第9話 魔族

「アビス!気を付けて行くのよ!」


「アビス、辛くなったらいつでも帰って来いよ!」


「はいはい。夏休みとかには帰省するよ。それじゃ。」



今日から王都の中の寮で暮らす事になる。

王都までは列車で来た。

アズサも列車で来ていると思うんだけど、何故か現地集合って言ってきたからな〜。


そんな事を考えていたら急に視界を塞がれた。


「だーれだ?」


「アズサでしょ。分かるよ。」


「正解!」


「………」


「どうしたの?」


「いや制服よく似合ってると思って。」


実際良く似合っている。元がかなり美少女だし。何着ても似合うのかもしれない。


「な、なによ。いきなり。」


頬を染めるアズサが可愛らしく思う。


「早く行こ!」


「うん。」




「人多いね。制服が同じだからみんな王都剣術魔法学園に通うのかな。」


「そりゃそうでしょ。なんたって超名門校だし。でもプライドが高い人とか多いみたいだよ。」


「うへー。面倒だね。というか私弱いし序列下の方になりそうだ。」


「大丈夫、序列が十位以内の人は側付きを選べるの。その側付きと部屋は一緒になるから私とアビスは一緒の部屋になるの。」


「いいの?私なんか選んで?」


「当たり前のことを聞かないでくれる?」


「フフッ。ありがと。」

  


話しながら王都剣術魔法学園に向かっていると


「おい!お前、俺の愛人になれよ。」


「ひっ。」


「あれなに?」


少し遠い所で三人の男が一人の少女に詰め寄っていた。

愛人になれとは大した自信だ。よっぽどナルシストなんだなぁ。


「あれ、この国の第三王子だよ。悪い噂が絶えない人。」


んー。どうやら身分が偉い様だ。

だからって愛人になれとは。


「誰も止めないんだね。」


「皆怖いんだよ。あのクソ王子の権力がさ。」



「良いからさっさと来いよ!」


「嫌…です。誰か助けて…」


消え入りそうな声で誰かに訴えかけている。


「ごめん、ちょっと行ってくる。」




そのまま走り出しクソ王子の頬をぶん殴る。


「嫌がってるでしょ。その子。」


「ぶべし!」


そのまま錐揉み回転しながらぶっ飛んでいった。


「お、お前、なんだ!?この僕に逆らうなんて

命知らずな奴だ!お前ら、やっちまえ!」


取り巻き頼みか。


「へっへっへ。王子からの頼みだ。悪く思「うるさい」ぶべぇ!」


あ、反射的に殴ってしまった。力加減は大丈夫だと思うけど。


「死ねぇ!」


いつの間にか剣を抜いていた取り巻きBが背後に立ち斬ろうとしてくる。

だが、その剣筋は幼稚だ。


「遅い。」


そのまま腹を殴り王子の方にぶっ飛ばす。


「ちょ、お前こっちに来るなーー!」


よしこれで良いだろう。


「あ、君大丈夫?」



「あ、助けてくれてありがとうございます。

私サーヤって言います。」


「私はアビスっていうんだ。で、こっちの子が

アズサって言うんだ。」


「やっほ。アビスの親友!のアズサ。よろしくね。」


「は、はい。宜しくお願いします。」


挨拶をしてる内にある事に気づいた。


「あれ?それって角?それに尻尾も生えてる。」


「あ、こ、これは…その皆さんになら話していいですよね。」



サーヤは髪を捲り上げる。そこには角が生えていた。


「私、実は魔族なんです。」


魔族。角と尻尾が生えていて人間よりかなり強い。昔から魔族と人間族の間で協定が結ばれていたがまだまだ争っていた頃の差別意識が残っている人間達もいる。勿論魔族の方にも下等な人間に従うか!とか言う奴がいる。


「魔族のサキュバスだね。」


「はい、そうなんです。ごめんなさい、幻滅しましたよね。」


酷く陰鬱とした表情だ。多分ここにくるまでにも酷いことをされたのだろう。


「そんな事ないし、別に種族なんてどうでもいいよ。」


「そうそう!それに私達、友達でしょ?」


「と、友達…良いんでしょうか、こんな私に…」


「私はサーヤと友達になりたいよ。アズサもでしょ。」


「そのとーり。」


「な、ならこんな私で良ければ…友達でいてください。」



ピコン!

サーヤからの好感度が55となりました。



「一緒に登校しようか。」


「はい!」






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