閑話 仲介者の日常

 世界ソフィアにはイヴたちに言っていないことがあった。


 それはこの世界がゲームを模したものであり、プレイヤーに操作されている世界というものである。


 まあそもそもとして、ゲームという言葉を知らない存在に説明するのが難しい為、世界ソフィアは、それを敢えて説明することは無かった。



 そして仲介者アルカナとはそんなゲームを模す為に生み出された機能のようなものである。


 運営である世界ソフィア

 そのゲームのキャラクターである愚者アレフ

 それを操作するプレイヤーであるツァディー


 この三つを筆頭に、全二十二の仲介者アルカナがこのゲームを模した世界にてダンジョンを攻略を進行しているのである。


 これは、そんな仲介者アルカナの裏側を世界ソフィアが面白半分で覗き見する一部始終だ。


______

____

__



 ステータス評価を反映させ、レベルを与えるシステムである仲介者アルカナテットは社畜だった。


 あらゆる世界サーバーにいる唯一無二の愚者アレフたちの評価をし、レベルという概念を与えることで限界を突破させる権能を持つ彼女だが、仕事の量が膨大であり、休むという概念が無い彼女。


 そんな彼女の唯一の趣味は仕事である。


 否、それしか無いのである。


 テット今日も今日とて、ステータスを反映させる日々を送っている。



◆◇______

愚者アレフ:イヴ・レナク=サタナエラ

等級レアリティSSRスペシャルスーパーレア

Lv.13/140

種族:人間♀

称号:隻腕の剣姫/断罪者


固有スキル:断罪Ⅰ

スキル:

剣術Ⅵ.格闘術Ⅵ.苦痛耐性Ⅵ.

歩法Ⅵ.千里眼Ⅵ.観察眼Ⅵ.

空間掌握Ⅵ.猛毒耐性Ⅳ.超回復Ⅳ.

気配遮断Ⅳ.熱耐性Ⅲ.浄化Ⅱ.

房中術Ⅱ.奉仕Ⅱ.乗馬術Ⅱ.指導ⅠNEW



◆◇______

愚者アレフ:アルデン

等級レアリティANアンノーマル

Lv.7/30

種族:人間♂

称号:一端の戦士/怖いもの知らず


固有スキル:無し

スキル:

大剣術Ⅱ.挑発Ⅰ.



◆◇______

愚者アレフ:ジャンヌ=アレット

等級レアリティANアンノーマル

Lv.6/30

種族:人間♀

称号:女騎士


固有スキル:無し

スキル:

細剣術II.乗馬術Ⅰ.ダンスⅠ.



◆◇______

愚者アレフ:アリア=トネリコ

等級レアリティNノーマル

Lv.1/20

種族:エルフ

称号:箱入り娘


固有スキル:無し

スキル:

長寿命Ⅰ.精霊召喚Ⅰ.



◆◇______

愚者アレフ:イスラ

等級レアリティJジャンク

Lv.1/10

種族:人間♂

称号:愚直な農夫


固有スキル:無し

スキル:

料理Ⅰ.収穫Ⅰ.栽培Ⅰ.



◆◇______

愚者アレフ:サーニャ

等級レアリティJジャンク

Lv.1/10

種族:人間♀

称号:凡庸娘


固有スキル:無し

スキル:無し




 このステータスというものは、イヴ達には見えないものである。




「よし、ステータス反映終ったのです!」


 ゲームの裏側でテットはお楽しみのコーヒーを飲んでから気合いを入れ直し他の世界サーバー愚者アレフのステータスを反映させるのであった。


 そんなテットを眺めていた世界ソフィアは彼女をねぎらうために地球に降りてコーヒーを沢山買うのだった。





◆◇





 愚者アレフがダンジョンにて手に入れた素材はプレイヤーであるツァディーが換金したり、他の素材と合成したり変換したりすることができるが、それを裏側でやっているのは魔術師ベートである。


「こんなに素材が、ぐへへへ」


 それはもう嬉々として素材を合成したり換金したりしていた。


 とはいえ最近は同じ素材ばかりでつまらないし、やる気が起きない。


 難易度が比較的簡単でも素材合成や変換が失敗するのは魔術師ベートのモチベによるものが大きかった。


「うーん、やっぱ爆発が足りないんだよねえ。とはいえサボりすぎたらソフィアに限界無くなるぐらい殴られるしラメドに小言言われるし……ちゃんとやろ」


 世界ソフィア正義ラメド


 魔術師ベートは特にこの二つが苦手だった。


 上司ソフィアは特に苦手なのだ。


 どれくらい苦手かと言うと玄関先のセミファイナル、いや台所のゴキ集団、或いはそれよりも……


「呼んだかな?」


 ここにいるはずのない聞き馴染んだ声が脳をぎる。


 魔術師ベートはありえないくらい首を捻じ曲げて、その存在を視認してしまった。


「げっ!ソフィア……」


「何その反応、なんなマズいことでもしたのかな?」


 にこにこしているが、拳をしっかり握りしめているあたり嫌な予感がする魔術師ベート


「えーと、そのぉ……」


 目を泳がせ、必死に言い訳を考える。


「次やったら、何回か存在を消すから覚悟してね♡」


 魔術師ベートの首に大きな穴を開けながらそう脅してくる世界ソフィア


「は、はい!!」


 魔術師ベートは逆らうことができなかった。


 だって怖いんだもん……


 そうして世界ソフィアは忠告をしてから消えていく。


 魔術師ベートは出るはずのない冷や汗を拭い、あるはずのない心臓の鼓動を覚えるほどには緊迫していた。


「仕事しよ……」


 そうして穴が空いた首を治しながら仕事に取り掛かった魔術師ベートだった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る