愉快な存在証明
古川
◯
神様は愉快なことが好きだ。だから俺たちは愉快なことをして存在を証明する。そうしないと魂ごと消されてしまう。
同じクラスの村田は無口なつまらない奴で、そろそろ消滅してもおかしくなかった。一発逆転を狙って月曜全校朝礼で校長をギターに見立てて掻き鳴らしたが、神様のツボじゃなかったようで校長もろとも消滅した。
向かいのおじさんは堅実な会社員だったが没個性気味で、消滅対策として鬼瓦ヘアーにしたが神さまにウケなかったため消滅。行きつけのコンビニ店員はいらっしゃいませを「いらっちゃいまちぇ」に変えて愉快さをアピールしていたが神様の琴線に触れることができず消滅。
そんな中でも、俺は生存を続けている。あえて愉快さを主張しにいかない、という姿勢を貫くことによって逆に愉快な個体として存在をアピールしている。三日に一回、「存在証明? そんなもん鼻くそに丸めて飲み込んだわ!」みたいな独り言を呟いておけばいい。
そもそも存在とは単に結果であり、決して目的ではない。存在するために生きるのではなく、生きてきた結果自体が、俺の存在を証明する。
俺が俺であるために、ただ鼻くそを丸めるのだ。
愉快な存在証明 古川 @Mckinney
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます