第23話 確認

「ん?どうしたんだ?」


やっと戻ってきた陽介が聞いてくる。

長く選んでいたが結局コーラになったらしい。


「別に?ただお前達を待ってただけだけど?」


「お前じゃなくて桜井さんだよ。

 なんか様子おかしい気がするけど?」


どうやら俺じゃなくて幼馴染に聞いてきたらしい。

幼馴染は俺から見てもさっきから様子がおかしい。


「…別に大丈夫だ。びっくりしただけ」


「びっくり?それは…?

 まあ…大丈夫なら良いんだが…」


「大丈夫だ。あ、未来ちゃん来たな」


4人とも席に座り、持ってきた飲み物を飲む。

割と静かだ。

話題を振るか振られないと無言の空間だ。

いつも話題を振ってくれる幼馴染は

何故か黙っている。


「で?お前たちはテストどうだった?」


さっきからずっと気になったのと、

みんなと喋りたかったので

俺から話題を振ることにする。


「私はいつも通り、8から9割程度」


幼馴染はいつも通りの点を取れたらしい。


「私は高校で初めてでしたけど、

 意外と出来ました」


「俺は赤点回避したかギリギリぐらい」


「なるほどね…なるほど…なるほどね…うん」


「どうした?テスト振るわなかったのか?」


「微妙なんだよなー良いか悪いか分からない 

 ぐらいの微妙。赤点回避してるから分かんね」


たまにあるどちらか分からない感じだ。

良いか、悪いか。どっちなのか…

ちなみに良いは赤点回避、悪いは赤点である。

…これ割とやばいかもなぁ、1教科程度の

赤点なら追試でどうにか出来るけど…

多いと留年するな。勉強流石に頑張ろう。


「私が教えてやったと言うのに…

 全く、ちゃんと勉強しろ」


「そうですよ?良一先輩?

 留年したら私と同じ学年になるんですよ?」


「ははっ、そしたら先輩じゃなくなるな笑」


「笑い事じゃないですよ?」


幼馴染は少し怒ったかのような態度をしている。

まあ勉強教えてもらったし、小学校から同じクラス

が続いてるし、ここで違うのも変か。

柊はなんとも言えない顔をしている。

どういう感情なんだ…?


「まあ終わったしいっか」


「お前は問題を先延ばしにしすぎ」


俺の悪い癖である。

昔から問題を先送りにしすぎる。

追い詰められたらすぐにするんだけどな…

追い詰められるのは赤点とったらかなぁ。


「とりあえずこのあとどうしようかね」


高校生の打ち上げって何するんだ?

行く友達なんていなかったから分からん。


「どうしような、どこか行っても良いが…」


「そういや、俺の友達はカラオケいくらしいぞ」


陽介が本来行くはずだった打ち上げメンバーは

カラオケに行くらしい。

カラオケって定番なのか?


「よし、じゃあ行くか」


「かなり決断が早いな」


「善は急げだ!」


「それは良いけどドリンクバーの元手

 とってからな」


「お前って昔からそういうの気にするよな。

 まあ私もそうだが…」


そう言いながら幼馴染はドリンクのおかわりを

とりにいった。



1時間後


「カラオケだー!!」


カラオケの部屋に入って扉を閉めた瞬間に

幼馴染が叫ぶ。


「おっおい防音だからってそんな大きい声出すな」


カラオケの防音ほど信用できないものは無い。

まるで防音(音漏れ)室だからだ。


「カラオケって叫びたくならないか?」


「分からん」


「分かりません」


「俺も分からないな」


「ふっ…まだまだだな

 私に追いつけないとは…」


「なるほど。

 理解するには

 どうやら俺たちには早過ぎたようだ」


「良一ってまるで桜井さんの翻訳機だな」


…確かに。

自分でもたまにそう思うことがある。


「こいつは大体何言ってるか分からないからな。

 モテるけど彼氏出来ないタイプ」


「なっ! 出来ないんじゃなくて

 作ってないだけだ!

 告白だってよくされるぞ!

 この前だって学年一のイケメンと言われてる

 男子生徒から…」


「へー。で?オーケーしたのか?」


幼馴染は途端に顔を赤くする。

何かを言いかけて、途中でやめて…


「…してないが…?」


「イケメンなのに勿体無いな。

 そういやお前は昔から頑なに作らないな。

 なんでだ?」


「………」


幼馴染は黙ったまま動かない。

あれ?俺なんか言っちゃいけないこと言った?


「まあカラオケですし、歌いましょう

 あと良一先輩は鈍感過ぎです。

 正直アホの領域です」


「右に同じ。お前は最低だ」


柊と陽介がそんな事を行ってくる。

??俺って鈍感なのか?


「陽介にまでそんな事を言われるとは…」


「これは説教案件だからな。

 モテる秘訣はもっと紳士じゃないと…」


俺は陽介に囁く。


「お前…モテないくせに何偉そうな事を…」


「はぁ…モテないからこそ女心が

 わかるんだよ」


「じゃあなんで俺はわからないんだ?」


俺は彼女無し歴=年齢なんだが…


「お前はさっき言った通りに

 壊滅的な鈍感だからだ。

 ほら話はここで終わり、カラオケだぞ?」


「あっあぁ…そうだな。

 悪かったありがとう」


柊が最近の流行っている曲を歌い、

陽介が盛り上がる曲を歌い、

幼馴染が割とむかしめの曲を歌い、

俺が軽くボカロといった

オタクよりの曲を歌う。


…それぞれの個性が出てるなぁ。

歌の上手さは上手い順に

幼馴染>>陽介>柊=俺 だ。

まじでなんでもできるな幼馴染は。

俺が幼馴染に勝てる要素あるのか?

深く考えてみるが…

うん。ないわ。

陽介は友達と多く行っていそうだから

上手いと勝手に決めつける。

友達居ない民の俺と柊は

悪く無いが良くもないぐらいだ。


「あ、ちょっと良一先輩来てください」


「うん?なんだ?」


「すぐに終わるんですが一応確認したいことが…」


「そうか、分かった」


俺と柊はカラオケの部屋から出て、

入り口ら辺まで行く。

柊はあたりを見渡している。

誰かいないか確認しているようだ。


「それで?確認したいことは?」


「直球に聞きます。

 先輩って彼女いますか?」


「はっ!?いきなりの直球だな。

 別にいないけど?」


「なるほど…じゃあ先週のあれは…」


柊は考えながら何やらぶつぶつ言っている。


「それがどうかしたのか?」


「あっ、いえなんでもありません。

 確認できてよかったです。

 ありがとうございます」


「そっそうか…」


俺に彼女が居ないのは

わかりそうなもんだが。

俺に彼女がいると思われる要素が

ないんだが…

一体なんなんだろうか









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