第13話 変わるには
「でだ、ジャンヌはまた二十階に挑戦しないといけないが……」
まだ、大きい課題が残っているジャンヌに、今後の方針を決めるべく俺の何にもない簡素な部屋でお茶を入れながらジャンヌの顔を見る。
「イヴ殿、そんな心配そうにしないでくれ」
「心配なんかじゃ、」
心配なんて、一度たりとも、したことがないはず……
「ふふ、イヴ殿も完全無欠ではないのだな」
俺の顔を見ながら笑うジャンヌ。
一体どこに笑う要素があったって言うんだ?
それにしても、ジャンヌは俺と戦って死んで更に急成長したように感じる。
訓練でもアレを使ってないとはいえ、しっかりと俺の剣を目で追うことができているし、何より観察力と適応能力が極めて高い。
だから……
「今までジャンヌには基礎を叩き込んだから、少しだけ、オレの剣技を教える」
「え……いままで基礎だったのか」
嘘だと言ってくれ、みたいな表情を浮かべるジャンヌ。
残念ながら基礎も基礎だ。
ただ
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それを見たもの曰く、それは殺戮の剣術だと言い、また別の者は悪魔の剣とも言った。
それは伝承され、物語とし未来の童話には、この世のものからかけ離れた破壊的な剣技と記されていた。
失理の剣貌、【
以前俺がアルデンに一度だけ見せたことがあるが、あれは失楽園を使ってないから簡易的なものに過ぎない。
ただの偽物だ。
だから失理の剣貌の完成形とは程遠い。
それに、これはエスタの歴史上で五本の指に入る剣士と称された師匠ですら理解することを諦めた俺しか使えないものだし、
ここにきて、いつのまにか得ていた
ただ……
幸い、いつでも教えられるように二つの基礎を叩き込んでいるから、そろそろいい頃合いだと思う。
「ふう、久しぶりに飲んだけど、お茶美味しいな」
椅子にもたれかかって、リラックスする。
ジャンヌが帰ってきて、あの胸の痛みが少し治ったから、冷静さも取り戻せたし……
これから色々と考えなければいけない。
仲間を、失いたくないから、もっと自分が強くなって手札を増やすべきだ。
「ただ……」
仲間というものが、なにぶん初めてのものだから、どうすればいいか未だ手探り状態だ。
普通の接し方が、俺には分からないし、理屈は分かるが理解できない場合が多い。
「自分から、変わらないと」
もう前とは違うんだと、そう言い聞かせる。
それと、師匠に最期に教えてもらったアレを漸く完成させられた。
俺の技の根源は憎悪に成り立っているから、使うと相当な反動が来るのだが、師匠に教えてもらったアレは、なんていうか……
愛が篭っていた。
愛でも、剣は扱える。
「そうだ、せっかくだし名前をつけようかな」
いつの日か、憎悪を忘れないように、あの剣術に名前をつけた。
だから今回は、親愛を忘れないようにと願って。
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イヴ殿の底が知れないとは、会った時から常々思っていたが……
「なんなのだ、それは……」
もはや剣術なのかも疑わしく、伝説のドラゴンのブレスよりも、よっぽど破壊的だ。
その最たる基礎は圧倒的な経験量での感覚による受け流しと、ただ切り裂くことだけに特化した重い一撃をいかに速く鋭く急所に捩じ込むこと。
達人や聖騎士の最上位の者たちでも殆どできないであろう究極の基盤。
そこから数段階飛ばした発展が、先ほどイヴ殿が見せてくれた二つの技だった。
「い、イヴ殿……コツは無いだろうか」
何度やっても上手くいかない。
近づけることはできても、私のこれは猿真似に過ぎない。
「斬ることと相手を視ることだけに全てを割け。それ以外は何も考えなくていい」
そう言われ、私は難しく考えすぎていたのだと理解した。
「わかった」
イヴ殿の言われた通り、それ以外の雑念は、要らない。
ただ、視て斬るのみ……
「やろうか」
◆◇
後書き
失理の剣貌について解説
イヴの憎悪から
理屈や道理を失った敵を切り裂くことに特化した
【
カウンターの究極形であり、力の方向を流す或いは反発させる。
【
無形の構えから、ただ敵を一撃で絶命させることに全てを捧いだ必殺の型。
【
普く力の方向を敵に強制的に作用させ、斬るという事象を確定させるもの。
力のコントロールができる縦横無尽な核兵器
【
失理の剣貌に憎悪ではなく親愛に染め、精神的な反動作用を無くすもの。
まだ使いこなせておらず、イヴの固有スキルとも噛み合わないため威力は落ちる。
あとがきぷらすあるふぁ
少しでも面白いと思っていただければ、☆やブクマをつけてくれると嬉しいです。
作者がとても喜びます。
それから新作の『時間遡行転生したTS思春期ちゃんの初恋事情』をまったりと書き始めたのでそちらも興味があれば是非是非
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