくぐってる。


そうそう、この門が通りづらくていつも引っ掛かってた。


誰も不便に感じなかったのか? 何度も、帽子が錆びた鉄の腕に持ってかれたもんだ。


なかなか周りの連中と打ち解けられない様子だな。


それもそのはずさ。


だって、流行りの番組も見てないし、みんながもっている遊び道具も買い与えてもらえないんだからな。


ほら、不安そうな表情になってきやがった。


自分が疎外されている感覚がするんだろう。


可哀そうに。


やめとけって。


そうやって母親に頼んでも、状況は変わりっこないんだから。


今のお前には欲しいものは手に入らない。


誰かに貸してもらうのもやめといたほうがいいぜ。


世の中、持たざる者は淘汰されるんだ。


気のいいやつばかりとは限らないさ。


そう。


作るしかないよな。


なければ生み出すしかない。


でも、それを友達に見せるのはやめときな。


あ、言わんこっちゃない。


言ったろ? 持たざる者は淘汰されるんだ。


やつらはお前を見て「どうして、そんなもんも買ってもらえないんだ?」って不思議がってるぜ。


ほんとに参ったな。


子供ってのは、出るものを打つんだよ。


そういう大人たちに育てられたのかな。




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