第6話
「ここが冒険者ギルドです」
太陽が丁度真上に昇った頃、そう言ってミヤが立ち止まった。
ギルドは立派な建物で、高い屋根が目立つ木造の建築物だった。両開きの扉は丈夫そうな木材で作られており、建物の上部にはギルドのシンボルである、クロスされた剣が描かれていた。
「ここが冒険者ギルド...」
その瞬間、ノノンの中にあったある疑問が解消された。
それは、ここが
SWOはプレイヤーが冒険者となって冒険をするという設定であり、冒険者ギルドは当然存在する。
しかし、目の前のこの剣がクロスされたマークは、ゲームのギルドとは全く異なるマークだ。
(世界中に点在している設定だったギルドのマークが違うってことは...やっぱり完全な別世界っぽい...)
「ノノン様?」
「あ、ごめんね。少し考え事してた」
「そうでしたか。では、中に入りますか?」
「うん。あ、この仮面付けないとね」
ノノンはいくつかミヤに仮面を見せ、その中から選んでもらった『月の微笑み』を被る。
この仮面の表面には月の満ち欠けの模様が描かれており、細やかな装飾は、まるで夜空に散りばめられた星々の輝きを思わせるようだった。
「やっぱりそれが一番シンプルでいいですね。他のものはちょっと...なんと言いますか...独特だったので...」
「私、そういうのよくわからないから、ミヤちゃんが選んでくれて良かったよ」
そう言いながら、ノノンは冒険者ギルドの扉を開ける。
中に入ると、そこには併設された酒場でお酒を吞んでいる人達が沢山いた。
木の丸椅子に丸テーブルが配置され、様々な防具を身につけた冒険者らしき人達が座っている。テーブルの上には古びた地図や戦利品が散らばっており、それぞれの冒険者が冒険話や武勇伝を語り合っていた。
「わぁ〜。すごいね」
「そうですね」
奥の方には受付がいくつかあり、その前には長い待ち椅子がいくつも並んでいた。
その光景を見たノノンは、内心ワクワクが止まらなかった。
(まさに冒険者ギルドって感じ!!)
ノノンは美味しそうな料理の香りも気にせず、奥の受付へと向かう。
(あれ? 仮面を付けてるのにすっごい見られてる気がする...)
「ねぇ、ミヤちゃん。顔隠してるのにすごく視線を感じるんだけど...」
「まぁ、ノノン様の装備は、一目見ればその凄さが伝わってきますからね」
ノノンは慌てて周りの人達の装備をよく観察する。
彼らが身につけているのは、ボロついてへこみがある鉄鎧や、何年も着込んでいそうな汚れた皮鎧などだ。
「ああ!! これじゃあ仮面の意味がない!!」
ノノンが頭を抱える。
その時、ミヤは思った。
(ノノン様は凄く綺麗で優しいお方だけど、たまに少しお茶目な、いや、かなりお茶目な一面を見せる時がある。ミヤがしっかりしないと)
ミヤはそんなノノンに微笑みながら、彼女を支えようとも思った。
「では、後で装備も変えないとですね」
そして、受付に到着した2人は、誰も並んでいない1番右の窓口へと向かった。
(キレイな人...き、緊張しちゃう)
「あ、あの。えと、冒険者登録をしたいのですが...」
ノノンは金髪で顔立ちの整った受付のお姉さんに声をかける。
「冒険者登録ですね。それでしたら―――」
彼女は手元の資料から視線を上げ、ノノンを見る。
その瞬間、彼女の手が止まり、時間が止まった。
(仮面? ん? なにこれ!? なんなのよこの一目でヤバいとわかる装備は!! 顔も隠してるし、お忍びのお貴族様かしら...? いや、お貴族様でもこんないい装備――)
「あ、あのー?」
「は、はいっ! あ、えーっと、冒険者登録ですね。ただいま準備いたしますので、少々お待ちください」
お姉さんは素早く机の引き出しから用紙とペンを取り出した。
「冒険者登録に必要な情報を記入していただきたいのですが、よろしいですか?」
「「はい」」
「ありがとうございます。記入と言っても、名前と年齢だけなんですけどね」
ノノンは渡された用紙に目を通す。
(どうして言葉や文字がわかるんだろう...うーん、私の種族が女神になったことが原因かな?)
ノノンは名前と年齢を記入してから受付のお姉さんに手渡した。
「ありがとうございます。では、次にステータスの鑑定を致しますので、こちらの水晶に手を触れて下さい」
お姉さんは、小さな台に乗せられた丸い水晶を机に滑らせ、ノノン達の前に出した。
「じゃあ、ミヤからいきますね」
そう言ってミヤは水晶に手を伸ばす。
すると、水晶の中に黄色い文字が浮かび上がってきた。
名前:ミヤ Lv.9
種族:ヒューマン
(へー、名前、レベル、種族、
ノノンがそんな事を考えていると、受付のお姉さんが少し興奮したような声を上げた。
「ミヤ様、Lv.9ですか!? 素晴らしいですね!」
「え、そうなんですか?」
ミヤは小首を傾げる。
「はい。この年齢でこのレベルの方は見たことがありません。冒険者にはSS~Fのランクがあるのですが、レベルだけで言えば、ミヤ様は既にDランクに相当しますよ」
「ええ!? すごいねミヤちゃん!」
「ミ、ミヤ、生まれてからずっと村にいただけで、戦った事とかないのですが...」
「
「あ、ミヤ、お母さんに沢山魔法を教えてもらっていました」
「きっとその影響ですね。さぞ、素敵なお母様なのですね」
「そう...ですね」
「ええ。では次に、ノノン様。水晶に触れて下さい」
「は、はい」
ノゾミが水晶に触れ、文字が浮かび上がったその瞬間、お姉さんの顔が青ざめた。
名前:ノノン Lv.120
種族:女神
「こ...これは...」
お姉さんはすぐに席を立つと、「少しお待ちください!!」とだけ言い残して、駆け足でギルドの奥へと消えていった。
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