第12話 王女

「アビスさんってあんなにお強かったんですね…」


「私の!アビスは最強だからね!あそこまで強いとは思ってなかったけど…」


「あはは…黙っててごめんね。」


「アビスさん!その‥ありがとうございます。

私の為…ですよね。」


「うん。そうだよ。」


「でも…な、なんで私なんかの為に?」


「私はね。私にとっての大切な物を守りたいからだよ。

生きたいように生きてるだけ。」


「アビスさん…」


「その大切な物って私の事かなー?なーんて。」


アズサがそんな冗談めいたトーンで言う。


「そうだよ。」


「え………」


「勿論サーヤもね。」


「あ………」


「あれ?どうしたの。皆」


二人とも下を俯いて固まってしまった。


「ちょっと。おーい。サーヤ、アズサ?」



ピコン!

アズサのアビスに対する好感度が110になりました。

サーヤのアビスに対する好感度は90となりました。


アズサ100超えちゃった!? 

サーヤも急上昇したし!?


「さ、行こう。」


「そ、そ、そ、そうですね。」


「あれ?二人共、なんでこっちに顔向けてくんないの?おーい。」


そのまま寮に着くまで二人は顔を向けてくれなかった。


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「うわーおっきいね。寮。」


「まーね。かなりの量の人が居るし。」


「でもアズサさんとアビスさんは同じ部屋なんですよね?」


「うん。そうなんだよ。サーヤも誘えなくて申し訳ないんだけど…」

 

「いえいえ!それくらい我慢しますよ!」


「でも私たちの部屋来ればいいじゃん。就寝時間になったら戻らなきゃだけど。」


「え?い、いいんですか?」


「そりゃそうじゃん。当たり前でしょ?」


「な、ならお邪魔させて貰いますね…」


「取り敢えず自分の部屋に行こう!」


「お、おー!」




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「案外広いんだねー。」


「二人用の部屋だしね。」


サーヤと一旦別れ私達はこれから長く滞在する事になる自室に来ていた。


荷物を置いて早々に

ドンドンドン!とドアが叩かれた。


「ん?なんだろ。」


「ちょっと私見てくるね。」


アズサが対応してくれる。


「ここはアズサ様とアビス様の部屋でございますね。我が主人であるローゼ様がお呼びです。

ご足労をかけますが来ては頂けないでしょうか?」


随分礼儀正しい人だ。かなり教育が行き届いているのだろう。

多分この人はローゼっていう人の従者だね。

ってそんなの聞いてれば分かるか。

ローゼって誰だ?


「ちょっと!もしかしてアビス知らないの?

ローゼ様はこの国の第一王女様だよ!優しいし聖女の様な人って言われてるんだよ。私と同じクラスだったけどやっぱり風格が違ったなぁ。序列も五位だし。」


む。何故かアズサが他の人の事を夢中に話している事にモヤモヤする。


このモヤモヤはサーヤにも感じている物だ。

なんだろ?不整脈かな。一応病気には絶対に罹らないと思うのだが。


「どうする?アズサ。」


「流石に第一王女の誘いを無視するのはなぁ。

行こうか。」


「分かった。ちょっと待ってて。剣を置いてきちゃったから。」


説明を忘れていたが学園の生徒は帯刀を許されている。


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「ここは?」


「………」


「ねぇ、アズサ。怪しく無い?」


「どうだろう。」


うん。明らかに怪しい。一応何があっても助けには入れるけど。


「申し訳ありません。アビス様はここからは入れることは出来ません。この先はアズサ様だけとなります。」


「えー。じゃなんで私を呼んだの?」


「それはまた後ほど。アビス様はこちらでお待ち下さい。」


「アビス。何かあったら叫んで。すぐ助けに行くから。」


「う、うん。ありがと。」


なんかお姫様みたいだ。

恥ずかしい。


そのままアズサはどこかへ行ってしまった。

どうやらここら辺は音吸収の魔法か何かが張られている様だ。魔力を使って強化すれば聞き取れるだろうがそこまでしなくて良いだろう。悪意は感じなかったし。




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「で、なんで私たちをここに呼んだ訳?」


「それは私が説明するわ。」


「あ、あなたは…ローゼ王女。」


「急に呼び出してごめんなさいね。アズサさん。取り敢えずお茶飲みましょう?」


「は、はぁ。」


案外お茶が美味しい。そんな緊張感の無いことを考えつつ、相手の目的を探る。私のアビスに手を出そうとしてるなら遠慮なく倒すけど。



「そんな警戒しないでください。私は貴女達とおしゃべりしたいだけなんです。」


表情が読めない。

何を考えているのかがわからない。


「私は…そうですね。アビスさんに一目惚れをしてしまったんです…」


「へ?」


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