クルーシャside

「痛~~!絶対に許さないんだから、あの馬鹿弟妹!」


壁に頭をぶつけた。今度会ったら、絶対に許さない!


「え、え~とクルーシャ。どうしたの?」


「え?新也…センパイ」


そこには布団に入り寝ようとしている新也、そして、なぜか夕霧がいた。


━━━


━━



「~ということなんですよぉ」


仕方がないので、私は真実を話すことにした。姉と兄であるセフィとアルフと喧嘩して、家を追い出されたことをしっかり話した。後はドローンを返しに来たといった。新也が感動の再会みたいな感じでドローン抱いていたから間違いではないようだ。


そして、布団を敷いてもらった。私、新也、夕霧の順番で寝ている。


『嘘しか言ってねぇじゃねぇかwww』

『ちゃんと本当のことを言いなさいなwww』

『話し方は媚媚スタイルか』

『普通に話した方がええで?』

『新ちゃんずりぃよ!代わってくれって!』


「二人と喧嘩ねぇ。一体どんなことで喧嘩したの?」


「ええ~と、将来についてですかねぇ」


『嘘付きは濁すのがうまいな』

『それな。嘘でもなければ本当でもない言葉を相手に信じさせる』

『ワイはこの配信で大いに学んだよ』

『俺たちに嘘は良くないよと啓蒙してくれてるもんな。良い教材やで』


「クルーシャも来年で30だもんね。色々考えなきゃいけない年頃か」


「……そうですねぇ」


『来年2901歳…』

『いい笑顔ですねぇwww血反吐吐いてそうwww』

『自分のついた嘘に追い込まれるパターンなwww』


女性に年齢の話をするなんて、なんてデリカシーのない男なんだろう。でも、好き。


「ついに、結婚か…」


「は?」


「え?」


『『『は?』』』


上からクルーシャ、夕霧、コメントの順番だ。


今、新也は何を言ったの?結婚?誰と?私と?と、とりあえず、確認しないといけないけど、言葉が繋がらない。


「ふふ、クルーシャのその顔、俺の勘が当たっていると言っているぞ?大方跡継ぎを作れって言われて追い出されたんだろ?」


「え、ええ、まぁ。そうですよぉ?」


あの鈍感の推理が当たってるなんて…!もしかして私の気持ちに気が付いているってこと?ということは今、この状況って新也から私に告白っていうシーンなんじゃ…


「そ、それでぇ。もし私が花嫁修業をしに来たっていったらどうするんですかぁ?」


きゃああ私言っちゃったぁ!セフィ、アルフ、さっきはごめんなさい。今度、最高の武器を作って謝りに行くからお姉ちゃんを許してね?


有頂天になっていたクルーシャだが、


「う~ん、それなら好きな人の家に行った方がいいよ?」


「は?」


『ですよね~www』

『知ってたwww』

『これぞ鈍感王』

『夕霧さんが反対側を見て口を押さえて笑ってるwww』

『よっぽど嬉しいんやろうなwww』


「で、でもぉ、いきなり好きな人の家に行くのって迷惑じゃないですかぁ?」


負けるわけにはいかない。特にそこで笑っている夕霧には。


「迷惑だよ。だけどね、恋愛っていうのは自分のエゴを押し通すことなんだよ」


『お前が恋愛観を語るんじゃねぇwww』

『猪突猛進ガールをナチュラルに躱してるやんwww』

『でも、新ちゃんの恋愛観はわりと気になる』

『確かに』


すると、興味深そうに見ていた夕霧が会話に入ってきた。


「…相手が超絶鈍感だから、強引に花嫁修業をしに来たのに、自分が好意を持たれていると気が付かずに、別の好きな相手がいると勘違いしている男に対してはどうすればいいのかしら?」


『攻めるねwww』

『これは気になるwww』

『新ちゃん、自分のことだって気が付くかな?』

『それは無理やろ』


「夕霧、お前…」


「そう…やっと気が付いたのね…」


な!?このクソ鬼!私を利用して、自分の話に誘導しやがったわ!しかも新也も何かに気が付いたようだし、どどどどどうしよう!?


「なんてやつだ!俺の大事な幼馴染の好意に気が付かないって大罪だぞ!?」


「そうね。それなら鏡を見てくれるかしら?」


良かった鈍感で…良かったのかしら…?


『夕霧さんすねてるwww』

『皮肉の威力よwww』

『ただ、夕霧さん若干喜んでるな』

『そりゃあそうよ。好きな相手に大事って言われたら嬉しいやろ?』

『こうやって新ちゃんの犠牲者が生まれるわけか』

『クルーシャ様も笑いを我慢してるがな』

『というか新ちゃんの寝室で何やってんねん。修学旅行じゃねぇか!』


夕霧と目が合う。夕霧、そして、おそらくだが義妹の沙雪は新也をずっと狙っているはずだ。ここにいない沙雪は置いておいて、今は目の前の敵を排除しなければならない。いや、出し抜けばいい。


「ちなみにぃ、センパイはぁ。好きな人とかっているんですかぁ?」


質問ミスった…もし好きな相手がいたら普通に死んじゃうわ。夕霧も反対側でこいつマジかよって表情してるし…


「いや、いないなぁ」


「「ほっ」」


『良かったねwww』

『一安心だ!』


良かったぁ。これで好きな人がいるなんて言われたら、出血死するところだった。で、でも私のことを好きって言ってもらいたかった気持ちもある…複雑ね…


「ちなみに好きなタイプはいるの?」


夕霧が質問を投げかけた。私に新也の好きなタイプの情報を知られるよりも自分を優先したわね。


「好きなタイプ…?」


「例えばぁ、年上と年下とのどっちが好きなのかなぁって」


「年上」


「「…」」


『もぉもぉwww!なんでこんなに的確にツボを射抜く答えを持ってくるねんwww』

『腹いてぇwwwクルーシャ様が固まってるwww』

『そりゃあそうやろwww今頃自分のカルマを呪ってるんちゃうんwww?』

『あ~あ、どうすんねんこれwww』

『夕霧さんはしょうがないとはいえ、クルーシャ様は…(笑)』


「で、でもそれはあくまでイメージよね…?」


「そうですよぉ、実際にぃ、年上だとぉ三十歳以上になってしまいますよぉ?」


『2900歳が何か言ってるwww』

『言うな。見ろ、唇の端っこを。血が出てるやろ?アレは覚悟の発露や』

『何を言っても地雷が爆発するからなwww』


年上好きだっていうのは朗報、いや、完全にやらかしだけど、それでもまだ好きなタイプは一つしか聞いていない。他にも色々聞き出さなきゃいけない。すると、


「そうだね~、まぁ実際には大人びた人が好きなのかもしれないな。だとすると、25歳くらいかな」


「「…」」


『だからぁwww』

『お前はぁ!お前はぁ本当に馬鹿野郎www』

『的確に間を突いてくるなぁwww』

『義妹ちゃん22歳、夕霧さん28歳、クルーシャ様29(2900)歳』

『もうこの子たちのことが嫌いなんやろ!?』


すると、新也ははっと気づいたかのように二人を見た。


「君らが気にしているのはあくまで自分の好きな人たちの話だろ?これは俺の意見だから気にしちゃダメだよ?」


『残念、お前のことだよwww』

『そろそろ牢屋にぶちこもうぜwww』


一発殴っていいかしら?いや、ダメ。今まで気づいてきたイメージが台無しになる…!というかここでこそ新也の好みを変えるチャンスよ!


「ねぇ、新也センパイ…一緒に寝てくれないですかぁ、夜が怖くて仕方ないんですぅ。毎日お兄ちゃんとお姉ちゃんと一緒に寝てるから、一人で寝るのが怖くて仕方ないんですぅ』


私は新也の布団に身体を寄せる。ドキドキするが、このくらいしないと同棲する意味がない。


「そ、それなら、私もよ。いつも父さんと一緒に寝てたの」


やっぱり夕霧も入ってくるわね。まぁ知ってたわ。だからこその対策を立てさせてもらったわ。


私の魔法は付与魔法。自分が持っている魔法やスキルを何かに付与することができる。ただ、私が直接魔法やスキルを発動することができない。絶対に武器やモノを経由しなければならない。


例えば『身体強化』を発動しようにもまずは武器に付与魔法で『身体強化』を付与してからじゃないと使えないといったようなものだ。私が山に張っている結界魔法もそうだ。起点に付与魔法で結界を付与したというものだ。新也の武器に関してもそうだ。


私が付与できる魔法やスキルの数は結構ある。あっちの世界では『魔導書』や『石碑』と呼ばれる魔法やスキルを新たに手にすることができるものがたくさんあった。長生きしていたせいでそれらをたくさん集めて回ったのだ。


そして、今、布団に『睡眠』を付与している。夕霧が布団に入ってきた瞬間に眠ってしまうほどのものだ。新也が寝ないのはなぜかって?知らないわよ。新聞紙ソードを武器だと勘違いしちゃう男に常識何か通用しないっての。


「なっ、二人とも、涙が出ちゃうほど怖がりだったっけ?」


「うん…怖いよぉセンパイ」


「私も泣いちゃいそう…」


『嘘付はよく泣くなぁwww』

『マジで新ちゃん、代われって!』

『それな。爆発しろ!』


さぁ布団に入れ、夕霧!そしたら、その後に私が新也…を…なんだこれ…?物凄く目が重い。というか睡魔が襲って来た。まさか私の付与が誤爆した?いや、そんなへまはしない。ということは…!?


犯人の顔を見ると、とても鬼らしい顔をしていた。これはやられた!夕霧の毒魔法だ!クソ、回復を布団に付与しても、間に合わな…い


そして、私は寝落ちした。


━━━


━━



ふふ、毒魔法がうまく決まったみたいね。これで新也と…!っ、何これ…眠すぎる…はっ!?まさかあの女が?


夕霧も新也の布団に入った瞬間に寝落ちしてしまった。


「「zzz」」


『二人とも何してんねんwww』

『勘だけどお互いに自爆したな』

『うん。大方何か睡眠薬みたいなものを仕込んでおったんだと思うわ』

『で、新ちゃん。美女と美少女が二人いるんだが、どうするんや?』


新也は困っていた。布団に二人が入った瞬間に寝てしまったことに。


「どうしようか…っていうか二人とも夜が怖いんじゃなかったのかな?」


いや、そうじゃない。二人は互いの弱点を補いあったんだ。ここまで仲良く手を繋いで寝ているってことはそういうことだろう。となれば俺はお邪魔虫だ。二人には好きな人がいるらしいし、俺が一緒に寝たってなったら後で面倒なことになる。別の部屋で寝よう。


『流石紳士。こういうところは尊敬しとるで』

『ふむ。安易に手を出さないところはいいところや』

『女にとっては絶望ものやけどな』

『それな。手を出してもらえないくらい魅力がないと勘違いしてまうからな』

『めんどくせぇ…』

『とりあえず寝るわ。今日はもう面白いことはないやろ』

『それな。俺も落ちる』

『バイバ~イ』


━━━

次回、Sランク会議の議題に盗撮配信が出てきま~す。ただ、その前にドМ様の華麗なる回想をやろうかと


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