二 自難波夜赴杭州事
地方都市から中国への直行便はあるが、渡航先の浦東空港は実家へ行くには三時間半のバスを乗る必要がある。また、中国国内ではドコモの回線は全く使えず、中国の携帯番号なしでは空港内の無料WIFIすら利用できないので、親と連絡が取れない恐れがあると予想し、関空から地元の杭州蕭山空港に渡航することにした。往復運賃は四万円ほどで、加えて二万円ほどの新幹線代が要された。
便は夜八時発だが、手土産を色々用意する必要があるため、朝一で大阪に赴いた。本来は夜までどこかのレストランで夜まで寛いぎたかったが、結局買い物のためだけで時間がほとんど残らなかった。昼飯はお好み焼きを選んだが、会計は何と1800円ぐらいだった。
梅田の高速バスに乗って関空に行った。これまでは二回関空に行ったことがあり、全て友人を出迎えるためだった。窓から工業地帯に聳え立つ巨大の倉庫と縦横する無数のパイプを見ながら、己の微渺さを嘆かずにいられなかった。連絡橋が壊れた時に通ったことがあり、今はすっかり復旧されて、何年経ったのであろうか。
関空に着き、航空会社のカウンターに近付くと、中国人の数が一気に急上昇した。その騒がしさこそ変わらないものだ。一方、五年半も日本に滞在した私は、他人から見れば彼らと何かが違うと言えるだろか。私は周りの乗客を観察し始めた。中国人は九割以上だった。全身ハイブランドを纏っていたか、中国人らしい貧相な服を着ていたかに大分けられる。日本語で通話をしていた人もあった。関空はさすがに混んでいて、安全検査まで一時間立たされた。税関を通過してやっと待合ロビーに入った。
ロビーには煌びやかな免税店が立ち並んでいた。私は急いで父にあげる予定のたばこと日本酒を物色した。たばこを吸わないので、プレミアム的なものを探していたが、やはり普通のセブンスターの一カートンを選んだ。酒は適当な金箔入りのものを購入した。
色々済んで、もう七時頃になった。さすがにへとへとになって、お腹も空いた。ロビーを見回して、飲食店を探したかったが、チエイン店がなくほとんどインバウンド向けの高価な店だった。残念ながら私はもう観光客とは言えないのだ。炊き出しのような、貧相な器で盛り付けた肉うどんで凌ごうとした。それでも千円ぐらいだった。
時間も時間なので、最後に彼女とビデオ通話して、搭乗口に行った。搭乗口はロビーから結構距離があり、小型な地下鉄に乗った。ちょうど搭乗手続きが開始したところだった。
機内に入ったら、ざっと見て乗客は九割以上が中国人だった。皆騒々しく、手荷物を荷物棚に押し込んだり、取り出したりしていた。私は緊急出口の傍の席だった。隣には誰も居ないので運がよかった。だが、更に隣には中国人のギャルが座っていた。
飛行機は離陸した。五年半も離れた故郷杭州、私にとってはもう異国なのだろうか。感傷的な情緒もあるが、まだ日本に戻れると思うと、心底には安らかではあった。
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