2ピース目 『美学に会わば美学を磨き、積み重ねに会わば積み重ねを磨く』


さて。

前話で述べたギャップはキャラの味を大きく変えます。それも、小説というフィルターを軽々貫通して伝わるくらいに。


でも?完全悪にそんな要素を追加してもはっきり言って邪魔です。

完全悪に求めるのは、王と呼ばれるほどのカリスマに、情けない敗北の時に得られるカタルシス。(まあ、これも一種のギャップですが。)



ならば、最後は死亡で大成する完全悪、武人敵に対してのキャラ付けはどうするべきだと思いますか?




答えは「積み重ね」です。

それも、第一印象はテンプレのまま、すこーしずつ変わっている点を提示していくことです。


「Fate」アニメに登場する「カルナ」は、武人キャラで有っても、横槍を入れることに関して否定どころか寧ろ完全肯定。(曰はく、それも力と同じ人生の賜物。)


確かにその変わった点によるキャラ付けも素晴らしいです。ですが、「カルナ」と言うキャラを説明する時には、その特徴はかなり後回しで説明されます。

だって、前話で説明したギャップのように、一過性の物ですから。

キャラ紹介文で「ドルオタ。○○の英雄であり、弟子を三人育てたものの、現在は行方不明」なんて書く人なんていないでしょう。



この答えの自分なりの模範としては、ゲーム「アスラズラース」のオーガス、と言うキャラです。


彼は最序盤から武人キャラとして登場、作中では序盤の回想シーン、中盤で登場するキャラです。


主人公の師匠ですが、とにかく豪快。銘酒を飲み干す、美女を抱くのはあくまで休憩。しかも心のモヤモヤは強者との戦闘でしか晴れないと言う正に戦闘狂。


本当にここでは語りつくせませんが、一言でいえば「噛むと味の変わるガム。」

同じく豪快だが、心の中で人一倍葛藤を抱える主人公「アスラ」に幾度も語り掛けますが、人の本質がわからないシッタカ、かと思えば的を得ている言葉ばっかりです。




先に敗北した仲間に「あいつは、マントラ(魔力みたいなもん)に頼りっきりだから脆弱!」と言い切ったのちに、自分にはなく、主人公にはある「愛」の力に関して、「ならば、拳で示してみよ!」と、肉体の強さ第一の自身では知り得ないモノを、隣でずっと師事して見てきた(勿論、彼の愛についても)から、自身が知り得る範囲での答えを提示する事。


要約すれば、「俺は愛なんて知らんが、お前が愛は強いと言い切るならば俺の信じる力(筋肉)を超えるはずだ!」ということ。


それでもやっぱり、第一は修行。評価に関しても、感情の一切は「知らん」で片づけるのに、「お前はおれを睨みつけたから将来強くなる」「俺の存在に気が付かないほどの戦いに没頭する姿勢、成長したな!」と、主人公に関する回想では、「感情の一切を知らない、知ろうとしない希薄な人物だが、決して師匠として目が利かない訳では無い」というスタンスで存在していました。



ここでキャラの大枠を示したのちに、中盤の彼の見せ場。そう、なんやかんや敵となった主人公アスラとの決戦です。


最終盤で明かされる彼の美学、「悪に会わば悪を砕き、善に会わば善を砕く。貴公は我で、我は貴公だ」=「お前も俺も、自分の感情の為に誰彼問わず戦い、壊すだけだ。」


これに関し、アスラは「(俺は守るべき娘の為=愛の為に誰かをぶっ飛ばすから)貴様とは違う!」と反論しますが、実際はどっちも正解です。



娘を泣かせる奴を黙らせるために拳を振るうアスラ。確かに自己の欲求を満たすために戦うオーガスとは違います。

ですが、小さい頃から娘をあやせず、敵を黙らせることしか出来ないアスラ。

それは結局、「(娘を泣かせる奴は誰であれぶっ飛ばすと言う)自分の感情に従って、満たすためには(娘を泣き止ますには、それしかできないから)敵を殺すことしかできない、俺と同じ」


こうして見れば、どちらも欲求のために戦う点では同じでしょう。(オーガス自身も、育ったアスラと永劫戦うというよりは、一度きりのでおしまい、戦闘狂という割には極上の素材を使い捨てにする、刹那的な快楽主義者)


紹介文を作ってみれば、「アスラの師匠であり、豪快で剛健な人物。戦闘を唯一の興とし、アスラを自分と互角に戦える存在として鍛えるも、以外と彼のプライベートにも反応を示すようで…?」となります。

この奇妙な点に、少し興味深くなりましたか?

もっと詳しく知りたいのならば、「アスラズラース」を購入してプレイしてみましょう!(ゲーム性はお勧めできません)




先の「カルナ」と比べてみれば、このように、オタクが長々と語れるほどの(一言では表しきれない)美学を持ち、それは積み重ねで深みを掘る。


戦闘狂で、戦闘に対しての美学を持つキャラは掘ればいくらでもいます。

ですが、何か一つ足すことで、オリジナルが完成し、生き生きとしたキャラクターが生まれる。



これこそ、「キャラクター作りは既存に1を足す」の完成形と言えます。

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キャラクター作りは既存に1を足す。 マーまーまき @marumasa0940

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