第11話 自爆

「待っていろ。今癒してあげるから」


「お願いします。お兄さま」


 ルークはロベリアの患部に手をかざして、魔法を唱えた。「治癒魔法ヒール


 すると、緑色のきらめきがロベリアの腕を包み込んだ。みるみるうちに腕の火傷が消え、皮膚が再生していく。ほんの十秒足らずで、ロベリアは完治した。彼女は立ち上がって兄の頬にキスした。


「ありがとう。お兄さま」


「無事でよかった……」


 ルークは息切れがした。二人で戦うときはいつも治癒魔法ヒールを行使するのはロベリアの担当だった。ほぼ剣技のみで戦うルークが敵の元素魔法に負傷した場合、彼女が回復してくれた。たとえ相手に自身の腕を切り落とされても、妹の魔力量と高い行使能力ならすぐに再生して剣を振るい続けることができた。


 今回も、ロベリアならすぐに自分で治して立ち上がれたはずだが、ルークが癒したのは労りだった。妹への愛から、自分が治せるギリギリの負傷なら自分が治すことにしている。彼女から魔力を借り入れたりはしない。戦闘中でないかぎり。


「奴は、死んだのですか?」


「いや、なにかがおかしい」


 ルークは周囲を見渡した。宿の廊下と、ドモンジョが潜伏した部屋を。爆風と爆炎にさらされたのにまったく無事だった。ドアも壊れてはいないし、壁は燃えず、焦げてすらいない。そしてなにより異常なのが、ドモンジョの死体だ。爆散した肉片が、青白く光ると、警戒する二人の目の前から一片残らず消失した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る