第35話 最古の神女

「という訳で今日は過去の遺跡を見学してもらう。」


無駄に広い遺跡の真ん中で魔王がそう話す。


「大きいねー。」


「そうだねー。」


「ちょっと二人ともやる気なさすぎじゃないですか?」


「だって興味ないんだもん。」


「この遺跡は大昔あった聖戦の跡地なんですよ!噂によると悪魔が住んでいるという…」


「や、やめようよ、そんな事。」


「おやおや?アズサさん。お化けが苦手で?」


「そ、そんな訳ないでしょっ!」


「お化けに入るの…それ。」


まぁアズサがお化け苦手なのはわかってたけど。


「てかあの真ん中の台座みたいなのなんなんだろね?」


「…確かに、魔力の結界が張られてる。しかもかなり強固だね。」


私でも壊すのはしんどそう。あの剣を持ってくればいいけど。


「あれ?アビス、どうしたの?」


「あれ?なんか体が勝手に動いてたよ。あぶな。」


「大丈夫?昨日の催眠が抜け切って無いんじゃ無い?」


「むむむ、私はアビスさんの催眠なら完全に切った筈なのですが…」


「?」


ふと台座を見ると魔力が走っていた。どこか悲しげに満ちた魔力だ。


「ね、ねぇあれ大丈夫?」


「皆の者!全員避難しろ!」


魔王がそう叫ぶ。


「アビス逃げよ!」


「……二人は先に逃げてて。」


「何言ってるんですか!?アビスさんも逃げなきゃ!あれヤバい雰囲気ですよ!」


「なら少し離れてて。ちょっと本気出すから。」


「………分かった!やばそうだったら助けに入るから!」


「私もですよ!」



「うん。ありがと。」


台座の魔力が赤色に、紫色に、黒色に、水色に。色々な色に変色する。


魔力が一つに集まり人の形を形成する。

そうして人になる。


美しい少女だ。髪は長く澄んだ青色をしていて、瞳は翡翠のような綺麗な目。

身長は私より遥かに高い。アズサくらいかな。


その少女は地上に降り立つ。


「………」


「………」


そうして二人の闘いはどこか悲しげに始まった。

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