金剛姫side2

前半のちょこっとだけ義妹ちゃんsideやで?

━━━


「あ、あの、銀色の風シルフ様?その、近すぎませんか?」


「ああ、すまん。うっかりだ」


気が付いたらスクリーンとの距離が0.000001mmになってしまった。兄さんが映ってたので、身体が勝手に動いてしまった。全く、イケメン過ぎるのも考え物だ。魔性の男じゃないか。


とりあえず一番スクリーンに近い席に座り直す。さぁドМよ。配信を始めたまえ。


「ふっ、そんな冴えない男なんかよりも、俺のイケメンポーズ集を上映しないかい?」前歯キラーン


今、なんつった『精棒』?ワイの兄さんが冴えないだと?ふざけたことを抜かしたカスには『自害しろ』を使わなければならないみたいだな。どうせ人間などすぐに生まれる。このまま永眠を


「はい、始まりますよ~」


ふっ、命拾いしたな。『精棒』なんかよりも、兄さんの配信こそが何よりも大事だ。さぁ早く流せ!早く!夕霧やクルーシャも映るだろうが関係ない。ワイのレンズは兄さんしか映さないからな。


そして、配信が始まると、


『巨乳で綺麗なお姉さんホイホイ!』


世迷言が配信から聞こえてきた。


━━━


━━



「こ、これは…」


配信を開くと、そこには半裸になっている新さんが映っていた。そして、朝から大量の汗を流し、滝つぼに汗が弾かれて炭酸のようになっていた。だが、そこではない。


「な、なんだい、この男は…」前歯キラーン


王寺さんが珍しく前髪をいじりながら配信を凝視していた。そりゃあそうだ。というかここにいるSランク冒険者全員が絶句していた。


『巨乳で綺麗なお姉さんホイホイ!巨乳で綺麗なお姉さんホイホイ!巨乳で綺麗なお姉さんホイホイ!』


謎の掛け声と共に、正拳突きを放っている。そして、これは配信だ。つまり、


『朝から何を叫んでるねんwww』

『まだホイホイは諦めていないんだなwww』

『馬鹿すぎるにもほどがあるやろwwwってかこんな真面目な顔をした新ちゃん初めてみたわwww』

『滝行って煩悩を消すものだよなwww?』

『いや、そもそも必要ないだろ…義妹ちゃん、クルーシャ様、夕霧さんに好かれているのに…』

『それな。朝から新ちゃんをぶん殴りたくなったわ』


コメントも流れてくる。新さんに対する辛辣で痛快なツッコミがなされているのだが、今、私たちはSランク会議の真っ最中だ。正直、死にたくなった。すると、


「…これはどういうことだ…」


「ひっ!?」


一番前で腕を組んでいる銀色の風シルフ様が地獄の底からきこえてくるようなつぶやきをした。私だけではなく、他のSランク冒険者全員が恐れ慄いていた。そして、何を思ったのか、会議室を後にして、どこかに行ってしまった。


その間も全く空気を読まずに『巨乳で綺麗なお姉さんホイホイ』と叫んでいる新さんがいた。久しぶりに人をぶん殴りたいと思った瞬間だった。


「それで、この、ゲスで不細工で品性の欠片もない男を由緒あるSランク冒険者に推薦したいというのはどういうことだ…?」


『聖なる剣』の片眼鏡の鏡谷恭介かがみやきょうすけさんがジトっと私を見てきた。


私、何も悪くありませんよね?恨みますよ、新さん。


「そうだぜ?こいつから熱を感じない。まるで、アザラシみたいだぜ?」


そして、『聖なる剣』の最後の一人、谷川焔たにがわほむらがつっかかってきた。


それはいいんですけど、アザラシみたいってなんですか?馬鹿なの?


「お嬢様…」


そんな心配そうな表情をしないでくださいよ、銀蜘蛛。私の選択は間違っていません。ですから、


「ん?なんだ?アレは鬼族…?」


「それだけではない…アレはエルフだ。本物か…?」


私の思考を遮って『聖なる剣』が配信を観ていた。やっと、ちゃんとした話ができそうだ。


「はい、本物です。そして、私たち人類を支配しようと画策している敵です」


「「「ッ」」」


緊張感が取り戻せました。ふぅ…ようやく本題の話ができそうです。


が、


『夕霧さんが木陰から新ちゃんを覗いてるwww木がみしみしいってるやんけwww』

『それだけやないぜwwwクルーシャ様も観てるでwww?』

『お、クルーシャ様が仕掛けた』

『新ちゃんはどう反応するのかな(笑)?』


そして、画面の中ではクルーシャと呼ばれるエルフの長老が新さんに近付いていった。


『センパァイ、今、何をしていたんですかぁ?』


『巨乳で綺麗なお姉さんホイホイってえええええ!?ク、クルーシャ!どどどどどどどうしてここに!?』


『めっちゃ焦ってるやんけwww』

『ここに来るまでもこそこそ移動していたしなwww』

『さぁどうする?』


クルーシャと呼ばれるエルフが下からのぞき込むように新さんを覗き込む。あまりの媚媚具合に私も銀蜘蛛も吐き気を堪えていた。クルーシャに続いた鬼族の夕霧も私たちと同じような表情をしていた。


気色悪さは種族を超えるらしいですね。


『それでぇ~何をしてたんですかぁ?私気になりますぅ』


カマトトぶる2900歳。これで純粋な新さんを騙しているのだから女って本当に怖いです。すると、


『…沙雪の病気が良くなるように祈って正拳突きをしてたんだ。十五年間も病院のベッドの上で過ごしていると思うと可哀そうで仕方なくてね…』


『コラあああああwww』

『病人を隠れ蓑しちゃアカンやろwww』

『巨乳で綺麗なお姉さんをホイホイしてたじゃねぇかwww』

『なんでこんなに憂いた表情ができるねんwww知らなかったら騙されてるわwww』

『役者やなぁ(笑)この辺りの誤魔化し方は義妹ちゃんと兄妹だって思わされるな』


そして、


銀髪美女:『嘘をつくんじゃねぇよ、クソ兄!ワイの名前どころか『巨乳で綺麗なお姉さんホイホイ』しか言ってなかったじゃねぇか!?ってかクルーシャも夕霧もワイの兄さんに近付くな!雌臭くなるやろうが!』


この配信を盗撮していえる『義妹ちゃん』が現れた。そして、Sランク冒険者を見ると、


「お、俺たちは一体何を見せられてるんだい?」歯キラーン


いやぁ、まっことに申しわけありません。私もこうなるとは思わなかったんですよぉ。


とりあえず、新さんの強さ、そして、エルフが私たち人類を害そうとしていること、後は個人的に『義妹ちゃん』の行方を捜すという話を進めたいので、重大なポイントに配信を戻そうとすると、


『さっきから『巨乳で綺麗なお姉さんホイホイ』って言っていた気するのだけれど?』


「おお…」

「これは…」

「俺の子ネコちゃんにしてあげてもいいかもな」


『精なる棒』が夕霧とかいう鬼族に喰いついた。胸を強調するようなポーズに男性陣が前屈みになっていた。私と銀蜘蛛はゴミを見る目で見下していた。そして、クルーシャも酷い顔をして夕霧を見ていた。


『露骨に巨乳アピールやな(鼻血)』

『素晴らしい。そして、新ちゃんは爆発しろ』

『夕霧さんなんかは完全に『巨乳で綺麗なお姉さん』やろ?何がダメなんや?』

『気になるな』


そして、新さんはそんな夕霧さんのアピールを無視して憂いた表情をする。


『はぁ…まぁ聞いちゃったのなら仕方ないけど、沙雪には『巨乳で綺麗なお姉さん看護師』についてもらいたいと思ってね。病院じゃあ最高の看護師として有名なんだよ。だからホイホイしてたんだ』


『そう…』


『馬鹿すぎwww』

『巨乳で綺麗なお姉さんに看てもらいたいのはてめぇの願望やろうがwwwタコwww』

『違いないwww』

『夕霧さんも頭を押さえているやんけwww』


銀髪美女:『それはてめぇの好みじゃろうが!ワイが突発性ブラコン症候群で入院を続けようと思ったのはその憎き『巨乳で綺麗なお姉さん看護師』のせいじゃ!ちなみに結婚したぜ?ざまぁwww』


銀髪美女:『ちょっと今のなし』


『突発性ブラコン症候群ってなんだよwww』

『ひっでぇ名前www』

『間違ってはいなさそうだけどなwww』

『そんなんで十五年も入院してたらキレるわwww』

『それなwww医療費返せよってなる』

『新ちゃん、失恋してるやんけwww』


そこからは義妹ちゃんと新さん、そして、コメント欄にいる方々で盛り上がっていた。Sランク冒険者たちも意外と食い入るように見ていたので、中々、本題に進むことができなかった。


━━━


━━



「~ということです」


なんとか軌道修正できました。


エルフが私たちを支配しようとしていること、そして、新さんの力を十全に示した切り抜きをSランク冒険者に見せた。結果は上々、『巨乳で綺麗なお姉さんホイホイ』している人間だというイメージを完全に払しょくできたと思う。


いつの間にか銀色の風シルフ様も戻ってきていた。スマホの持ち込みは禁止だけれど、銀色の風シルフ様のことだから何か崇高な狙いがあるのだろう。すると、


「ふっ、何かと思えばフィクションかよ。俺たちの時間を返してほしいね」前髪フッ


「どういうことですか…?」


鼻にかけた王寺さんのモノいいに流石にムッとした。


「これは切り抜きだろう?それならいくらでも加工など簡単さ」


「ふっ、俺の叡智もそういっている」


「ああ、こいつから感じられる熱量はノコギリクワガタだ」


『聖なる剣』の皆さんがそんなことを言ってくる。後、ノコギリクワガタってなんですか?反応に困るのですが…


「この切り抜きは今回の会議のために私が編集したものです。どうしてもと言うのなら、配信の方を直接見ていただくという方法も」


「ふっ、子ネコちゃんのために時間を使うのはやぶさかではないが、それでも我々の時間は有限だ。そんなおっさんのことよりもエルフのことを考えるべきではないか?」前歯キラーン


「…まぁそうですね…」


一応王寺さんの言い分も通っている。新さんをSランク冒険者に刺そうという話はまた今度にしよう。すると、


「ふっ、それこそ時間の無駄だ。異世界の亜人共の対策など、私は既に持っている」


「なっ!?本当ですか!」


流石、銀色の風シルフ様ですぅ!そこの『精なる棒』とは格が違うのです!


「…一体どんな方法をお考えなのですか?」前歯キラーン


「ふっ、そんなの簡単だ」


そして、一拍溜めると


「エルフ、いや、亜人共の女を全員殺せ。そうすれば亜人共も絶滅する以外に道はあるまい」


「なっ!?」


とてつもなく残酷なことを仰られた。


━━━


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