第6話 一段落
ねーちゃんは死んだ。もう動くはずない。骨は折れ曲がるはずのない方向へ曲がり、潰れ、生きれるはずはなかった。
だが、ねーちゃんは動いている。骨も治っている。そう、ねーちゃんは悪魔となったのだ。正確にはゾンビとなっている。
「ねー。これこっちでホントに合ってんのかな?」
「別に行く当てもないんだからいいんじゃない?」
確かにな、ゾンビ連れて人の多いところに行ったらすぐに悪魔を狩りつくそうとしてるDDWに見つかってお陀仏になっちゃうからね。
と、言ってももう会ってるんだけどね……ねーちゃんが出会った二人は殺しちゃったから、絶賛指名手配中だろうね。知らないけど。
「ところでその刀奪ってきたの?」
その刀とは殺したDDWの持っていた武器である。
「そうだよ、あとついでに銃もあったから貰って来ちゃった! でもこの銃、悪魔にも大ダメージを与えられるなんかすごいやつだからあんまり持ちたくないんだよね~」
この感じ……僕が持てってこと!? いやだよ銃なんて持ちたくないよ!
「一応言っとくけど。ねーちゃんの武器として持っててね、戦うのねーちゃんなんだし」
「私はもういっぱい持ってるの! 腹裂けばナイフ出てくるよ?」
グロいな。でもよくあるやつだよね。体内に隠すのって。
「──はぁ~……仕方ないから持っとくよ。でも一回もこれを僕に使わせないでよ?」
手に取った瞬間、コレの重さが伝わる。これで僕も人を殺せてしまうと、
「大丈夫、大丈夫おねーちゃんに任せなさい!」
大丈夫かな……? 余裕かまして、やられたりしないよね?
***
「隊員二名の連絡が途絶えたって言うから近くだったから寄ってみたけど……まさかゾンビになってるとわね。」
そして周りにいる下級ゾンビと手を長く改造された変異種ゾンビ。まず、コレクターとかそっち系なら置いていくことはないな。
となるとこの程度は要らないほど強いものを手札に持ってる凶悪犯か、もしくは下級ゾンビなどを呼び出せる上位のゾンビか……
隊員をゾンビにして、さらに普通より多少強くなってるから最高位種か?どっちにしろめんどくさいな。
「火流剣術 ・一ノ太刀・
札から出した炎を刀に絡ませての一撃。ゾンビは上下真っ二つに分かれ倒れていく。切り口には炎が纏わり焼き焦がしていく。
「あーもしもし、えっとこのあたり一帯の捜索を頼むわ。ここのは倒したけど、まだ居るかもだから気をつけてね~」
こりゃちょっと動かないとかもね。
***
「家あるよ! ちょっくら強盗してきていい?」
ダメだろ。普通に捕まるだろ。しかしすっかり常習犯である。
「何しに行くの? 特に用がないんだったらあんま迷惑は掛けたくないんだけど」
これでお腹すいたとか言ったら銃で撃ってやろう。
「お腹すいたから。あとついでにこの血だらけの服脱ぎたいのと包帯ほしい。」
危なかった。打つところだったよ。
「包帯要るの? 傷は治ってるんじゃないの?切られれ吹っ飛んでった腕を戻したところの傷ももうだいぶ薄いよ?」
「私じゃなくてあんたのだよ! どんだけ私が弱いと思ってるの? ゾンビ舐めんじゃないよ!」
あーね、僕か。そうだよな、傷治んないしな、持っときゃいけないな。
「でも強盗は良くないな! でもお腹はすいたな、僕はちょーと眠りにつくよ。ここでね。」
無理があった。自分でも自覚できるほど大根演技わざとらしいにも程がある。
「こんなところで寝るの? 風邪ひくんじゃない?」
「違うよ! その間に行けるって話だよ! あーもう、取ってくるなら早くして!」
鈍感すぎるでしょ……大丈夫か?
「おまたせ〜はい、これあんたも着れそうなやつ! だいぶ返り血がかかってるからね。あとうどん」
もう少しまともな物はなかったのだろうかと思ってしまうほどダサい。表にデカデカと知らないキャラが佇んでいる。
やはりねーちゃんセンスはゾンビになっても変わらないのだなと思った。
「うん……ありがと、これからどうしようか?」
「あんたについって行くって何回も言ってるでしょ?」
それは分かってる。何回も聞いた。そこじゃない。
「生活だよ生活! ご飯とかも今はこうしてるけどさ絶対見つかって面倒なことになるでしょ?風呂も入りたいし、ちゃんとトイレに行きたいし……」
ねーちゃんが悪魔だからほかの人には頼れないしな。DDWもいるし先が思いやられる。
「美味しい? いっぱい食べるんだよ?」
……ねーちゃんは呑気すぎる。
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