第5話 悪魔の力

「どうします~? もう動けないと思いますけど捕獲でもしますか~? あ~、少年の保護のほうが優先ですね~分かってますよ~」


 まずい予想外だ。こんな簡単にねーちゃんがやられるとは思わなかった。どうする、僕だけでは勝てないぞ!? どれが最善だ?


「ほら~いくよ~? 僕~? こっちに来なよ~あんまり手荒な真似はしたくないんだよ~」


 どうする? どうすればいい? どうするべきなんだ? 鉈一本では勝てない、どうすればいいんだ!?


 腕をつかまれ、もう前に来ていたと気づく。急いで鉈を持つ腕を上げようとするが、腕を払われ鉈を落とす。


「──図に乗るなよ!!! クソ野郎ガァァァァァァ!!!!! 弟に触れルナァァァァ!!!!」

 見る見るうちに傷が治っていく。体内に打ち込まれた弾がポロポロと落ちていく。


「少年を連れてさがれ!!」


 そしてまた銃声が響きだす。が、それでも回復が止まらない。そして鹿の頭を殴り飛ばし、自分の頭をつける。


「──ねーちゃん!!」


「車に連れていったらこちらの援護を頼む!!」


 すごい速さで突撃してくる。もはや銃弾など関係ない。一直線に僕をめがけて走ってくる。


「さっきから撃ってるんだから無視するなよ!!」


 至近距離になり刀で切り付けられるが構わずこちらに来る。左腕が切り落とされるが止まらない。


「逃すカァァァァ!! 捕マえロォォォォ!!!」


 すると地面から無数のゾンビの手が出てくる。


 身動きの取れなくなったところをハンマーで、一振り。フルスイングで打たれた頭は大きく宙を舞い墜ちる。


「邪魔なのはあと一人だから、ちょっとだけ待っててね。すぐ終わらせるから。」


 出てきたゾンビの腕を引きちぎり、左腕に付ける。そしてまた走り出す。


「よくもやってくれたな悪魔が!!」


 すると一枚の紙きれを出し唱える。


「聖炎よ焼き尽くせ。」


 すると紙から炎が放出される。これにも動じず、突っ込んでいく。炎に飲まれ姿が見えなくなるが、効力が消え炎が消えると黒こげのねーちゃんが少しふらつきながらも走っている。


 そこにすかさずもう一枚。


「聖炎よ焼き尽くせ!」


 またも炎に包まれる。


 が、ねーちゃんも馬鹿ではない。炎が消えるとそこには、ゾンビがかさばってできた壁があった。


「このまま押し切って終わらせる。聖炎よ焼き尽くせ!」


 またもや炎に飲まれる。ゾンビは炎に弱いためゾンビの壁も崩れていく。焼き尽くし、壁が崩れたが姿が見えない。



 どこに行った? やったか? 逃げた? いや、少年はいるあの感じからして置いていくことはないだろう。ならばどこへ……



 すると地面からナイフを持った手が出てきた。そして足を切り裂く。


「ッグァァァァ!!!!! ァァ……フゥー……」


 通常なら発狂し、戦意を失うところだろうがさすが組織といったところか、冷静にまた紙きれを出し唱える。


「聖水よ回復せよ……」


 水が出てきて傷のところにかかり血が止まっていく。


「二度と私の弟に手を出すな!! ……まぁーここで死ぬから二度目はありえないんだけどね。」


「聖炎よ焼き尽ッ──」


 首のとんだ体が地面に倒れる。


 炎に焼かれ黒焦げとなりよたよたと近づいてくる。


 ……やっぱり悪魔になってしまったんだな。


「大丈夫? 怪我はしてない? 痛いところはない? 元気?」


「特に問題はないよ。ありがとうねーちゃんそれより黒焦げのねーちゃんの方が大丈夫? あと腕もそこに落ちてるけど……」


「良かったー! でもごめんね、巻き込んじゃって腕も焦げたのも何とかなるだろうから私は大丈夫だけど、怖かったでしょ?」


「別にいいよ、僕もねーちゃんと居たいし、たとえ危険でもねーちゃんが守ってくれるって言ったでしょ?」


「そうだね! 私が守るんだから安心しなさい!」


 事故で死に、ゾンビとなりいくらに人を殺そうともねーちゃんはねーちゃんだな。


「さて! ねーちゃんは人を殺しちゃったし、本格的に駆除されちゃうからまずはこっから逃げるとしようか」


「さんせーい! どこかあてでもあるの?」


 ……無いな。ここら辺まず知らないし。


「とりあえず向こうでも行ってみるか?」


 日も落ち始め薄暗くなって行く空を見上げ、方位を確認する。


 この先に何があるのかは分からない。ねーちゃんを殺そうとしてくる奴らが沢山いるかもしれない全くどうなるか分からない道。


「私はどこついていく行くよ? じゃあレッツゴー! 向こうのほうへ~!」


「出発だ」

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