第11話 前菜

 第二戦、中層二十五階のタイムアタックなのだが、ジャンヌはまだ二十階を攻略できていない。


 第二戦は延期になり第三戦の連携試験。


 ここでジャンヌが勝てれば、それで序列が決まる。


 勝てなければ第二戦に入るために、表層二十階、中層二十一から二十五階のクリアが求められる。


 

「では、二回戦は連携勝負になるが、D級にいるメンバーを二人選び、表層九階の攻略をする。判断要素はリーダーの判断能力、指揮及び連携だ。因みにだが一人だけでクリアしたとしても、加点にはあまりならないことを踏まえるように」


 そうしてルールを細かくジャンヌとカインの二人に告げる正義ラメド


 そうして、舞台を整えるために、D級のメンバーが集められたのだが……


「よ、よろしくお願いします……」


 レベルもまだ10すら到達してない新人であり、彼らに求めるものを正確に判断する必要がある。

 

 とはいえ……


 D級の四人の動きを見ると、素人もいいところであり、剣の扱いすらまともではなかった。


 それを見ていたジャンヌとカインは不安になる。


 まともに戦えるのだろうか……と。


 準備期間は三日。

 それまでに、なんとかするしかない。




 ジャンヌは初めて教える立場として、少しワクワクしている反面、彼らはあまりやる気がなかった。


 初めは手探りに教えるジャンヌなのだが、彼らにはやる気が無いので、一向に成長しない。


 それが何故か、ジャンヌには全く分からなかった。


「そうじゃない、剣はこうやって使うんだ」


 何度も何度も見せるが、彼らが言う言葉は出来ない、無理の一言二言。


 なのでジャンヌは二人を引き連れ、表層五階に赴いた。


「こうやってオーガは始末するんだ」


 最初とは打って変わって今のジャンヌの力量は比にならないくらい強いものになっており、レイピアで簡単に硬い表皮を持つオーガを貫いた。


 その光景を見ていた二人は何故か積極的に訓練に参加するようになるのだった。


______

____

__



「ほら、もっと!そんなんじゃオーガの口に入って死んじゃうよ」


 カインは焦っていた。


 動きもダメダメで、何度サポートして何度注意しても、ミスを犯す彼らに若干の戸惑いと呆れが混じるのだ。


「何度言ったらわかるの!そのままじゃ死ぬから早く離脱して!」


 しかし……


 一向に上達しない二人。


 何度も何度も矯正していくうちに、カインは気がつくのだ。


 二人は必死にやるという意識が無いのだと。


 まるで才能が無い。


 ならば……


 死の淵に叩き落として矯正しよう。



「カインはこれからダンジョン攻略に関与しないから、二人で勝手にやって」


「「え?」」


 今まで通り、カインが主導で攻略するのではなく、ダンジョンに入るや否や彼ら二人に任せることにした。


「なんで!ふざけないでよ!」


 片方の女性がカインを睨むが、実力の差は雲泥であり、カインが睨み返すと一瞬で、すくんだ。


「カインは優しかったみたいだから、これからは否が応でも、文字通り死ぬ気でやってもらうから」


 二人にとってそれは暴君のような発言だったが、この世界では何も間違ってはいない。


 上位者が好きにできるこの世界ゲームでは。


 それが絶対の正しさだ。





 そうして、四人は、たったの三日で瀕死になっていた。


 身体的には回復するので問題ないが精神面はもうボロボロである。


 何度も何度も殺されかけ、それでも生きていられるのはジャンヌとカインの手腕のお陰だろうか。


 少々人格が捻じ曲がってしまったのはご愛嬌。






◆◇






「双方準備はよろしいだろうか」


 正義ラメドがジャンヌとカインの両チームにそう聞く。


「まだ至らないところもあるが、期限が決められてたのだから仕方ない」


「カインも不安だけどいいよ」


 三日で、彼らを最大限育成したが、その時間はあまりに短かった。


 ジャンヌの言う通り九階で彼らを活かせるのかと……


 表層九階のクエスト内容はオーガの群れの撃破。


 ジャンヌも当時苦戦した場所だ。


「煮えたぎらない反応だな、まあ期間以内にやるのも試験内容としては適当だろうからこのまま進めるぞ」



 そうして二回戦、パーティメンバーでの勝負が始まった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る