第2話まだ終わってないのか

城が建っている。

その城は、傷一つなく、建ってからあまり日が経っていないように見える。

その城の目の前には、兵士がこれでもかと並んでおり、侵入者を通さない為のバリケードになっている。

そんな人のバリケードの死角になっている場所で、怪しい魔女ととある兵士が怪しい取引を行っていた。

もちろん怪しい魔女とは、私の事です。

「それでは、魔女様。これを持って王様の所に行ってください」

「お任せください」

出来るだけ魔女に見えるように黒い帽子を深く被って怪しく、しゃがれた声で返事をする。

ゴツゴツした鋼鉄の鎧を着た兵士は、私の声を聞いて少し笑いかけていた。

兵士の腰くらいしかない魔女の声が、滑稽に思ったのだろう。

鎧は立派でも兵士としては未熟だ!

私が本物魔女ならカエルに変えていたところだ。

私は、苛立ちを隠すように手に持っていた箒にまたがり、地面を強く蹴って出来るだけ、速度が出るように空を飛んだ。

まだ丈にあっていない師匠の服が、羽のようにバサバサと音をさせている。

流石に驚いたか、自分を笑っていた兵士が腰を抜かして倒れていた。

舐めてるからだ。

どんどん兵士が守っている城から遠ざかっていく。

街から遠ざかっていくと、街全体が見える。

この街は、石で出来た建物が多く、街全体で一つの建物に見える。

その中でも一番目立つのは、やはり木材で出来た領主の館だろう。

私が向かうところだ

周りが石で出来た建物しかないのに、一軒だけデカい木の建物があるから目立ってしょうがない。

街からは、怒声がそこら中からしている。

ある者は剣で戦い、ある者は殴り合う。

そんな大乱闘が町中で、起きている。

そんな風景を空から眺めている。

「にしても魔女の人材不足は、異常だね。こんな大事な祭りで空を飛ぶしか出来ないマヤに頼むなんてよ」

「うるさい。空を飛べるなら魔女と名乗っても問題ないわ」

せっかく気持ちよく空を飛んで王様のところに、飛んで行こうと思ったのに水をさしてきた。

「にしても、変なお祭りだよね。みんなで戦争ごっこするなんて」

そう。

この街で起きている騒ぎは、みんな祭りを楽しんでいるだけなのだ。

年に一度この街では、城を囲むように住民が争いを始めるといったお祭りがある。

城は木で出来たハリボテであり、城の前を守っている兵士も、今日限りの雇われた人達である。

「確か昔に暴君を追い出したじゃなかったか?」

「それとこの祭りが関係あるの?」

そう聞くとオリーは、暴君を追い出した話をしてくれた。

昔この街には、ある領主がいたそうだ。

元々は、優しい領主が治めていたらしい。

その領主が亡くなり、その子供がこの街を治めることになったが、それが問題だった。

その領主は、この街の人達を苦しめるのが趣味と言っていい程に、横暴な事を繰り返していた。

この街に、様々な税をかけていたらしい。

子ども税、水税、夜税。

普通に生きているだけでも、様々なお金が取られて、どんどん暮らしが苦しくなった。

当然街の住人からは不満が出てくる。

そこで暴君の弟とこの村の人達が、協力して領主を追い出そうとなった。

そこで始めたのが、ここで戦争ごっこって訳だ。

最初に、領主魔女を仕向けた。

「なるほど。それが私ってわけね。でも、なんで魔女なんて仕向けたの?」

「お前仮にも魔女を名乗るなら、水晶持たされた時点でなんとなく察せ。占いだ」

魔女は、領主に近いうちにこの街で争いが起こり、あなたに暗い闇をもたらすと。

それを聞いた領主は、まったく信じておらず、それどころか魔女に飲んでいた酒をかけたそうだ。

領主は、魔女をそのまま追い出してしまった。

だが、魔女の役目は領主に争いが起こると言う事を忠告する事だった。

そこから街全体で、領主を騙す為に長い時間をかけて戦争が起きていると錯覚させた。

銃撃戦を街中でおこなったり、領主の弟が死んだと偽装してみたりとなんでもやった。

そして、ついに領主は戦争から逃れる為にこの街から逃げ出してしまった。

領主がどこに逃げたのか、誰も知らず中にはまだ生きてると言う者もいる。

「それから毎年この街から領主を払う為に、こいだやってせんそ、おい!領主の館からだいぶ過ぎてるぞ!」

「ちょ!早めに言ってよ〜」

オリーの話を聞いていて全然周りを見ていなかった。

活気に溢れた領主の館周辺と違い、寂れており人ひとりすらいない。

道も苔やカビが履いており、人の手入れが届いていない。

なんとなく不気味な場所だ。

いや、それよりも問題な所がある。

「ここ空から行かないと来れないよね?」

様々な建物が、この場所を隠しており空からじゃないと見えないようになっている。

「建物だけじゃない。この場所に人払いの魔法をかけられている」

「え?私来てるけど」

「どう見ても俺のおかげだろうが」

人払い魔法を効いていないのは、オリーのおかげらしい。

頼もしい。

「じゃあ降りて調べてみよ」

「いや、人払いの魔法をされている場所に降りるなよ・・・」

無視無視。

師匠も魔女には、好奇心が大事って言ってたしね。

オリーの忠告を当然無視して、ゆっくりと隠された道に降りてくる。

「いつもは、めちゃくちゃなスピードの降りていくのに。怖いならやめておけばいいだろ」

「うっさい」

とりあえず用心する事は、悪いことではないよね。

道に降りてみたけど、本当に何もない。

ただ石の壁が、周りを囲んでいるだけ。

「何にもないだけど」

試しに石の壁や地面を叩いてみるが、ただポコポコ音が鳴るだけ。

「人払い同様に魔法で隠されているんだろう。俺を地面にやれば分かるかもしれないが」

迷わずオリーを地面に押してつける。

「少しは、躊躇しろ。何回も言ってるが罠があるかもしれないだろ」

「むしろその方が、面白いよ。で?なんか分かった?」

「地面に見えないくらい薄い魔法の痕跡がある」

そう言うと、地面に入れ口が出てきた。

その入り口は、明らかに人工的に造られたもので、下に降りる為の階段があった。

「うっわ!!なんかすごい臭いがするんだけど」

ゴミとか汚物をさらに腐らせたような匂いが、地面にある入り口からしてきた。

思わず吐きそうになるが、食べたものが勿体無いからなんとか我慢した。

階段をよく見ると、大量の虫が沸いており、下に降りるには相当な勇気が必要だ。

「良かったな。お前が言った通り大分面白い事になっていたぞ」

「無理無理無理」

いや、虫は苦手じゃないですよ。

だって私だって屋根裏部屋にいた時は、大量の虫が湧いていていましたから。

でも、この階段の色が分からなくなるくらいぎっしり虫がいるのは無理です。

鳥肌が止まらなくて、足に力が入らなくなる。

さっき治った吐き気が、再発してきたから階段から目線を外そうとした時。

ダンダンダンと下の方から何者かが、階段を上がってくる音がする。

「うわぁぁぁ!!!」 

当然私は大絶叫をして、ついでに腰を抜かしました。

その場から動けず、階段から出てくるものを見ている。

この場所から、悪魔や化け物など人間以外が出てきてもおかしくない。

「いぃまぁはぁ、いつぁだ」

歯も無く、呂律も回っていないゾンビのようなおじいちゃんが出てきた。

腕も足も棒のように細く、風が吹いたら折れてしまいそうだ。

肌の色も血が通っていないと思うくらいに、白く色が濁っている。 

そんな老人は、階段をへとへとになったが、マヤの姿を見つけると、こちらにハイハイのように四つん這いでやって来た。

ボロボロの口を大きく開けて、老女はマヤに向かって言ってくる。

「ゼェそうはら、どおなた」

「戦争?戦争なら今」

ドーーン!!

爆音と共に空がパッと明るくなる。

これは、大砲を空に向けてうっており、このお祭りのメインである領主を捕まえる遊びをするらしい。

確か街で一番脚の速い人が、領主役になって逃げるらしい。

「あ!早く水晶を持っていかないと」

「いや、このジジィどうすんだよ。どうしてこんな所にいたか分からないけど、一応街に連れて行くだけはしておけ。こいつが街の住民なら誰かが知ってるだろう」

老人の方を見てみると、皺で表情がわかりづらいが、泣きそうな顔をしている。

「まぁまだ。まなぁぜんそあは、おわはってないのか!!」

そして、小さい口を無理あり開けて叫んだ。

なんだか分からないが、発狂してるな。

確かにここに置いておいたらまずいな。

とゆうわけで、老人を連れていく事に。

流石に箒の上には乗せたくないので、紐で括り付けて運ぶ事にした。

物みたいに扱って悪い気がするが、老人も抵抗しないので良しとしよう。

「そういえばこの魔法ってこの老人が、使っていたのかな?」

「いや、おそらく違う。ここの魔法は、外からも中からも閉じ込める為のものだった。だから、違う第三者が使ったじゃねぇか」

「じゃああのジィさん閉じ込められていたって事?」

「恐らくな」

この老人が誰なのか。

街に行っても誰も覚えていませんでした。

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