第2話 ゲームのための下準備

 気がついたら俺はよくわからないソファに座っていて、テーブルを挟むその向こうにはティーカップを持ち、じっとこちらを見つめる女性がいた。


「君も難儀な人生を送ってきたんだねぇ」


 口を開いたかと思ったら唐突にそんなことを言われる。


 なんだここ……


 俺死んだはずなんだけど。


「あーごめんごめん、混乱させたね」


 混乱も何も一切この状況がわからないのだが……


「そうだ自己紹介をしようか。自分は世界ソフィア、よろしくねイヴ」


 ソフィアと名乗った彼女は何故か知らないが名前を知っているみたいだった。


「唐突だけど君にお願いがあるんだ」


 本当に唐突にそう言ってくる世界ソフィア


 本当に唐突なことで返答に困ったが話が進まないので適当に頷いておいた。

 

「お、ありがとうねイヴ」


 そう言いながらティーカップに飲み物を注ぎ俺に差し出した。


 なんか、黒っぽいというか……

コーヒーっぽいなこれ。


「あ、それ飲む時にはこの角砂糖っていうものを入れるといいよ。もしよければ入れてあげようか?」


「お願いするよ」


「おおー漸く声を聞けたけどイヴは綺麗な声をしてるね」


 そういってにこにこと笑いながら世界ソフィアはティーカップに角砂糖を入れて混ぜ始めた。


「じゃあ、君にお願いの詳細を話そうかな」


 一体何だろうかと身構える。


「そうだなあ、まず何から言おうか……」


 角砂糖を溶かしてティーカップを俺の目の前に置いた世界ソフィア


 なんというか、いい奴?なのかまだ分からないけどめちゃくちゃマイペースな奴だなと思った。


「まあまずは此処が何なのかについて話そうかな」


 丁度俺が一番聞きたかった部分だ。


「此処は君みたいに死んだ者が訪れる空間で、自分は此処の管理者みたいなものなんだよ」


「なるほど?」


「うーん、あんまり理解して無さそうだね」


 まあ死後の世界のようなもので目の前の彼女がここを管理しているといつことは理解できた。


 本当かどうかは定かでは無いけど、とりあえずは頷いておく。


「まあここまでは話半分でいいよ」


「わかった」


 一旦話すのを辞めティーカップに口をつける世界ソフィア


 俺も同じように、ティーカップを持ち上げてコーヒーと思わしき飲み物を飲む。


 普通にコーヒーだった。


 というかなんでこんな所にコーヒーがあるんだ?


「美味しいかな? それは地球で取り寄せたものなんだけど、あ、地球っていうのはね君の世界とはまた違った世界のことだよ」


「は?」


 びっくりした。

 その名前が出てくるとは思ってもいなかったから。


 記憶にはもう殆ど残っていないけど、前世の記憶が日本という国の男子高校生ということは覚えている。


 確か死因は……癌だったっけ?


 よく覚えていないけど何にもできなかった人生が嫌だったってことは強烈に覚えていた。


 だからあんだけ生きることに執念があった訳なのだけれども……


「どうしたの? そんなカワハギみたいな顔したら折角の可愛い顔が台無しだよ?」


 なんかこいつ煽ってね?


「まあ別世界とか言われたら普通驚くよね」


 いやそういうことじゃないんだが?


「はあ、で、続きは?」


「あ、話が脱線したね。じゃあお願いの内容だけど実験みたいなものだよ。君の世界、過去から未来に至るまでの死んだ者達にダンジョンを攻略してもらおうと思ったんだ」


「理由は?」


「先も言ったようにただの実験みたいなものだよ」


 愉快犯。

 

 そんな言葉が頭の中で浮かんだ。


 次第に世界ソフィアへの不信感が強まっていく。


「ああでもね、ダンジョンを攻略できたら何でも願いを叶えてあげるよ」


 ダンジョンを攻略するのに一体何の意味があるのかは分からないが、世界ソフィアは楽しそうにそう言った。


「その道中、沢山の犠牲と葛藤と苦悩の果てに君はどんな願いを言うのかが自分はどうしようもなく気になるんだ」


「オレに拒否権は?」


「勿論無いよ☆」


 何が勿論だよ……


「はあ、とりあえず分かった」


 別にやる事もないし願いという願いでもなんて無いけれど。


 さっき過去未来から死んだ人達が召集されると聞いたから、もしかしたらまた師匠たちと会えるかもしれない。


「まあそうため息をつかないでよ、二度目の人生だと思ってさ」


 三度目なんだよな……


「ああ後は、ダンジョンの攻略についての詳細だけどこれはその世界に行った時に君の頭に内容が入ると思うから心配しないで」


 何それ怖……


「じゃあ、いつの日かまた会えることを願ってるよ」


 世界ソフィアがそう言った瞬間、景色が移り変わった。









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