第14話 再挑戦と失楽園
懐かしい空気感。
私は、此処に戻ってきた。
越えられなかった分厚い壁に、私はまた立つことができていることに感謝しよう。
「……お前、死んだはずじゃ」
「覚えているのか?」
「そりゃあな、とはいえ……何故、また此処に来た?」
何度も殺されかけて、そして一度死んだ場所で、私は何故ここに立っているのか……と。
彼女は、心底不思議そうに聞いてくる。
「貴女を超えるために」
私はそう、断言した。
今度こそ彼女を超えて、私は追いつかないといけない。
並び立つために、
役に立つために、
頼られる為に、
そして何より、イヴ殿を一人にさせないために。
それならば、他のことは何もいらない。
「私の信念を、どうか確認させてくれ」
だからどうか、
手を抜いてくれるなよ……と。
「……そうか」
その冷えた言葉を聞いて、思わず身震いする。
「また死んでも文句言うなよ」
「望むところ」
そうして、挨拶と言わんばかりの不可視の一閃が私の首めがけて放たれた。
見えてはいないが、感覚で視える。
【
まだ未完成だが、それでも本来の力に近しい所までには至っている。
「おいマジか、誰から教えて……いや、一人しかいねえな」
イヴ殿は私のこれを見るや否や、そう
……心底楽しそうに
「違うオレは、仲間に会えたか」
「嗚呼」
「そりゃあ羨ましい」
その言葉には、少し
「くは、強くなったなあ」
蛇腹剣が縦横無尽に私の命を刈り取ろうとして、防ぐので手一杯だった。
いや……
守りに入るな。
相手を斬ること、それだけを考えよう。
感覚は段々鋭利に、空気の揺らぎも、心臓の鼓動も、全てを詠んで……
思考が、零に近づいていく。
凡そ本能のようなものが、相手を斬ることそれだけに割いて……
後は、放つのみ。
ただこの一撃に、全てを注いで、待つ。
______
____
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「なるほど、それをやるつもりか」
イヴは心底驚いていた。
「成長速度が素晴らしいな」
着々と準備が整っていく。
それを崩そうにも、守りがあまりにも硬くて崩しきれない。
ジャンヌの頭から血が垂れ、目に入り視界が限りなくシャットアウトされているはずなのに……だ。
まさに、末恐ろしい。
嗚呼、攻めきれんな……
憎悪を使おうにも、愛着が沸いてしまったから無理だ。
こうなれば、同じ技をもって相殺するしかない。
そんなことをイヴは思っていた。
レベル差六十。
力、素早さ、硬さは圧倒的にジャンヌの方が上であり、相殺するにはあまりに厳しい条件なのだが……
「こいよ」
「参る」
【
音速すら軽々超える二つの剣閃は、ぶつかり合い、凄まじい衝撃波と火花が、ダンジョンを揺らした。
そして、音が消え去り、煙が晴れる。
そこには、砕けた剣を持つ血まみれの今にも倒れそうなジャンヌと、
「……イヴ殿に、勝った」
すれすれの勝利。
これだけやって、漸く届いた。
「負け、か……」
「イヴ殿……」
「なんだ、その顰めっ面……誇れよ」
お前が勝者なんだから、と……
言いたいところだったが、生憎血が喉に詰まって上手く喋れなくなってきた。
それがなんとも歯痒くて、まあでも、この結末も悪くないとイヴは思う。
真っ向勝負で、負けたのだから。
「そう、だ……これ、違うオレに、渡してくれ」
手元から、落ちた蛇腹剣である【失楽園】を指差し、ジャンヌにそうお願いするイヴ。
「相分かった」
その返事に、イヴは満足そうな笑みを浮かべた。
・クリア報酬:
罪剣【失楽園】
上等昇級魂×3
◆◇
ジャンヌがゲートを潜った瞬間、先ほど受けていた大怪我がみるみる修復していく。
「おかえり、ジャンヌ」
イヴが、そこには立っていて……
ジャンヌに向かって、はにかんだ。
「ただいま、帰りました」
帰ってこれて、本当に良かったとジャンヌは思った。
「あ、それとこれを預かってて……」
「失楽園……懐かしいな」
いつの日か吸血鬼に譲ってもらった俺専用の武器。
俺を自分のものにしたかったらしく、そいつは、危ない匂いがしたのでそそくさと逃げた記憶がある。
「その剣は失楽園と言うのだな、伸びたら縮んだりして本当にキツかった」
そう言うジャンヌ。
失楽園持った俺によく勝てたな。
本当に、昔と比べて強くなったもんだ。
「今日はゆっくり休んで寝ろ」
「分かった」
ジャンヌは頷いて、家に帰って行く。
それにしても、今まで少なからず疑問だったけど、此処は魔物を倒すと急激に強くなるが、レベルみたいなものがあるのだろうか……
いかにもゲームのような世界観だし、一段落ついたから、
「なあ
「なんでしょうか」
「そういえば聞いてなかったんだが、なんで魔物を複数倒して一定数経つと急激に強くなったりするんだ?」
「それは
まさか本当にレベルがあるとは思わなかった。
「じゃあ、昇級試験っていうのは?」
俺以外のほぼ全ての奴らが昇級試験なるものを受けたと聞いた。
そこでは、過去のトラウマだったりを克服する必要があるらしいのだが……
「レベルの上限を上げるものですね。
階級が上がると、レベルの上限が上がる。
しかし、それでも限界があるらしく、昇級試験に失敗して、死ぬこともあるらしい。
「レベルってオレたちは見れないのか?」
「そうですね。基本的に
まあ、見れなくても問題はないか。
俺が、あいつらを強くすればいいだけの話だから。
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