第19話 詭弁
表層二十階攻略の為に、アルデン、ジャンヌ、アリア、エイフィの四人に俺は自分の弱点を教えていた。
「まず、オレ左腕がないから手数で攻められたら対処が遅れる。特にアリアのような弓矢とかは苦手だな」
「……私、二十階でイヴさんに半殺しにされたよ。なぜか逃げる隙くれたけど」
あ……
まあ、こいつらが相手してるのは恐らく生前の自分だと思われる。
流石に今の俺だったら、倒すのは絶望的だと思う。
感覚は鈍ってるとはいえ、ダンジョンで魔物を倒したらなんていうかな、能力値が上がっているような気がする。
レベルアップ?みたいなものだと思うけど……
「こほん、まあオレ弓が苦手だし、多分アリアみたいな幼い子は殺そうとしないはずだから安心して欲しい」
ジャンヌは、騎士の装いしてるからどうなんだろ……
俺、結構騎士ぶち殺してるから、ジャンヌを敵として捉えてたら平気で殺しそうなのが怖いところではある。
「で、アルデンはどんな感じ?」
「俺か?俺は、本気で殺されかけた」
アルダンには容赦ない感じか。
まあこいつ殴りやすい悪人面してるから仕方ないのか?
後はエイフィだけど、メイスのような打撃系の武器を用いて、致命傷を負っても意も返さないほどには痛みに慣れてて、回復魔法でゾンビ戦法できる強みがある。
アルデンのように強くなることに貪欲なのとはまた違った才能の持ち主だ。
痛みに慣れてる。
いや違うな。
痛みを感じないと言った方が正しいか。
その反面心の痛みにはめっぽう弱いけど……
「エイフィはどう?」
「私も、アルデンさんと同じ感じです。これ以上ないほどの敵意を向けられたと言いますか、あれほど恐怖を感じたことは無かったと思います」
「分かるぞエイフィ殿!あのイヴ殿は正直めちゃくちゃ怖かった」
「こえーよなあの姐さん」
そんな怖いのか?
俺見てくれは結構可愛いから、そんな怖く無いと思うんだけどなぁ…
アリアを除く三人は俺の話で盛り上がる。
「そういえば姐さんっていつの時代の人なんすか?ほら、最近此処に来たウサミミの、なんだったかが未来から来たって言ってたような」
「あー、オレはアーケイン崩落の時代だな。まあ崩落させたのオレだけど……」
あれでも、年代って後から作られたもんだから、ノルンに聞いた方が早いかもしれん。
俺がそう言うと、それもそうかとアルデンは頷く。
「あ、でも姐さんってアーケイン国を崩壊させた張本人だったんすね、どおりで強いわけだ」
「え、あのイヴさんが、剣姫なの!?」
俺とアルデンの話を聞いていたアリアは捲し立てるように聞いてきた。
「あー、隻腕の剣姫っていう格好悪い名前付けられたのはオレだけど」
「え、じゃあ……私のお母さん、エルシャーネって知ってる?」
ん?
なんかどっかで聞いた記憶がある。
アナンとアーケイン、その他の東方諸国が戦争してた時に、アナンの庇護下にあったエルフの里の英雄でそんな名前が、あったはず。
もしかして……
あのエルフの射手さんかな?
俺が戦争で暗躍してた時に表立って動いてくれたから、戦争の発端のアーケイン国の戦力が分散して動きやすくしてくれたエルフ。
面識は無いけど、当時の環境で噂を聞くくらいには持ちきりになった存在だし、俺も勿論知ってる。
「あの戦争の時代に、お母さんが、行方不明になってて……それで、私、探しに行ったんだけど、誰かに殺されちゃって」
そこまで言って、アリアは俯いた。
本当に、戦争っていうんは、クソだな……
「名誉、この言い方はダメだな。クソッタレのお偉い方のための戦争で、亡くなったと聞いた」
アリアのお母さんは結局、アリアを守ることすらできずに死んだのだ。
残された者の気持ちを、汲み取らずに。
これを言ってしまうと、アリアに怒られるよなぁ……
「そう、だったんだね……お母さんは、色々な人を、守れたの、かな……」
「アリア殿、きっと貴女の母君は多くの人を守れたと思う」
詭弁だ。
肝心の、アリアを守れてない時点で、母親失格だ。
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