第11話 皇帝との謁見


「お前がハルトか」


 謁見の間にて、皇帝の声が響く。

 あ、圧がスゴイ。


 帝都に来た僕達は城に連行された。

 そして風呂にぶち込まれ、髪を整えられ、いつの間にか綺麗になっていた僕の服を着せられ、謁見の間に連れてかれた。


「は、はいそうです……」


 こ、怖ぇー!

 

「そうかお前か。隣にいるイケメン君ならまだしも……お前のような弱っちそうな見た目の奴にアイちゃんを渡せ──」

「父上うるさい」

「あ、はい」


 皇帝はアイの冷たい一言で黙る。

 いや皇帝アイに弱すぎだろ。


「ハル君の実力を見たわけじゃないのに偉そうにしないで」

「す、すみません」

「分かったら私が出ていってもいいよね」

「それは……あそうだ!ハルトとやら!」

「はい!」

「お前はアイの事が好きなのか?」

「もちろんです!」

「キャー!ハルくーん!」

「……うむ……嘘は言ってないな……よし!お前には今から騎士団長と戦ってもらう!勝ったらアイと旅に出る事を許そう!」


 皇帝は青筋を浮かべながら言う。


 うっわマジかよめんどくせぇ。

 騎士団長か……帝国騎士って優秀な人ばっかだからな。

 いや騎士はそういうもんなんだけど。


 王国とは格が違う。

 分かりやすく言えば、王国の近衛と帝国の一般兵のレベルが同等。

 


 それらのトップ……一応魔力は全回復してるから何とかなるかもだけど……


「因みに騎士団長と言うのは……近衛ですか?」

「もちろんだ」


 近衛か……それの団長はSランク冒険者と同等かそれ以上な気がする。

 

「因みに彼だ」

「どうも」

「おーう……」


 皇帝の視線の先にはムキムキのイケメンさんがいた。

 ふむ……魔力の色から見るに土属性か。

 武器は大剣。


 魔力量はそこまで多く無いから基本は物理だな。

 ならカウンターが決まりやすい。

 

「分かりました。勝って……アイさんをもらいます!」

「キャー!ハルくーん!カッコイイ!」

「ちょっと静かにしてくれないかな!?」


 くっそーキメ顔までしたってのに……。

 まあいっか。


「よし、では近衛騎士団長!あやつをぶち殺──コテンパンにしてあげなさい!」

「はっ!」


 なんか今めちゃくちゃ物騒な言葉が聞こえなかったか!?

 あと騎士団長も元気よく返事しないで!

 怖いんどけど!


 僕は団長と共に訓練場に向かった。


 僕は団長さんの後ろをテクテク歩いていく。

 すると団長さんに声をかけられた。


「ハルト、と言ったか」

「あ、はい」

「この試合、俺は勝つ気は無い」

「え?」


 何でだ?

 国王の言葉に元気よく返事してたじゃねえか。


「俺はな、アイ様には世界を見て欲しいと思ってる。この国の皇族として各国に向かうのは基本的にアイ様の兄上か姉上だったから……この国から出た事が無いんだ」

「それで……」

「ああ。それに君といる彼女はとても楽しそうに見えた。あと皇帝陛下には早く子離れさせないといけないし」


 この人はアイの事を気にかけてくれてたのかな……。

 正直、この人が手加減してくれるならありがたい。楽に勝てる相手じゃないからな。


 でも


「いや、ここは全力でやりましょう」

「……なぜだ?確かに君の魔力量は多い方かもしれない。だが、これでも俺はこの国の……帝国の近衛騎士の団長だぞ?勝てる見込みはない」

「それは傲慢じゃないですか?とりあえず理由を聞いてください」

「なんだ」

「まず、皇帝陛下はあなたが本気を出していないことには気づくでしょうね。皇帝陛下は武術にも長けているらしいじゃないですか」

「……確かに、そうかもしれんな」

「そうすればあなたは団長の座を……近衛騎士すら辞めることになるかもしれません」

「そんなの、アイ様が自由になれるなら構わん」

「いや構うでしょ。その指輪……結婚してるでしょ?違うとしても生活には金が必要だし。あとは……僕の問題ですかね」

「君の?」

「はい。今までの僕はいらない子だのゴミだの穀潰しだの言われてきましたからね。そんな僕がアイ……皇女様と釣り合うはずがありません。だからここで近衛騎士団の団長を倒したと言う肩書があれば、少しは釣り合うと思うんですよね」


 僕は冒険者カードを団長さんに見せる。


「Sランクだと!?……分かった。俺も本気でやらせてもらう」

「ありがとうございます」

「いや、それはこちらの言葉だ。ありがとうハルト殿。いや、ハル殿の方が良かったかな?」

「いや、今はハルトで。ここを出たら改めてハルを名乗りますよ」

「しかし……Sランク冒険者というだけで十分釣り合うと思うんだが」

「今の僕は冒険者ハルじゃない……いや、ハルと名乗りたかったんですけど。とりあえず今の僕は王女に婚約破棄され、国から追放された結界魔法しか使えないハルトですから」

「……なるほど。暗部の情報は本当だったのだな」


 そうこう話してるうちに訓練場に着いた。

 皇帝陛下とアイ、ルイと女騎士さんはもう来ていた。

 

「集まったか。では両者位置に着け」

「皇帝陛下、ルールは」

「殺すような攻撃は禁止。相手が気絶するか降参するまで続行だ」

「了解した」

「では、開始!!」


 皇帝の声と同時に団長さんが突っ込んでくる。

 結界魔法と聞いて慎重に来ると思ったが、短期決戦で来たか。


「地割れ!!」


 団長は大剣を振り降ろす。

 なるほど、こりゃ地面に振ったら割れますわ。

 

 だがしかぁし!


「なっ!?」


 この程度では僕の結界はビクともしないのだ。いや、ビクともはしたかも。

 だけどそんなことはどうでもいい!


「グッ……!」


 大剣が結界に触れた瞬間、その衝撃を腕にお返しした。

 倍にしてだ。


 これには団長の腕がイカれた。

 曲がっちゃいけない方向に曲がってらぁ。

 

 剣すら持てないだろう。


「アル!!」


 団長さんはアルという名前なのか。

 これからはアルさんと呼ぼう。


「続けますか?」

「アル!もうやめろ!ハルト殿、もう──」

「お待ちを!皇帝陛下!」


 アルさんの声が訓練場に響いた。


「俺は彼に全力を出すと約束した。最後に……一発だけ許してはくれないでしょうか」

「……」


 皇帝陛下は少し考える。


「ハルト殿」

「あ、はい」

「アルの腕は治せるか?アイちゃんからは騎士の怪我を治癒したと聞いているが」

「あーまあ、はい。大丈夫ですよ。この試合が終わったら治すつもりです」

「そうか……すまないな……アル!」

「ハッ!」

「全力を尽くして、その少年を倒せ!!」

「御意!!」


 皇帝の言葉に返事をしたアルさんは剣を構えなかった。

 え?てっきりイカれた腕で気合で突撃してくるもんだと思ってただけど。


「驚いたか」

「はい」

「俺は剣よりも魔法の方が得意なんだよ」

「でも魔力量はそこまで多く無いですよね?」

「いや……それは君と比べてるからではないか?これでも魔力量には自信があるんだが」

「あー確かにそうかもですね。てか僕の魔力量はそこまで多くないってさっき言ってませんでした?」

「君が魔法を発動させた瞬間に一瞬だけ魔力の隠蔽が解けた。その時に見えたんだよ。どうやらあまり隠蔽は得意じゃないみたいだね」

「そうですね」

「まあそれはいいとして。準備が出来た。いくよ」


 すると僕の周りは土で囲まれた。

 そして足元がぬかるみ、空からは鍾乳石みたいなのが降ってきた。


「いや殺意たか!!」


 しかも土の壁から石を飛ばしてくるし……まじで殺意高え魔法だな!!

 殺すような攻撃は無しじゃなかったのか!?


 まさに必殺って感じだ。

 僕じゃなきゃ死んでたぞ。


ピシッ


「っ!マジか!」


 空からの攻撃が結界に当たった瞬間、結界に嫌な音が響いた。

 魔法と物理に対応できる結界なんだけどなぁ。


 強度を上げる!


 僕の魔力を結界の上の方に追加で流していく。

 そうして魔法を受け流していると、攻撃が止み、土の壁も消えた。


 そしてアルさんはぶっ倒れてた。

 魔力切れだな。


「……ハルト殿の勝利!!早速で申し訳ないが治癒をお願いしたい!」

「了解です。報酬は少しでもいいのでくださいね」


 そう言いながら僕はこの前、騎士さんに使った結界をアルさんにかける。

 少し経てばアルさんは目を覚ますだろう。


「ふう……」

「ハル君すごーい!!さすが!好きー!!」

「ぐえっ」


 ひと仕事終え、地面に座り込むとアイに後ろから思いっきり抱きつかれた。

 力が……っ!強い強い!

 首が絞まるて!!


「流石ですね、兄さん」

「ちょっ!ギブ!ギブ!」

「あっごめんね」

「……全く聞いてねえ」

「いやごめんて。首絞められてたんだぞしょうがねえだろ」


 僕、ルイ、アイがわちゃわちゃしてるところを、彼らから少し離れたところで皇帝はそれを見守っていた。


「……あの者になら……アイちゃんを任せられるかもしれんな」

「……皇帝陛下、ハルト殿は素晴らしい少年ですよ」

「そうだな……」


 こうして、僕とアルさんの試合は終わった。



───────



 いやー累計PVがお陰様で五千いきました!

 ありがとうございます!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る