第4話 転生ゴブリン&オーク

「鬼神戦隊ゴッドオーガー!ここに現臨!」


何度目の変身だろうか。ひっきりなしにゴブリン、ゴブリン、ゴブリン、オーク、ゴブリン、オーク…である。


女神エリシアが言うには性犯罪者→ゴブリン、強盗→オークとして転生してきている、だそうなのだが。

ちなみに殺人にまで至る犯罪者はホブゴブリン、ゴブリンロード、オークロードに転生してくる。


なんだか申し訳ない気持ちになっているゴッドオーガー一同だった。

何故なら自分たちが生きてきた世界にはそれだけ凶悪な犯罪が蔓延しているという事実を突き付けられているからだ。

生まれ変わってまで自分の欲望を満たすべく、こちらの世界へ転生してくる奴らに憤りを覚えてもいた。


「なぁ、魔王はいつ誕生するん?」

オウキンはエリシアに聞いてみた。

「うーん、近々としか。多分まだ魔王の器になるような奴が見つからないんじゃないかしら?」

魔王の器になるような悪人とはどんな奴なのか。

今転生してきている奴らも十分に極悪非道な罪人なんだが。

先行きが不安だ。

そもそも誰の陰謀で向こうの犯罪者をこの異世界に転生させるなんてシステムが組まれているのか。

「思うんだが魔王討伐も大事だが、この現象の首謀者を伐たなければ終わらないのでは?」

蒼太の意見に皆が「確かに」と納得した。


「そうなのよねぇ…」とエリシアも困ったように言う。

何せこの世界中を探せど探せどそれらしき人物に辿り着かないそうだ。

「その都度、召還魔法を使っているというよりは向こうの世界で悪人が死んだらこっちでモンスターとして転生してくるってシステム構築されてる感じなのよね。かなり大規模な術式だと思う。暗黒魔道師かなんかの生き残り?それとも…」


考えていてもわかるものではない、と話はそこでひとまず終わった。

事態は思っていたよりも厄介なことになっているようだ。


「こっ、こちらエルフの里!ゴブリンの大群がそこまで来ています!助けてください!!」

エルフの長(女性)よりゴッドオーガー出動要請が入った。


女神エリシアがゴッドオーガー一同が元いた世界の技術を魔力で真似て作り出した通信手段、トランシーバーのようなアイテムでゴブリンやオークの出現が告げられる。

一応、それぞれの村や街にも力自慢の男性が武器を用いて配置されてはいる。

しかしながら何分、事件ひとつない平和そのものだった100年を生きてきた人々だ。

戦闘力は皆無な優しい優しい人々なのだ。


だから、この一月足らずで拡大してしまったモンスターパニックの中、ゴッドオーガーは正にこの異世界のヒーローそのものとなりつつあった。


「出動よ!ゴッドオーガー!!」

「おう!!」


エリシアの号令に一同は気合いを入れて応えた。



エルフの里に着いて間もなくゴブリンの軍勢が押し寄せてきた。

グフグフと下卑た笑みを浮かべながらオーガー一同を見ている。

するとリーダー格と思われるゴブリン、ホブゴブリンが話し始めた。

「なんだ。せっかくのエルフの里だってのにエルフの女が見当たらね~な。異世界ならではの女をヤれると思ったのによ?」

やはり元いた世界の人間、日本の性犯罪者だった男が転生した奴らのようだ。


「ん?なかなかいい感じの女がいるじゃないか。そこのポニテとショートの女。うまそうじゃねーか。グフフ」


ホブゴブリンは黒夢と紅葉を下から上まで舐めるようにまじまじと見ながら舌舐りした。


「コクムちゃん、すっごいキモいね奴ら」

「うん、キモさ極まれりね。ササッと片付けましょクレハ」


紅葉と黒夢はホブゴブリンをロックオン。

それぞれレッドとブラックに変身して戦闘開始。


男連中はブルー、グリーン、イエローに変身して無数にいるゴブリン討伐にかかる。


「破砕拳・炎乱舞!」炎を纏った拳の弾幕、からの回し蹴り乱発。

ホブゴブリンの顔面は燃え、蹴りで吹っ飛ぶ。

「熱いぃ!いてぇ!!畜生が!」

ホブは火傷と腫れた顔になってはいるが、まだまだ戦える様子。

手に握った鋭利な刺に覆われた棍棒で黒夢に襲いかかった。

「多少壊しちまうがそれなりに使えりゃいい!食らえ!!」

ホブの棍棒での猛攻。ブンブンと激しく打撃を加えてくるが黒夢の素早い動きの前に全く意味を成さない。

「おぉっ!さすがコクムちゃん。掠りもしない!」


少しニヤリと笑みを浮かべた黒夢はホブに向かって「もういいかな?」と息を吸うと激しくシャウトした。

いわゆるデスヴォイスである。

その激しい叫びは強烈な衝撃波となってホブへぶつけられた。

「アガガガガガガガッ!」

耳から脳へと響き渡り、さらに全身の神経、内臓、筋肉へと響いて破壊していく。

黒夢の恐ろしい破壊的な必殺技である。

ドシャッと倒れ込むホブゴブリン。完全に絶命していた。


「おぉ怖い!味方で良かったでホンマ」

イエローの黄金がリアクションなのかマジなのかブルルと震えながら言った。

そういう黄金の足元にも黄金の技である毒の黄砂で倒されたゴブリンの死体が転がっている。


グリーンの緑樹、ブルーの蒼太も仕事を終えてパンパンと手をはたいていた。

大木を変形させた斧で潰されたゴブリン、水の竜に飲まれて圧死したゴブリンが転がっている。


元人間であろうが悪には容赦ない鬼の戦隊ヒーロー達であった。





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