第15話 冒険者登録

 俺とジェラルド、リアムにエドワードは隣村のポポロ村という村に来ている。ギルドで冒険者登録をする為に。ついでにノエルも付いてきている。


「なぁ、オリヴァー。旅行じゃなかったのか?」


「ある意味旅行だよ」


 そう、ジェラルドだけ今日この日まで普通に観光旅行に行くと思っていたのだ。教えなかったわけではなく、ついうっかり伝えそびれていたのだ。


「それより、おじさんもよく許してくれたよね。最低でも一年は帰らないかもよ」


「学園に通うまでの必須科目は全て終わってるからな。『今のうちに遊べ遊べー!』って言われたよ」


「はは、おじさん相変わらずだね」


 それにしてもジェラルドは既に学園に通うまでの必須科目を終えているのか。俺なんて冒険中に独学しようと思っていたのに。


「ジェラルド、勉強教えてね」


「こんな訳の分かんねぇことに巻き込んでおいて図々しいな。まぁ良いけどさ」


「ありがとう! やっぱ持つべきものは親友だな!」


 ついついジェラルドに抱きつきそうになったが、すんでのところで止めた。ノエルが近くで見ていたから。


「それよりさ、俺だけ成長止まってるんだけど……。みんななんでそんな大きいの?」


 四年で皆成長しており、それぞれ俺より十センチ以上は高い。顔も幼い顔から大人びた顔立ちに。しかも普通に三人共格好良い。


「オリヴァーは童顔だよな」


 ジェラルドに肩を組まれると、エドワードも俺の頭をクシャクシャと撫でながら言った。


「可愛いから良いんじゃない?」


「確かに。服装変えれば女の子に見えなくもないかも」


 リアムまで俺の顎をクイッと持ち上げて、まじまじと顔の造りを観察し始めた。


「もう、みんなやめてよ」


「お兄様……素晴らしいわ」


「ノエル?」


 ノエルがキラキラした瞳で俺達のやり取りを見ながら本に何かを書き込んでいる。


「わたくしは、皆様の勇姿をしかとこの一冊の本に残していきます故、存分に力を発揮し、時に互いの仲を深めていって下さいませ」


「まさか、今のやり取り全部そこに書いてあるの?」


「もちろんですわ。お兄様が御三方に囲まれ、スキンシップを受けているシーンは絵に描いて表紙にさせてもらいますわ」


「ノエル……」


 家においてくれば良かった。ありもしない心情まであの本には書き記されているはず。誰かに見せられる代物ではない。


 そして、早くこの三人のスキンシップから逃れないとノエルの表紙が完成してしまう。


「早く冒険者登録済ませちゃおう」


 俺は三人の手から逃れ、受付へと向かった——。


 受付へと向かうと、それぞれ一枚の紙を渡された。


「こちらに必要事項と職業を書いて下さい」


 名前や生年月日等の個人情報を書いた後、職業欄に辿り着いた。


 ここに書くのか……勇者……と。


 何の功績も残していないのに勇者と書いて良いものなのだろうか。今後も何一つ功績を残せなかったらどうしよう。ノエルも見ていないし『剣士』くらいにしておこうかな。


「エドワード・アルベール様、剣士で御座いますね。それではカードが出来上がるまでこの仮カードをお持ちください」


 一人ひとり読み上げられるのか。俺は潔く『勇者』と職業欄に記入した。


 エドワード同様に俺やジェラルド、リアムもプロフィールを読み上げられた後、いくつかの依頼書を机の上に置かれた。


「初めての方ですと、この辺の依頼から受けられた方が宜しいかと……」


「迷子の犬探しに、畑を荒らすモグラの駆除、荷物運びか。どれにする?」


 俺が皆に意見を聞くと、ノエルが前に出てきた。


「もっと魔物討伐! みたいな大きな依頼はありませんの?」


 受付の女性はこういった対応は得意なのだろう。淡々と業務的に応えた。


「ありますけれど、登録したばかりの方はまだFランクですので、そういった依頼は引き受けることができないようになっております」


「どのくらいで出来るようになりますの?」


「ワンランク上の依頼までしか受けることが出来ない仕組みになっておりまして、例えばこちらの泉の近くにスライム大量発生をどうにかしてほしいという依頼はAランクの依頼で御座います」


「え、スライムがAランクなのですか? あの雑魚モンスターが?」


 受付女性の顔が曇ってきたので、俺はノエルをカウンターから引き剥がして言った。


「ノエル、スライムは雑魚なんかじゃないよ。見た目は小さくて弱く見えるだろうけど、切ったら増えるし、触れたら皮膚が溶ける。爛れて取り返しのつかなくなった人は沢山いるんだ」


「そういうことで御座います。まずはこのFランクの依頼からこなしていき、少しずつレベルアップすることをお勧めしております」


 ノエルが反省したように黙ると、リアムが一枚の依頼書を手に取った。


「これにしよう。良い?」


 それは迷子の犬探しだった。ノエルは不貞腐れていたがその他メンバーは皆が賛同した。


「承知致しました。期限は一週間になっております。それを過ぎれば任務失敗という形になりますのでご了承下さいませ」


「はい」


「では、こちらが犬の情報になります。初仕事頑張って下さい」


 こうして俺達の冒険は始まった——。

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