第3話 ゾンビ

 朝になり目を開けるとそこは柔らかい太ももの上だった。


「あっ、起きたの? よく寝れた?」


 こんな場所で快眠ができるわけないだろ。枕の質感は悪くなかったけど……


「……おなかすいたな。食料探しにちょっと移動してみよっか」


「そうだね! なんかもう私空腹とか感じられないけどなんか感覚的に血肉を欲してそうな気がする」


 怖いこと言うな……でもゾンビは死んでるしほかの人間みたいに寝ることとかも必要なさそうだしな。これからはもうちょっとねーちゃんを知らなきゃいけないな。


 少し山道を降り歩いていると、


「んっ! 水の音がする! きっとこの辺に川でもあるんだよ行ってみよう!」


 もうちょっと下に行けばなんかあるかな?下の方にでも行けばきっと家とかがあるかもしれない。


 ずっと野宿するわけにもいかないし空き家とかにこっそり侵入しちゃえば良いかな。


「獲物を見っけたから捕りに入ってくるね!ちょっと待ってて~」


 いつも通りの姉の姿に安心する。思い立ったら動く。先に一人でやってしまう癖に何故か懐かしさを感じる。


「どっかいちゃった……まぁー大丈夫だろ。それよりのどが渇いたからな、この川の水って飲めるのかな?」


「お~い! お~い! 大きな獲物が捕れたよ」


「一体何を捕まえ……!?」


 理解が追い付かなかった。体はねーちゃんの体だ。だが頭がおかしい。


 シカの頭となっているのだ。自分の頭を手で持ち鹿の胴体を引きずり持ってくる姉。理解は全く出来ない。


 なんでそれで動けるの? 頭シカだよ? ゾンビってそんな力もあるの? もはやゾンビとは思えないよ?

 てかどうなってるのそれ? 体と頭切り離しても動けるの? 普通に最強すぎるでしょ?


「いや~こんなこともできるんだね! ゾンビって意外と楽しいかもしれない!」


 喋るのそっち!? えっ? そっちなの? シカのシカの頭が喋るんじゃなくて手に持ってるねーちゃんの頭が喋るの? なんかすごいことになってる。カオスすぎるだろ……


「じゃーまず肉を切り出さなきゃだね! 危ないからちょっと離れていてね! ……それ!」


 すごい勢いで振り下ろされるナイフはサクッとシカに切り込みを入れる。


「もう一回ぐらいかな? でも骨が固いんだよな~ちょっと本気でやるか! ……そーれ!!!」


 すさまじい威力だった。いとも簡単に真っ二つにした。自分の手と共に。


「あっ……手が切れて取れちゃった。痛くはないけど何か嫌だわ……」


 さっきのシカの頭つける時は自分でわざと首切ってるのでは? と思ったが言ったら面倒くさいから言わないことにする。


 それにしても威力がおかしい。これも悪魔になって手に入れた力か。血が少し出ているがすぐ止まったな、血は必要なのか? ゾンビってよく分からないな。


「よし、切り終わったぞ! あとは焼けば食えるだろ!」


 せっかく着替えたのに血だらけだよ……これじゃ人前歩けないじゃん。


「……ねー、火つけてくれない? なんか怖い感じするから……」


「あー、うん分かった」


 火が怖いのか? 前は普通に料理とかもしてたのにゾンビになったせい? ダメになった事があるのか、気を付けないとな。


「どれを焼くの?」


「これだよ!」


 突き出されたのは切り方の乱雑な肉塊。


「……これ大丈夫な奴? これ腹壊すよね?」


 不安しかない……


「大丈夫だよ! ちゃんと血は全部飲みほしたし、内臓とかもぜーんぶ残さず取り出してあるしちゃんとやったよ!」


 血を飲みほした!? 完全に悪魔と化したのか!?


「皮をはぎ取るのが難しかったから肉のところ切り出したんだけど、量が少なくなっちゃた! 少ないならも一回取ってこようか?」


「結構です。」


 めっちゃ焼いて食ってみたけどおいしくなく、腹も痛くなった。

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