第7話 止まない紅雨
「お前が俺のことを尾けていたのは知ってる。それと
「それで?」
結局何が言いたいのかよくわからない。どうしたいのか、どうしてほしいのかがよく分からなかった。
「もう一回聞くぞ?お前……何してきた!」
何回聞かれようと私の答えは変わらない。
だって大したことはしてないもの。
「特に何も?」
私がしてきたこと?害虫駆除についてだろうか?
でも、そんなしょうもないことでこんなに怒るはずがないよね。
だって害虫と言ってもゴキブリみたいなものだし。
だってむしろ喜ばれるべきことだし。
「じゃあなんで千雨の家の方面で騒ぎが起きてる?」
「さあ?」
「……じゃあなんで救急車とパトカーがこんなに多い?」
「さあ?」
「…………じゃあなんでお前の制服も、傘も!なにもかも、そんなに
「あ~、これは害虫駆除したときにその体液が飛び散っちゃってさ〜。ほんとに勘弁してほしいよね。洗って落ちるといいんだけど」
「ふざけるのも大概にしやがれ!!」
全く間違ったことを言っていないのに、何故か彼は私を睨んで激昂しだした。しかも瞳に涙まで溜めて。
何か
だとしたら謝らないと。
「ごめん、何か気に触ること言っちゃった?それならごめーー」
「もうお前黙れ、喋んな。……俺が出来ることなんてお前を突き出すことくらいしかねえけど、千雨のためにもそれくらいは……」
「ねえ、さっきから千雨千雨って何なの!私のことはどうでもいいの!?」
「どうでもいいよ。犯罪者の言葉なんて」
「っ!!」
風船から空気が抜けていくかのような脱力感。
凍てつく視線が私を射抜き、足からガクリと崩折れる。
生気も血の気も失われていく感覚。
「ほらいくぞ」
最早私を人としてすら見ていないような瞳でそう言った彼は、動けそうもない私を強引に立たせ、腕を引っ張る。
……痛い。辛い。
痛い痛い痛い痛い痛い!
だばだばと漏れ出していく彼への愛情は際限を知らず、
こんなひどい人だった?
こんな傷つけるような人だった?
泣かせるような人だった?
……違う。
もっと優しくて、私のことを考えてくれて、温かみを感じられる人。
断じて……、
「…………君じゃない」
「は?」
無気力に引きずられるがままだった私は、足に力を込める。
君じゃない君に、私の心が動かないのは当たり前なんだ。
でも君を戻す方法なんてわからない。なら、
「ねえ、壊れたおもちゃってどうしてた?」
「……何の話だ?」
「私はさ、壊れてどうしようもなくなったらギリギリまで分解して、パーツの細部までどうなってるか確認するの。普段見られないところまで見て、最後の最後まで有効利用するの」
「で?」
「だから君を君に戻すために………………君を壊すね!」
言って、意味がわからないといった調子で顔を歪める彼をその場に押し倒す。
まだ状況を理解できていないからか反応が鈍い。
従順で聞き分けが良いのは素晴らしいことだ。
彼が目を見開く。
今更足掻こうと赤子のようにジタバタしているがもう遅い。
「待っ!!」
私は傘を高々に振り上げる。
「おはよう、
いつまでも。
永遠に。
止め、辞め、病め………!! 明日葉ふたば @Asitaba-Hutaba
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