第6話

俺は考える。この魔法は、どうみても地球の迫撃砲である。軍事には詳しくないが、FPSで使ったこともあれば使われたこともあるあの迫撃砲だ。着弾は遅いが、その威力は広範囲に及び、曲射による攻撃は防御が困難で、精度は悪いが当たれば敵を一掃する。この迫撃魔法は俺がイメージする地球の迫撃砲を模倣している可能性がある。となると射程距離や弾道の計算について考察を深めると命中率が上がって行く可能性もありそうだ。現在の俺のスキルでは制御が難しく、使いどころを見極める必要がある。今回3回の発射で18MPを消費してしまった。今は残りMPがわずか3。このような魔法を使った一対一戦闘は、はっきり言ってリスクが高い。誤爆も恐ろしく、なにより単体目標への命中率に不安が残る。動く相手に当たる気がしない。


俺たちは草原のど真ん中で立ち尽くしていた。タニアとリーナが、俺がさっき発射した迫撃魔法の着弾地点を眺めている。視界の端に緑の粒子が見えた。


「ちょっとウノレド、MPが少なくなって体調悪くなった?」タニアが心配そうに問いかける。


俺は首を横に振った。「いや、大丈夫だけど…」


その瞬間、ニコニコしながらリーナが俺に向かって回復魔法を放った。「ヒール!」どうやらリーナは回復魔法を使いたくて仕方がないようだ。


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俺の右腕がじんわりと熱を帯びてきた。少し赤くなっているのが見える。腕をみる俺に気づいたリーナがまた、俺に向かって回復魔法を放つ。どうやらリーナは回復魔法を使いたくて仕方がないようだ。


じっとこちらを見ていたタニア

「ウノレド、鑑定魔法を使ってみて。周囲に広げて、全体を見る感じで」


指示に従い、鑑定魔法を発動させる。


グラスホッパーの卵: 32

破損したグラスホッパーの卵: 10


何だこれは?


タニアに報告すると、彼女は考え込んだ。


「葉っぱの裏に卵があったのかしら。数がわかるなんて、さすが特化型鑑定ね。」

「破損した卵があること、腕に違和感があったことから、おそらく変換スキルの影響ね。」

「変換スキルって何?」

「ウノレドは変換スキルをもっていてね、腕に紋章っぽい反応がでているし、変換スキルが発動すると、レベルアップ時に何かしら恩恵が発生するのよ。」


内心でガッツポーズする俺!チート展開かな。しかし、この魔法とMPでどう戦っていくか…。バッタも定期的に倒したいし。

考えこんでいると、リーナがニコニコしながらまた腕に回復魔法をかけてきた。おい!!!

お胸とプラチナブロンドの髪が嬉しそうに揺れている。


草原の風が草をさらさらと揺らし、遠くから鳥かモンスターの鳴き声が聞こえてくる。


「リーナのお父様からステータスをきちんと上げるようにと頼まれているの。だから今日はこの後、しっかりと戦ってレベルアップを目指すわ」

タニアが言い、緑の粒子が広がる。探索魔法のようだ。


見つけた腰ほどの大きさのツノうさぎ、アルミラージを倒していく。タニアが魔法でアルミラージを気絶させひっくり返し、俺とリーナは借りたナイフで仕留める。

黙々と作業をこなしていると、リーナが小躍りしながら叫んだ。


「レベルアップ!ウノレド君はどう?」

「ちょっと待って、こっちもレベルアップしてる」


名前:ウノレド Lv1 → 2

タイプ:「主人公」「男」

HP 43/43 → 54/54

MP 21/21 → 26/26

STR 10 → 12

VIT 8 → 10

AGI 14 → 17

INT 21 → 24

RES 18 → 21


《スキル》

『身体強化LV1 → 2』『疾走LV1』


《魔法》

迫撃魔法LV1


《ユニークスキル》

『バッタ鑑定LV1』

『バッタ変換』


ステータスを眺める俺の周辺に緑の粒子が漂う。タニアの鑑定魔法だ。


「身体強化のスキルがレベル2に上がってるわ。こんなに早くスキルレベルが上がるなんて、珍しいわね。」

「これは変換スキルのおかげだろうな」

「そうね、多分あなたの変換スキルが発動しているわ」


今度は俺に銀色の粒子が飛んでくる。リーナはヒールをかけることができて満足そうだ。最近俺に魔法かけるのに遠慮なくなってきてない?


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移動しながら鑑定でバッタの卵を探していく。鑑定でMP消費がないのは本当に助かるな!

しかし、どれだけ草をかき分けても卵のようなものは一つも見つからない。草原全体を見渡しながら鑑定を使っていると、徐々にモヤのようなものが視界に浮かび上がるようになった。


MPも少しずつ回復している。一番濃いモヤのところに鑑定をかけてみると、結果が出る。


グラスホッパーの卵: 56


俺は移動を止め、タニアとリーナに相談する。「あそこに迫撃魔法を打ち込んでいいか?どうやら卵があるみたいだ。」タニアはうなずき肯定する。


60mm迫撃法をとなえるとポンポンポンといった破裂音のあとキーーンという金属音がして、ほどなくすると連続して爆発音がした。その衝撃で右腕がまた熱くなる。作戦は成功したようだ。周辺で銀色の粒子が飛び散る、またリーナに回復されたようだ。


再び鑑定魔法を使うと、結果が表示される。


グラスホッパーの卵: 7

破損したグラスホッパーの卵: 49


大成功だ!




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