第4話 あるぅ日、森の中、皇女と、出会った


「そういえばルイ」

「なんです兄さん」

「帝国が王国に宣戦布告したって」

「そーですか……え?マジです?」

「マジだ」


 街までの道のりで今朝、村長から聞いた事を話す。


「なんで戦争を?」

「開戦するのは我らが父上……いや、元父上が帝国領辺境の村を襲撃し、村人を奴隷として拉致ったからだな」

「そんなことやってたんすか父上は」

「やってたんだよ。因みにこれは国王提案だ」

「腐ってますねー」


 なんで国王が提案した事なのか分かるの?と思ったそこの君!

 実はね、屋敷にも結界は張ってあったんだよ。

 盗聴機能付きのね。

 

 まあ密談に使われる部屋だけだけどね。

 確か10の時だったかな?

 国王が王女と共に伯爵家にやってきてその部屋で密談してたんだよ。


 そん時に聞いた。

 こいつらマジかって思った。

 

 どうやら王女が産まれる前に帝国に嫁に出したいと王は皇帝に言ってたらしいけど「いらんっ!」って断られたんだって。


 その事にムカついた我らが愚王がちょっかいかけるようになった。

 そのちょっかいが王国による物だと分かってはいたけど、ちゃんとした証拠が無くて戦争の切り口にはならなかったから今まで戦争を起こせなかったんだろうね。


 まあ流石に村の襲撃はやり過ぎだよね。


 因みにそれを提案した理由は「ちょっかいかけても動じないのはつまらん」だ。


 なんだコイツ。

 好きな女の子に意地悪する小学生かよ。


「でも兄さん、宣戦布告なんてしたら奇襲が出来ないじゃないですか。【繋がる道】は軍隊に封鎖されちゃいます」

「まあそういった奇襲は他国に悪い印象を植え付ける可能性があるからな。それに帝国は【繋がる道】を使う気は無いみたいだぞ」

「え?山を登ってくるんですか?」


 それも1つの手だが高ランクの魔物がうじゃうじゃいる所に突っ込んで兵を失ったら損だからな。


「違うって。帝国はそんなバカじゃない。僕たちが泊まった村と似た様な村があの山の麓にあるんだが……そこに謎の装置が置かれてるらしい」

「装置?」

「恐らく転移装置だ」

「転移!?そんな高等技術を……」

「帝国は優秀な人材が多いからなー」

「そうですか。それにしても村人はよく謎の装置を置くことを許可しましたね」

「それは騎士達が魔物を討伐して安全を確保した報酬代わりにと言ったらどうぞどうぞって感じだったらしいぞ」


 王国は「あんな辺境の為に金を使うのは勿体ない!」って感じで魔物討伐に兵を動かさなかったからな。


 冒険者も危険な所にわざわざ行かないし。

 まあ僕はバリバリ入ってたけどな。


「それは……少なくとも王国が帝国領になっても伯爵領の民は帝国につくでしょうね」

「それは同意する」

「所で兄さん」

「なんだねマイブラザー」

「これ、迷ってません?」

「……すまん、迷った」

「やっぱり」

「すまんぬ」


 さっきの下山の時のクラクラが未だに残ってるし、僕はそもそも高い所が好きじゃないから飛びたくない。


 だから歩いてる訳だが……山から帝国領に入った事なんて無いから迷ったわ。

 帝国までの道を記憶してるとは言ったがあれは【繋がる道】を使った時の事だ。


「どうしよ」

「とりあえずこの森から出るしか無いですよ」

「そうだな。幸いにもお前は水魔法の適正あるし食べ物は魔物ぶっ倒せば手に入るしな」


 て事でそれから3日後、未だに迷ってます。

 この森でかいんだよクソが!!


 確かに帝国にはクソでかい森があるのは知ってたけど!

 

「兄さん、服がボロボロです」

「ふっ……安心しろルイよ。このバッグに僕が作った服が入ってる」

「え?兄さんが?」

「ああ、母さんが教科書を残してくれたんだよ」


 あと領内の服屋さんにも教えてもらった事がある。

 そのおかげで今や服なんて余裕で作れるように。

 なんなら料理も出来ちゃうからね。


 これは女子力高い!ポイント高いんじゃないだろうか!!

 ……いや、何のポイントだ?もう訳分からんわ。

 

 何日も木と魔物しか見てないから頭がおかしくなったのかもしれない。

 いや、元からおかしいか!ハッハッハ!!


 はぁ……マジでおかしくなったかも。


「てかそんなもんあるんだったらもうちょい早く出してくださいよ」


 ルイもこの数日で砕けた言葉使いになってきた。

 敬語とか僕は苦手だからね。

 お兄ちゃんは嬉しいよ。


「すっかり忘れてたわ。てへっ」

「てへっ、じゃない!!」

「いいね!マイブラザーにはツッコミの才能があるのかもしれないな!」

「もうやだぁ…誰かツッコミ代わってくれぇ!!」


 ルイの絶叫が森に響いた。

 すると魔物が大勢寄ってくる気配がする。


「バッカヤロゥ!大声出したら魔物が寄ってくるだろうが!てかもう寄ってきてるわ!」

「それはごめんなさいですけど!兄さんの方が大きい声出してますよね!?」

「それはそう!」

「あっさり認めたぁ!?」

「コントなんかやってる場合じゃねえぞ!」

「兄さんから始めましたよね!?……ああもう!ツッコむだけ体力の無駄だ!」

「おっ、よく気がついたね」

「もうこの人嫌だー!!」


 そう文句を言いながら僕とルイは魔物と戦闘を開始する。

 ルイはオーク達を討伐していく。


 流石にまだ弱いルイにすばしっこい狼系はキツイからな。

 この森で迷ってから動きが遅くて攻撃を避けやすく、体が大きくて攻撃を当てやすいオークの討伐をしてもらってる。


 もうルイはオークなんて敵でも無いようなので、そろそろ狼系の魔物に挑戦させよう。


 そんな事考えながらバリアバレットをルイに当たらないように乱射してると、いつの間にか魔物たちは全滅してた。


 いやぁ……テキトーに魔法撃ってるだけで倒せるなんて簡単な作業だなぁ。


「おい」


 素材の剥ぎ取りをしていると怒気を孕んだ女の子の声が聞こえた。


「ルイ……なんか女の子の声が聞こえなかったか?僕、遂に幻聴まで聞こえるようになったのかな?」

「安心してください兄さん。バッチリ俺にも聞こえてます」

「なるほど集団幻覚の様な物か」

「現実逃避しないでくれます!?」


 いやだって僕の背後からめちゃくちゃ殺気向けられるんだもん!

 怖いんだもん!!


「えっと……何の用で──」


 振り向き、声の主の顔を見る。

 その顔は見覚えのある美しい顔だった。


「……スマン、ルイ。僕はこの人とまともに話せそうにない」

「えっ!?どうしてですか!もしかして過去に何か酷いことをされたとか……」

「安心しろ。そんなことはされてない。ただな……彼女は皇女だ」

「え?」

「あとついでに僕の初恋の人だ」

「その情報はどうでも良いですけど」

「冷たいなおい」


 皇女の前でもちゃんといつも通りな兄弟なのでした。ちゃんちゃん。


「皇族である私を前にしてその態度は褒めてやるが……いい加減、こっちの話を聞いてもらおうか!!!」


「「すみませんでした!!」」


 

 クッソ……ちゃんちゃん、にはイベントを強制終了させる効果は無かったようだ。



─────


なんか書いてる内に楽しくなっていつもより少し多いですわ。



 

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