第4話『追放の足音』(2/2)
ウルが緊迫した声で告げた。「早めにエネルギーを補給した方がいいです、零士様。最悪、言葉すら理解できなくなるかもしれません」。彼女の声は、零士の脳内で鮮明に響いた。それは、避けられない優先事項だった。今の状態で言葉がわからないのは、彼にとって致命的すぎる。
零士は少し焦りを隠せずに言った。「わかった、どうすればいいんだ?」彼の目は若干広がり、その瞳は真剣そのものだった。
ウルは冷静に答えた。「ダンジョンに行き、魔獣を捕食しましょう。それが最善の方法です」。
「捕食?」零士はその言葉に思わず聞き返してしまった。彼の眉が寄り、疑問と困惑が表情に浮かぶ。
「はい、詳細は現地に到着してから、私が操作を行うことで示します。それでよろしいでしょうか、零士様?」ウルの声には確信が篭もっていた。
「ああ、頼む」と零士は素早く応じた。彼の声には安堵と期待が混じり合っていた。
ウルは穏やかに「お任せください、零士様」と応じ、その声は零士の不安を少し和らげた。
一方、近くの二人組が消えるのを見ていた猫は、何やらモゴモゴと不思議な感じで言葉を紡いだ。「なんだか今日も忙しないわ」と、彼女の声は若干の憂いを帯びていた。
それを聞いた零士は驚き、「なんだ? 猫も忙しいのか?」と反応してしまった。彼の声は半分驚き、半分興味深げだった。
猫は首を傾げ、彼を見つめ返した。「あら? あらあらあら?」と、言葉は舌足らずで、どこか遊び心が含まれていた。
「ん? どうした?」と零士が近づいて尋ねると、猫は彼に興味を持った様子で、「あなた、言葉がわかるの?」と尋ねた。
零士は自然体で答えた。「ん? わかるって、普通に話してるだろ?」彼の声はやや傲慢な感じだった。
猫は座りながら、「ん〜、そんなことないんだけどね」と言い、その肉球を見つめながら続けた。
「あっ、ウルのおかげか……」と零士は思わず言葉を放った。
その言葉に、猫は驚いた表情を見せ、「ウル!……もしかして、あなた第一世代?」と質問を投げかけた。
零士は感心するほど猫の反応に驚きウルの名前が出たことで、「よくわかったな」と認めた。
猫は体をすり寄せ、「その前にお礼が先ね。ありがとう、助かったわ」と感謝の言葉を述べた。
「気にしないでくれ。どう見たって、あれはないからな」と零士は、彼女の礼を受け入れながらも、何となくその場を受け流した。
そして、猫は自己紹介を始めた。「そう……。ありがと。私はナル、第5世代よ」。
「第5世代か……。ここでは長いのか?」と零士は彼女の話に興味を持ちつつも、まだ状況を完全には理解できていなかった。
ナルは目を輝かせ、「そうね、もう数年はいるかしら」と答えた。その表情からは、どこか居心地の良さが感じられた。
零士は、「俺は数時間前にきて、何だかわけがわからずさ」と肩をすくめながら言い、その表情は戸惑いでいっぱいだった。
ナルは両足を揃えて座り、「結社に来たなら、登録は済んだの?」と尻尾を左右にゆっくりと揺らしながら尋ねた。
「いや、丁寧に追放されたよ」と零士は淡々と答えた。
「追放? あなたが?」とナルは意外そうに目を見開いて言った。
「ああ、たった今なんだ」と零士はその事実を説明し、肩をすくめた。
ナルはゆっくりと頷き、「なるほど。魔法も異能もないというわけかしらね」と言いながら少し首を傾げた。
零士は当たり前のように「そんなものがないところから来たからな。あったら逆に怖いよ」と答えた。
経験豊かなナルは、「そしたら捕食は? 今後どうするの?」と今後の計画を尋ねた。
零士は真剣な面持ちで、「無一文だし、捕食も必要だし、とりあえずダンジョンへ行こうかと……」と答えた。ウルにも同じことを言われ、その方向で動くことを決めていた。
ありがたいことに、ナルは「わかったわ。私がお礼に案内してあげる」と言い、その声には決意と親切が溢れていた。
零士は一瞬ためらい、「いいのか? 見ず知らずの俺に」と確認する。その声には不安と驚きが混じり合っていた。
猫は首を優雅に左右に振りながら、目を細めてウインクをし、「いいのよ? こうして会話できる相手を見つけたのも僥倖よ」と微笑んだ。その声には期待と安堵が溢れていた。
「そっか、よろしく頼む」と零士はほっと息をつき、感謝の気持ちを込めて言う。その瞬間、彼の表情が緩んだのが見て取れた。
猫は温かみのある笑顔を浮かべ、「こちらこそ。そしたら名前を教えてもらっても?」と尋ねた。猫の目は好奇心できらめいている。
軽く謝ると、「あっごめんごめん。俺は零士、そっちは? さっき聞いたっけか」と零士が応じる。彼の声には親しみやすさが滲み出ていた。
シンプルな返答に、猫は「あたしは雌猫のナル。あなたより先だけどナルでいいわ」と返した。ナルの声は軽やかだった。
零士は考え込むように「ん〜何となく、ここの世界の先輩って感じがするから、ナル姉でもいいか?」と提案する。彼の言葉には、尊敬と親近感が込められていた。
「ん? 何それ? 面白いわ。いいわそれで」とナルは笑いながら答え、この呼び名を受け入れる。彼女の声は楽しげで、新しい関係を楽しんでいるようだった。
「それじゃ、ナル姉よろしく」と零士は猫に伝えると、「よろしくね。早速ダンジョンに行きましょ、ついてきて」とナルは答える。彼女は興奮を隠しきれず、尻尾を左右に揺らしながら先を急ぐ。
零士はナルの後を追い、「わかった」と応じる。二人の足取りは軽く、ダンジョンに向けての期待でいっぱいだった。
こうして零士は、偶然にも同じ擬似生命体のAIを宿す猫ナルに会い、新たな仲間を得た。何もかもが初めてで、冒険に対する期待が彼の心を膨らませていた。未知のダンジョンが、彼とナルにどんな挑戦をもたらすのか――その足取りは確かなものだった。
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