1 生まれ出づる悩みとか

ほら見ろよ。


僕が生まれたよ。


まったく騒がしく泣きわめきやがって、こりゃあ両親は相当うるさかっただろうな。


いや、案外そうでもないらしい。


母親が僕を抱きかかえているよ。どうしてそんな幸せそうな顔ができるんだ?


数分前まで自分の腹を痛めつけていた張本人だぜ?


生まれながらにして迷惑者さ。困ったもんだな。


父親も嬉しそうだ。


なにはともあれ、僕は望まれて生まれてきたってわけか。


とっても誇らしいね。



おっと、もう歩けるようになったのか。 随分と速いな。


なんだって? 前世の記憶でもあったのかって?


君、それはご法度だよ?


嘘だよ。そんなものはなかったよ。


ただ単純に他より少し成長が速かっただけさ。


それがいいことなのか、分からないけどね。


お、今度は言葉を話し始めたな。


我ながら優秀だ。


最初に話した言葉は………


どうやら聞き逃しちまったみたいだ。


二人とも慌ててるよ。可笑しいな。


まるでこれからずっと幸せに生きるみたいな顔をしてる。


何? 誰だってそう思うだって?


まあそうだけどさ。


わかったよ。今は夢を見せておくよ。

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