第2話 邂逅

2027/04/15/17:23 月夜叉公園

終「見えない」

零「なんでかな」


零はまばたきを繰り返しスマホで時間を確認し、視界が正しいことを確認してからもう一度モニュメント時計を観た。


零「あ、もう見えない!3つ目のの長針」

終「失神の次は幻覚とはな」

零「(シュウの言う通り幻覚のかな、長針が2つあったけど片方はなんか薄かった気がするし...きっと、夕日の影がそれっぽく見えたんだ)」


終「――んじゃあ,そろそろ帰るか...」

零「だね」


ジャングルジムから降りて荷物を取り、二人は公園を出ていく


終「そういえばお前,部活は入ってたっけ?」

零「あーいや、去年は色んなとこ回ったけど、結局全部やめちゃった」

終「ウチのロボット研究部に入らないか?今年も新入部員は少ないし,新学期でちょうどいいからよ」


零はあからさまに嫌そうな顔をしている。


零「嫌だー」

終「だよな...」

零「それに、なんか委員会とか部活とか、たくさん人がいる場所で活動するのは疲れるし、もういいかなって...」


分かれ道に差し掛かって終は立ち止まって零に振り向いた。


終「...まあ,どんなふうに考えるかはお前の勝手だけど,高校生活ってのは一度だけだ,やりたいことは迷わずやる,その気持を忘れるんじゃないぞ」

終「またなっシュビッ」

終は敬礼のようなポーズを小声のセルフ効果音付きで取り、去っていった。

零「またな!」


17:35 薄明家


ドアノブの音


零「ただいまー」

?「兄ちゃんおかえりー!」


バタバタと足音を立てて、笑顔で現れる学ランを着た少女、彼女の名は 薄明ハクメイ 亜夜アヤ である、零の妹で中学2年生、14歳である。


亜「買ってきてくれた?」

零「買う?...何だっけ...あ!CD買うの忘れてた」

亜「バックスピンキック!!」

零「ゥ゙ゴォへッ!!?」


腹部に強烈な一撃を受け、軽く吹き飛んで背後のドアに当たった零はそのままダウン


零「おぅふ―効くぅ」

亜「昨日も買い忘れてたじゃん!まったくもー!こんな頼りないんじゃあ、兄ちゃん将来が心配よ!」


亜夜は腕を組んで地に伏せる兄をしかる。


零「確かに忘れたけど帰ってくるときから変な感じがしてたからで...ていうか、僕に買い物任せるやつ多すぎるだろ」

亜「とにかく、今日という今日は許さない!トライアングルガーデンのCD買ってきてもらうから!」

零「まあ、わかったよ...晩御飯の後に行ってくるからさ」

亜「ありがとー!☆」


20:58 薄明家


零は夕食をすませ、財布を持って玄関に立つ。


零「亜夜も一緒に買いに行くか?CD」

母「亜夜はダメよ~。まだ中学生だしもしもかわいすぎて夜の街で変なおじさんに連れて行かれたら大変でしょ?」

零「はいはい...カワイイネー」

零「じゃあ、行ってきます」

母・父・亜「いってらっしゃーい」


21:24 夜州通り(地下鉄)


バスで住宅街から離れ、夜の街広がる駅の通り付近で降車した。

角を曲がれば居酒屋の前で談笑するスーツを着た中年の男たち、派手な服を着て夜の街を進む男女を街灯の光が照らし出す。

車道側で絶えず照らされ続ける「速度厳守」の反射式標識、あたりの暗さでより存在感が増した発光看板が鈍く街中を照らし独特の雰囲気を出している。


零「(流石にこの辺、夜中は人が多いなぁ...)」

?「お兄さん!寄ってかない?お兄さんくらい若い子もいるよ!息抜きにさ」

零「いえ結構です、まだ学生なんで!」


街の雰囲気は住宅街のそれとは異なり大量の雑踏や聞き取れない話し声や笑い声とともに、すれ違う人の様相もさまざまだった。ある女は激務に追われて心身ともに疲弊しきったかのようで視線を下に落とし弱弱しく歩みを進めている。またある男はよれよれの服を着て、今の自分はやりたいことをやって満足しているという表情をしているように見るがしかし、それでいてどこか遠い目をしている。


零「(知らない人がたくさんいる場所は落ち着かない...)」


21:29 内垣書店内


店内の正面入口から入りCDブースへ進む。


零「えーと、トライアングルガーデンの新アルバムは...」


かがんで棚においてあるCDを指でおって探しだす。

一人の女性が、あまり人の居ないそのブースで零に近づいていく。


零「(――こういう場所って変に他の人の視線とか気にしちゃうよなぁ...)」


零はそのまま女性が背後を通過することを考え棚に視線を固定したまま道を開ける。

しかし通り過ぎたと思ったその女性は、数歩進み振り向いて零に話しかけた。


?「やあ、青年」

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