第33話 炎の神装
序列一位の二人が闘技場に出てくる。
あの前会った人は何故かこちらに視線を向けていた。何故だろう。
ピコン!
ヘスティアのアビスに対する好感度は100です。
うわ懐かしいこの声。
てか好感度100?何かの間違いじゃ無いの?
何でそこまで好かれてるのか分からないんだけど…
「アビス?どうかした?」
「い、いや何でもないよ…」
まぁ考えるのはよそう。
お相手は…綺麗な青い髪をしている。
あの角…
「あれ…魔人族ですね…」
「魔人族?サーヤ分かるの?」
「あぁ同じ魔族なので…魔人族っていうのは戦闘に特化している種族なんです。身体能力もかなり高いし大体生まれ持った魔力量が多いんです。」
「ヘスティア、リン!両者、始め!」
両者が剣を抜く。
「初手から本気で行かせてもらうわ。」
「そうか、なら私も本気で行かせてもらおう。」
「神装「イフリート」」
「っ!?」
リンは魔力の圧を感じる。
ヘスティアを中心に炎の魔力が展開する。
それらはやがて一つとなりヘスティアに集まる。
「成程…炎の神装か…どうりで強いわけだ。
ならばこちらも本気で向かうとしよう。
神装「ウォーター」」
リンの周りを水が埋め尽くしリンの元へと集まる。
次の瞬間リンが一瞬で間合いを詰め剣を振るう。
ヘスティアはそれを易々と受け止め片方の手を翳し炎を出す。
リンはその炎を咄嗟に出現させた魔力で強化した水で受け止め無力化する。
リンは反撃として水の槍を生成しヘスティアに飛ばす。
「脆いわね。」
それらは全てヘスティアの剣の一振りで打ち消される。
「…ハハッこれは手厳しい。なら…これはどうかな!」
一瞬でヘスティアの周囲に水の槍が生成される。数は軽く100を超えている。同時にヘスティアへと向かっていく。
「これだけの槍を捌き切るのは不可能だ!」
煙が止む。そこには変わらずヘスティアが立っていた。
「…この程度かしら?」
「クッ!良いだろう…神装第二段階「オーシャン」」
先ほどと魔力の気配が違う。
リンが踏み込みの体勢を取る。
足から水流の勢いを利用して最高速の一閃を放つ。
「っ!?」
ヘスティアの顔に動揺が走る。
「痛いわね。」
頬が斬られていた。
かなりの速度だ。
「いや致命傷にならなかっただけでも君は凄いよ。これは魔王様以外見切れなかったんだ。」
「あら、嬉しい事ね。」
少しも思っていないトーンで話す。実際ヘスティアにとってアビス以外どうでも良い物だった。
「…まさかこんな気持ちになるなんてね。」
頬を紅潮させ彼女の方向を向く。
変わらず二人とイチャイチャしているアビスがいた。
「……ムカつくわね。」
数ヶ月後あんな感じになるのは私なのだから。
今は我慢してましょう。その分私の物になったらたっぷりお仕置きしてやるんだからと自身の気持ちを落ち着かせる。
「?」
「いや何でも無いわ。続けてくれる?」
「あ、あぁ。」
今度は剣を振りその高圧かつ魔力で強化された水流をヘスティアにぶつける。
「遅いわよ。」
「それが狙いだからね!」
空中に居るヘスティアの周囲にまた水の槍が出現する。
しかも数は数千を超えている。
「これで終わりだっ!」
明らかに絶望的な状況。
だが…
「神装第二段階「マカド」」
周囲の槍は初めから無かったかの様に消え
ヘスティアの魔力は回復し、炎を纏っていた。
どこか神秘的に感じる程の美しさ。
「くっ!だが、今度こそこれで終わりだ!
オーシャンズ・タッジ!!」
先ほどと比べ物にならない程の高圧な水流がヘスティアを襲う。
「炎の神よ…我が意思に答えよ。
フレイム・ヘブンっ!!」
爆発が起きる。二人の姿が見えなくなり勝敗が分からない。次第に煙が消え最後に立っていたのは…
「勝者!ヘスティア!」
会場が歓声に包まれる。
ヘスティアは気に留めず踵を返し立ち去ろうとする。
一瞬アビスの方を見たがすぐに視線を逸らす。
そのまま足早で立ち去る。
「帰るの早いね。ヘスティアさん。」
「そうだね、なんかこっちの方見てた様な…?」
「まっさか。そんなわけ無いじゃないですか。」
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