第10話 実力は昇華して
「お、ジャンヌか、久しぶりだなあ!」
アルデンが、ジャンヌと目を合わせるや否や、全く驚いた様子もなく、ただただ再会したことを喜びそう言った。
一切の疑問も無く、ただ再開できたという事実に、一つのことに、単純なことにしか興味がないアルデンらしい、一言だなぁとイヴは思った。
「アルデンさんって、変な人だね」
「あ?何が?」
アリアはアルデンとの関係があまり無いため、少し怖い人という認識でしかなかったが、今回の反応で変な人という格付けになった。
それが良いか悪いかは、勿論良い方である。
「とりあえず、ジャンヌはいなかった分ハンデがあるから、再会して間もなくてすまないが、厳しい訓練をさせてもらうよ」
もう、二度と失いたくないと……
イヴの心からの願いがあったが故のその言葉。
「望むところだイヴ殿」
ジャンヌはそんなイヴの心情を汲み取って、そう言うのだった。
「すまない、少々時間を取らせてもらってもよろしいか?」
イヴ達の話に割って入る金髪の天使のような少女が、堅苦しげにそう言う。
「げ……」
「あ、ここに来て初日に会った天使さん?」
アルデンとアリアがそう反応する。
「私は
「わざわざ私に?何の要件なんだ?」
「ジャンヌが序列から抜けたため、埋め合わせでカインが入ったのだが、貴殿が戻った今九位が同率なのだ。故にどちらかは下に落ちることになる」
話は少し遡る。
現在カインのレベルは五十、最高到達は中層三十階。
ジャンヌもまたレベルは五十ではあるが、表層十九階で止まっている。
しかし、明らかに難易度に違いがあったために、容易な判断はできなかった。
そのため……
「ワシが決めるのじゃあ!」
序列を決める
「それだと公平性が落ちる。ここは決闘で決めるべきだ」
しかし、それはあまりに公平性に欠けると
「そうは言うが
「いま現在、二人の実績や功績の差は殆どない。故に
「む、むぅ……」
両者譲らないが、結局、公平性を保つために複数の項目で決闘を行うことになった。
一つ目は対人、一対一での勝負。
二つ目は中層二十五階での攻略時間の競いあい。
三つ目は連携の評価。
この三つの項目で、ジャンヌとカインが勝負することになった。
それがことの経緯である。
◆◇
「今回の決闘、審判は私が務める。双方、どちらかが力尽きた、或いは降参した場合のみ決着とする」
表層十階にいた鬼王を軽く捻り潰して、闘技場を確保した
「第一戦、ルールは以下の通りだ」
一つ、どちらも敗北宣言を有し、その宣言の撤回は認められず、宣言をしていないものの勝利となる
一つ、意識を失っても、一分以内に復活できれば試合は続行できる
一つ、闘技場の場外に出たら失格
一つ、殺生は禁ずる
「ジャンヌ先輩、会えて嬉しいですがここは勝たせてもらいます」
そう豪語するカインは、二つの剣を取り出して構える。
「来い」
対してジャンヌはレイピアを正眼に構え、相手が来るのをじっと待つ。
そうして第一戦が始まった。
まずは初手、何も飾らないただひたすらに地味で、されど相手に一撃を入れて瀕死にさせるには充分な鋭い突きを放つジャンヌ。
「っ!?」
それをかろうじて逸らすことに成功したカイン。
心の余裕はただその一手で消え失せた。
「なんだ、それ……」
ただ貫くという、それだけ込めれば良いと言わんばかりの、飾らない剣。
それはあまりに脅威的なのだと。
イヴと何度も戦って命を削ってきたジャンヌのその経験は、対人において相当なアドバンテージを有していた。
カインが高速で攻め続けるが、確実にその手を潰していく。
まさにイヴがジャンヌに稽古をつける時と同じように。
「……成長したなあ」
そんな光景を見ていたイヴは、普段表情が変わることは殆どないのだが、珍しく嬉しさを顔に浮かべていた。
圧倒的な基礎と、応用力。
ただ敵を倒すこと以外何も飾らないが結果として美しいと思える圧巻の剣技。
イヴのその剣術とは似ても似つかないが、どこか近しいものがある。
物理的な速さより、精密で的確なタイミングを、経験で瞬間的に選び取って凌駕するジャンヌ。
「カイン様、負けますね」
いつのまにか出没したエイフィがそんなことを言う。
しかし、その意見には皆同意だったのか異論は無かった。
「あと三手で終わりだ」
イヴがそう予測し、一手、二手でカインが体制を崩し……
「ごふっ、負けま、した」
三手目で、ジャンヌのレイピアがカインのお腹を貫いた。
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