第12話 良いモン貰った


 アルさんと試合した後、僕は魔力切れでダウンした。

 アルさんの怪我がエグかったんだよ。

 もうボッキボキだった。


 いやもう粉っごなだったと言っても過言じゃなかった。

 まあそんぐらいひどかったから腕の治癒でめちゃくちゃ魔力を使った。


 訓練場で気絶した僕は目が覚めたらクソでかいベッドに寝かされていた。


「知らない天井だ……」


 一度言ってみたかったんだよねこれ!!

 

 すると僕の右の方がゴソゴソする。


「ハル君!起きた!痛いところ無い?」

「またお前、僕と同じベッドで寝てんのかよ。まあ痛いところは無いよ」

「そっか。良かった。じゃあ父上と今から話せる?」

「ああ、うん。任せて」


 僕はアイに着いていく。

 案内されたのはまたもや謁見の間だった。

 

 謁見の間には皇帝とアルさん、ルイと女騎士さんがいた。

 皇帝の目は少し腫れてた。泣いてたのかな?


「ハルト殿……いや、これからはハルと名乗るのだったな」

「はい」

「約束通り、アイと共に旅に出ることを許そう。娘を頼む」

「ありがとうございます!!!アイさんの事は任せてください!!」

「それと……アルの怪我を治してくれてありがとう」

「いえいえ。あれは僕が負わせちゃったようなものですから」

「その報酬として金貨1000枚を送ろう」

「え……」


 千!?

 金貨って日本円で一枚一万円分だよ?

 つまり一千万……マジか。無一文から一気に金持ちになった。


「いや、そんなにいりません。50枚くらいで十分です」

「しかし……」

「冒険者としてお金を稼ぐのも楽しいので」

「……そうか。なにか困ったことがあったらいつでも頼ってくれ。出来ることなら力になろう」

「ありがとうございます」

「うむ……あっそうだ。ルナも一緒に行きたいと言っていたが……」

「あっ女騎士さんも来るんですか?」

「う、うん……ルイと一緒にいたいから……」

「えっマジかよ可愛いじゃねえか」


 ヒュオオオォォォ


 僕の隣からとんでもない冷気が発せられる。

 僕は適温結界を張ってるおかげで何とも無いはずなんだけど……震える。


「ハル君?」

「いや、安心して。僕の中で一番可愛いのはアイだから」

「そ、そう?なら許してあげる!」

(チョロいなぁ)


 なんか心配になってくるチョロさである。

 

「兄さん!ルナさんは渡しませんからね!もし手を出したら兄さんの兄さんを細切れにしますからね!!!」

「いやしないから安心してくれマジで剣を僕の下半身に向けるな!!」

「アイちゃんを泣かせたら俺はハル殿を仕事中でも殴りに行くからな!!!」

「いや、せめて仕事を終わらせてから殴りに来てくださいよ……」


 こんな感じで皇帝との二度目の謁見は終わった。

 

 僕は皇帝から金貨50枚を受け取って城を出ようとした。

 そこでアルさんに止められた。


「ハル殿!!お待ち下さい!」

「アルさん、どうしました?」

「実はお渡ししたい物がありまして。俺の腕を治してくれたお礼です」

「いや、それは皇帝から貰ってますから」

「でしたら俺の生活を守ってくださったお礼と言う事で。これを受け取ってください」


 アルさんから巾着袋の様な物を渡される。

 なんだぁこれ?


「これはアイテムポーチです」

「アイテムポーチ!?本当ですか!?」

「はい。それも帝国でも最高品質の物です」

「ま、マジですか。そんな高価な物を……ありがたく頂戴します」

「では、ハル殿!何かあったら俺も力になりますから!」


 そう言ってアルさんは去っていった。

 

 それにしてもアイテムポーチか……しかもこれ、時間停止の効果もあるじゃねえか。

 収納空間も広いな……ドラゴン十数匹は入るぞ。


 僕もランクの低いアイテムポーチは持ってるけど……あれはルイにあげようかな。

 

 いやあ良い物を貰った。

 アルさんには感謝だね。


 僕はニヤニヤしながら先に歩いてるアイ達のもとに戻った。


「兄さん……何ニヤニヤしてるの」

「え?ああ、実はアルさんに良い物を貰ってさ」

「そうなの?良かったね」

「うん。だからルイにはこれをやる」


 僕は服のポケットからボロボロのアイテムポーチを取り出して、ルイに渡す。


「え?なんですかこれ」

「それはアイテムポーチだ。一番やっすいやつだけどな」

「え?貰って良いんですか?一番安いと言っても高価な物ですよね?」

「そうだな。大体金貨10枚だったかな」

「たっか!?」


 こんな感じの会話をしながらアイのお気に入りの宿に向かった。

 どうやらたまに城を飛び出して色んな宿に泊まってたらしい。

 うん皇族が何やってんだよ。


 まあそのおかげで安くて良い宿に泊まれたけど。


 その安くていい宿でグダーとしてると、僕の頭に一つの考えが浮かんだ。

 僕はその考えを実行するためにアイに帝都で一番の錬金術師を教えてもらった。


 その名はレン。

 名前考えるのめんどくなったんか?いや、それは名付け親に失礼か。

 魔道具店を経営してるらしい。


 そこの魔道具は質が良く、とても人気だそうだ。 

 ただクソ高いらしい。だから基本的にその店に訪れるのは上級貴族ばっかりらしい。


 うーむ……流石に金貨50枚じゃ不安だ。

 

「稼ぐかぁ……」


 僕は翌日の予定を何となく立てて、ベッドに入った。


「ふぎゃっ」


 変な声がしたなぁと思って布団を捲るとアイがいた。またかよ。


「……アイ、何やってる」

「一緒に寝よ♡」

「はあ……僕、明日から冒険者活動を再開するから早く寝たいんだよ。君と一緒だと寝れないから自分の部屋に戻りなさい」

「えー?なんでぇ?お金にはまだ余裕があるじゃん」

「……アイにプレゼントを送るためだよ」

「おやすみハル君!また明日ね!!」

「お、おう」


 そう言って僕の部屋から一瞬で出ていった。

 チョロいぜ。


 僕は自分に結界を張って眠りについた。




 ───夜中


「うおおお!!」(小声)


 一人の女の子がベッドの上で悪戦苦闘していた。


「寝てる時にも結界を張ってるなんて……しかも衝撃を与えると吹き飛ばされるし」


 そう、アイだ。

 いつもの如くハルに抱きついて寝ようと思ったが結界に阻まれて出来ていない。

 け、決して夜這いをしに来たわけじゃないんだからね!!(謎のツンデレ)


「私が見たハル君が寝てたときって魔力切れの時だけだったな……」


 結界を張ってないと安心して眠れないような環境だったのかな……。

 

 私は寝てる時の結界を解けるような環境を作る!!と決心してハル君の部屋を出た。


「と見せかけてもう一度チャレーンジ!!」(小声)


 アイの突撃は結界に阻まれ、アイは吹き飛ばされ、部屋の扉をぶち破った。


 その音で宿泊人はハル以外全員起きた。


 ハルは爆睡してた。


 後日、皇帝の元に修理代の請求書が来た。




 ────────


面白いと思ってくれた人は星押してってね。

そうすると作者に気合が入るよ。投稿ペース上がるかもよ。

多分。恐らく。めいびー。



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