第9話 おかえり
声が聞こえた。
聞き覚えのある声だった。
いやでも、そんな訳ない。
だって帰ってこなかったから。
約束を……
あの日、
「な、なあイヴ殿……」
幻覚じゃない。
その空気の揺れも匂いも、形も、実態がちゃんとある。
生きてる。
声が聞こえる。
幻聴でも、幻視でも無い。
「ただいま、もどりました」
俺は、少し苦笑いして、涙を浮かべる彼女の頬に触れた。
ほんと、この時ばかりは、片腕しかないのがもどかしい。
抱き寄せるのにも、一苦労だ。
「ばか……帰ってくるのが、遅すぎだ」
「……」
なんだか、視界が、おかしい。
なんでこんな、ぼやけて見えるんだろ……
手で目を擦ると、ぐしゃぐしゃに濡れてていることに気がついた。
まあでも、今は気にしなくていいか。
ここは戦場では無いんだし、少しだけ……
少しだけ、さ。
「ジャンヌ、おかえり」
______
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「あれ……ジャンヌさん!?」
アリアがそこに合流する。
「ジャンヌさん、死んだんじゃ……精霊になったとか!?」
そこは幽霊じゃ無いんだと、ジャンヌは人間とエルフのどうでもいい違いを見つける。
「ちゃんと生きてる、というよりかは生き返ったと言うべきか……」
「え、じゃあサーニャちゃんとかイスラさんとかも生き返る可能性があるんじゃ!」
そう言うアリア。
確かに、自分が生き返ったのだから、方法はあるのだろうが、生き返るにはそれ相応の代償が必要なんじゃないかとイヴは思った。
そんなイヴの考察通り、生き返るにはある程度手順が必要だ。
一つは、白泥の水晶であらかじめ、生命の残機を作っておく。
ただし、これによって復活した場合、多大な精神汚染が体を蝕むため、強靭的な精神力がなければ、すぐに駄目になる。
もう一つは、再誕の水晶で一回だけ無制限に復活させる方法。
この場合、その
前者は入手難易度が中層五十階の攻略特典なので比較的簡単であり、一度入手すれば一定数のアイテムや一人の
後者は深層で手に入るものであり、とある強力なボスを何百回と討伐して、一回出るか出ないかの確率であるため入手難易度が極めて高く、一回使えばそれっきりなのだ。
「それにしても、ジャンヌさんとまた会えて良かった」
「私も二人とまた会えて本当に嬉しい」
ひしっと抱き合う二人。
イヴは少し照れくさそうに控えめになっていたところ、アリアがイヴの手を引っ張って抱き寄せた。
「……温かい」
イヴが静かに呟く。
至近距離にいたジャンヌに聞こえない声量で。
それでもエルフのアリアには聞こえていて、クスッと笑うのだった。
◆◇
後書き
どうも海ねこです。
最近台風の影響か雨が多くて顔を洗うことが多いこの頃。
防犯グッズを買い込んで、他にもビスケットとかカンパンとか買ったんですが、意外と美味しかったんですよ。
それはさておき、『☆☆☆』を『★★★』に評価してくれると創作の励みになりますので、気に入っていただけたのならどうかお願いします。
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