第38話 肉体改造の賜物

「あれ…かな?」


人が戦っているとこに着いた。


人型を取っている魔人?に対し人々は各々武器を持ったり魔法を使ったりして対抗している様だがまるで話にならない。


「あれを倒せば良いの?」


「そう…だけど、あれに勝てるの?魔力も使えないのに?」


「うん、あの程度なら問題なさそうかな。」


私は何故か私とセットで着いてきてくれた剣を抜き化け物と対峙する。


化け物がその異質な魔力を大量に込められた腕を振るう。


私をそれを跳んで回避しそのまま首を斬りつける。


「あれ?やっぱりなぁ。」


奴に剣で触れたところが溶けていた。


んー困った、出来ればこれは使いたく無かったんだけど…


「グギャァ!!!」



「ほいっ!」


化け物の動きに合わせそのまま鳩尾あたりをぶん殴る。


化け物は膝から崩れ落ちた。


「よしっと。」


「よしっ!じゃないわよ!大丈夫なの?」


「うん、当たり前じゃん。」


「当たり前じゃ無いわよ!!??」


ターナさんが憤慨する。


「あーそっか、私ちょっと魔力で肉体改造してるんだ。そのお陰かな?」


「凄いわね、魔力なしならこの世界で一番強いかも?」


「そんな称号に興味ないけどね。」


そう言った瞬間化け物は霧散して周囲の空間が砕け散る。

        

どうしてだろう、それを私は何処かで見た事があるような気がした。

いや、気のせいだね。


空間が修復するとそこには…


「これってあれ?勇者にしか抜けない聖剣って奴?」


だだっ広い空間に一本剣がぶっ刺さっていた。

いやーこれは前世のとあるゲームを彷彿とさせる。

どういうゲームかは言わないが。


「というか行き止まり?」


「そう…みたいね。」


「というかこの剣…」


私のあの剣に似てる。いや色柄とかは違うんだけど放つ存在感が同じというか…


「待って!」


「ん?どうしたの?」

 

「それに触れては駄目よ…」


「でもこれ抜かなきゃ帰れなさそうだよ?」


私が剣を引っこ抜こうとしてるとターナさんが止めてきた。


「分からないけど…分かるの…その剣は抜けないの…」


「確かにね…」


今割と本気で力を込めて抜こうとしてるんだけど抜けない。魔力さえあればどうにかなりそう。


「ちょっと時間かかりそうだね。その間雑談でもしとく?」


「何?急に…」


「良いから良いから。」


私は剣にもたれかかり話を聞く。ターナさんも

剣にもたれかかってきた。


「夢とかある?ターナさん。」


「フフッ。ホントに急ね。そうね…私の夢はここから出て、外の世界を知りたいわね。そして大好きな人と一緒にお酒を飲んだりご飯を食べて、それで一緒のベッドで眠るの…。それが私の夢…かしらね。」


ターナさんの瞳はどこか…悲しげで憂いを帯びていた。まるでもう叶う事が無い事を知っているかの様に。


「まぁ私がなんとかしてあげるよ。私は強いんだから。」


「あら?私の彼女候補にでもなってくれるのかしら?」


「悪いけどもう二人ほど…大好きな人がいるの。」


「あら、席は埋まっちゃってるのかしら。」


ピコン!

………の好感度が60となりました!!


ん?なんて言ったんだ…

名前の部分が聞こえなかった。


「アビス?どうしたの?」


「ん、あぁいやなんでも。」


「ターナさんはここから脱出出来るの?」


「………察しが良いわね。君は。」


「……」


私は目を伏せる。


「私はこの剣を抜かれてこの場所が消滅すれば私も消滅するわ。」


「………」


「あら?もしかして悲しんでくれてるのかしら?」


「さて、どうでしょうね。」


「さぁ悲しい話は辞めにしましょう。取り敢えず聖剣を…」


ターナさんが言葉を止める。

視線の先には…



「貴様かぁ!この空間に入り込んだ侵入者はぁ!」


「おっさんだね。」


「おっさんね。」


「おっさん言うな!!」


かなり年老いた白髪のおっさんが現れて早々

ギャーギャーと喚き立てる。


「まぁ良い、お陰で神女を連れ出せたのだから。これでアレの在処に大きく近づく。おい

そこのチビ!そいつを渡せ!」


「チビって言わないでくれる?後お前は見た目的に悪そうな奴だからこの人は渡さない。」


「まぁ、確かに貴女小さいものね。全体的にね…」


私はターナさんの発言を無視しておっさんを見る。


「そうか渡さないか…なら死んでもらおう!」


おっさんがそう言った途端私はかなりの距離があった筈の壁に激突する。


「アビス!?」


そのまま私は受け身を取り体勢を整える。


「あぁそういう事ね。」


さっきの攻撃の正体は…


「あれって…」



「そうだ!貴様の記憶にもあるのだろう?神女よ!これは…英雄アギレの複製体だよ!まぁ本物には限りなく遠いがね…」


「アビス!逃げましょう!それは貴女の手に負える相手では無いわ!!」


「逃すと思うか?殺れ!アギレ!!」


「アギレって誰…!?」


私は異常な速度で振られる剣をギリギリの所で回避してそのままアギレ?だったっけ、の腹に拳を振るう。


「グハッ。」


気付けば私はまた地に伏せていた。

そこら中に滴る血は私のだろう。


「……何故だ?何故死なない?あり得ないだろう!普通なら死んでいる筈だぞ!!」


「そうだね…まぁ単純な話こいつが弱いからでしょ。」


「っっ!ふざけるなよ貴様ぁ!複製体如きに一方的に叩きのめされている癖にィ!」


アギレの猛攻が更に激しくなる。


アビスの皮膚が、肉体が、斬られ壁面に激突し

血を吐く。


彼女は血まみれになりながらも戦うことを辞めなかった。


「もう辞めてっ!!」


アビスの前に一人の女性が立つ。


「ん?ちょっと待っ…」


「もう良いの…ありがとう、私の為にこんなに…」


「……」


「良いわ!私がそっちの条件を飲むわ。でもその代わり彼女を逃して!」


「ほう?まさか貴様が人間のために自分を犠牲にするとはなぁ!まぁ良い。貴様がアレの在り処を教えるというのならそいつだけは見逃してやろう。」



「アレ…?なんの話よ!」


「ねぇ、」


「フッ、所詮は記憶崩れの神女か。」


「ねえってば!」


「ちょっと!何よ!アビス!」


「あのさぁ!さっきから聞いてれば、なんで私が負けるみたいな前提で話を進めてるの?」


「だってそれは…」


「あーはいはい、別に良いよ。でも私は言った筈だよ。私がなんとかしてあげるって。」


私は約束を守る人間なのだ。


「アビス……」


「ええぃ!面倒だ、そいつを殺せぇ!アギレ!!」


私は剣を構える、そして私本来の型に戻す。

キンッと甲高い音を立て私とアギレは鍔迫り合いになる。


「は…?」


私はそのまま力を抜きアギレの体勢を崩す。

そしてそのまま歩く。ただ一歩だけ。


そしてそのまま私がいた方向に向けられている無防備なアギレの首を斬る。

首から血が噴き出る。

それはアギレが死んだことを意味していた。


「は……?え……?」


「で、次はお前だけどどうする?」




 



◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️

作者の後書き


すみませんかなり投稿が遅れました…

というかこれからも少し投稿間隔が空いてしまうと思います…なるべく投稿しますのでどうかお許しを……



良ければ応援などをして頂けると幸いです!!


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