第8話

ごめん、初日からデータを吹き飛ばしてもうた…明日から二話ずついきます…

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異世界から戻ると、時刻は四時くらいだった。結構長い間あっちにいたと思ったけど、そんなんでもなかった。今、俺は全裸…ではない。流石にちょっと羞恥心があったので、夕霧にさっき使った出涸らし治癒草を股間に付けている。


というよりもそれ以外の服をばっちゃんたちが許してくれなかった。


『リアルターザンやな』

『それな。しっかり服も着てるし、何も問題はない』

『夕霧さんがさっきからちらちら見てるなwww』

『新ちゃん、風呂の時も思ったけど、めっちゃムキムキや。ええ身体や』

『義妹ちゃん、どう?元気か?』


銀髪美女:『全くばっちゃんたちには困ったもんやで(笑)?兄さんが騙されやすいからってとんでもない嘘をつきすぎやぁって(笑)まぁみんなにはお世話になったから許してやるけどさ(笑)』


『ご満悦www』

『『www』が(笑)になってるな』

『よっぽど嬉しかったんやな』

『今、何してんの?』


銀髪美女:『せ~っかくの機会やから、『兄さんのムチムチエロボディ』っていう写真集を作ろうと思ってるんや。今は素材を集めている最中や』


『素材=新ちゃんの裸体を集めている最中っちゅうわけか』

『ええやん。頑張って』


金剛姫:『私、明日から仕事があるので退出させていただきます。とても有意義な時間でした』


『とんでもない。こんな盗撮配信に金剛姫様が来てくださるなんて思いもしませんでした!』

『また遊びに来てください!どうせ僕らは暇なんで!』


銀髪美女:『また明日の定例会議でな~』


『もうツッコまないぞ?』

『それより、場面が変わったぞ。アルフさんが空間魔法で移動したっぽいで』


「着いたぞ…」


アルフさんがあの子のいる山まで空間魔法を使ってくれた。セフィさんもあの子に挨拶がしたいということで付いてきている。夕霧も同様だ。


「夕霧はあの子に会うのはどれくらいぶりなの?」


「半年ぶりくらいかしら。あの人、山から中々出てこないじゃない」


「そうねぇ。熱が入ると、すぐに引き籠っちゃうのはあの子の悪癖よねぇ。ねぇ、アルフ?」


「………ああ」


アルフさんが凄い顔をしている。というか複雑な顔をして、セフィさんを見ていた。俺が何か聞こうとすると、前を向いてしまった。まるで、何も聞くなと言っているようだった。その後は特に何もなく山を登っていった。千メートルくらい登ったところにあの子はいる。


『なんで空間魔法を使わないねんwww』

『それなwww』


銀髪美女:『使わないんじゃなくて、使えないんだよ。この山にいるやつが『結界魔法』を使っていてな。アル爺の空間魔法を弾いちまうんや』


『ほえええ。それでわざわざ徒歩なんやな』

『一つ一つの行動に意味があるんやな』

『ちなみにさっきから出てくるあの子ってどんな子なの?そもそも知り合い?後、女?』


銀髪美女:『もちろんや。ワイが知っている中でも最高に面の皮が厚いやつやな』


『面の皮が厚い?何それめっちゃ気になる』

『義妹ちゃんがそういうってことはヤバイやつなんやろうな』

『ってかまとまな奴が一人もいないやろwww』

『それなwww』


山を淡々と登っていくと、木々の大きさが小さくなり、高山性の植物が増えてきた。そして、山がだんだんとハゲ始める。高所は空気が薄いから普通のことだ。そして、少し歩くと、洞窟のような穴が見えてきた。今回の目的地だ。


洞窟の中に入ると、扉がある。アルフさんがコンコンとノックをすると返事がない。


「クルーシャ」


「クーちゃん~開けて~」


返事がない…すると、セフィさんとアルフさんが俺を見てきた。俺にも声をかけろとのことらしい。


「クルーシャ~、俺だよ~」


ドカ!、ボコ!、『ぎゃああああああ!』。バゴン!、ビリビリ!


『悲鳴が聞こえたんやが、一体何をやっとるんや?』

『想像もつかん』

『童貞共は阿呆やなぁ。こんなの好きな男が突然来たから、汚い部屋を掃除しているだけやで?』

『いや、それでも爆音はおかしくね?』


銀髪美女:『女なら爆発物の一つや二つ持ってるもんやで?』


『何それ怖い』


五分くらいしただろうか。ようやく音が静かになった。すると、扉がギイと鳴って中から人が来た。


「あっれれぇ、新也センパイ・・・・じゃないですかぁ?ってなにしてんのよ!?」


「いや、一昨日会ったばかりじゃん…」


一瞬猫が出すような甘ったるい声が聞こえたが、すぐに低く鋭いツッコミがきた。


「そっちじゃないわよ!それより、一体なんのつもりよ!…もしかして、そのつもりなの…?」


下からのぞき込むように俺を見てくるクルーシャだが、俺は何を言われているか分からない。


「全裸なのはセフィさんに言われたからだよ。向こうの世界のエルフの正装なんだろ?」


「そんなのないわよ!?い、いえ違うわ。コホン、似合ってるますよぉ。それとぉ、お姉ちゃん、お兄ちゃん。ありがとぉう。新也先輩にぃ、正装を教えてくれてぇ」


「気にしないでクーちゃん。お姉ちゃんとして、当然のことだけよ」


「…………ああ、兄として当然のことをしたまでだ」


『驚いているのが素なのは間違いない。下手なぶりっ子やなwww』

『途中まで本音が出てるけど、裸のメリットが勝って、嘘にノることに決めたな、この子』

『アカン、ワイが一番嫌いなタイプ』

『分かる。好きな男とそれ以外で態度を変えるやつや…同性は敵だと思うわ』

『アルフさん、なんか酷い顔してるぞ?何かあったんか?』


「気色悪…(ボソ」


『夕霧さん、本音が出とるwww』

『舌打ちしとるやんwww』


もちろん新也の見えないところでだ。


部屋の中に案内されると、液体などをいれておくビーカー等を除いてほとんどの物が木製で作られていた。ツタなどをふんだんに使っているそのインテリアからは異世界の家だという印象を受けられる。


クルーシャ、俺、夕霧の順番で座り、反対側にセフィさんとアルフさんが座っている。緑茶を出してもらっているのだが、これがうまいのなんのって。品種改良をして、味の研究にまで努めているらしい。


「この子はクルーシャ。俺の一つ下の幼馴染。夕霧にとっては一個上のお姉さんだね。モノづくりに長けていてね、異空間箱アイテムボックスを作ったり、鍛冶師でもあるから、武器を作ったりすることもできるんだ」


「新也センパイ、それはなんですかぁ?」


「これはお金を生み出す機械なんだ。沙雪からの贈り物だし、俺にとっては弟みたいなもんなんだ」


さらっとドローンが弟に格上げされていた。


「まぁ、いいですけどぉ~。私たちは特別なぁ関係ですしぃ」


きゃぴっと音がしそうなほど甘ったるい声だ。まぁ許可が下りたからよかったよ。ただ、反対側からビキッという音がした。


「ありがとう。そんで、クルーシャはエルフ種の仲でも末の妹なんだ」


『なるほど。エルフ年齢でみたら29歳は若いわな』

『いや、29歳であのキャラは痛いよ?』

『顔が超絶美人だから許されるのはマジでうぜぇわ』

『嫉妬乙~』

『普通に死ぬほど可愛いけどな。新ちゃん爆発しろ』


クルーシャの顔はとても整っている。青色の瞳と美しく長い耳。身長は150cmあるかないかどらいなので若干小さい。黄金を思わせる髪を腰くらいまで伸ばしていて、耳には月のイヤリングをしている。そして、猫を思わせる人懐っこい性格をしている(新也にだけ)。


俺のことはセンパイと呼んでいる。エルフにとって人間の年上というのは貴重らしいから、特別感を込めたようだ。


さて、そろそろ始めようか。俺は異空間箱アイテムボックスを取り出して、中から草薙の剣を取り出した。


「ごめん、クルーシャ。草薙の剣を折っちゃったんだ。後、アルフさんからもらった棒もだ。また新しい武器を作ってくれない?」


「ええ?先輩、また私の愛を折ったんですかぁ?いい加減にしてくれませんかぁ?」


「おっしゃる通りです…」


「大体ですねぇ、dあいskいなnおにどusいてきづiTえくrEないnお━━━」


ここから長い説教が始まる。俺がいかにダメなのかを滔々と語られるので、自信を無くしてしまう。ただ、俺はじっと心に刻む。クルーシャにとって作った武器は娘みたいなものだ。それを毎度壊してしまうのだから、俺は酷いことをしてるのだ。ただ、今日は俺の隣で身体に触れながら、耳に直接説教だ。とても甘ったるい。


そして、反対側では夕霧がいつもよりも近い。肌が触れ…あ、俺、全裸だったわ。


銀髪美女:『はぁ、これだから下品なビッチ共は…ワイみたいに淑女でいることはできんのかねぇ』


『しゅくじょ?』

『おかあさぁん?とうさつしてるひとがなにかいってるよぉ?』

『それにしても羨ましい光景やな』

『新ちゃんハーレム完成してるやんけ』

『草薙の剣=新聞紙ソードがそんなに大事なのか…?』

『というかこいつ義妹ちゃんと夕霧さんと同類やろ』


銀髪美女:『心外や。ワイは世界最高の美女やで?』


『はいはい』

『世界最高(に頭が狂ってる)美女な』


直接触れ合いながら受ける説教だからいつもより耳に残った。


「仕方ありませんねぇ。まだまだ言いたいことはたくさんありますが、これくらいで許してあげますよぉ。ざ~こ、ざ~こwww」


『うぜぇwwwメスガキかよwww』

『ワイ、生理的に無理やわ』

『はいはい。可愛い女の子に嫉妬してるんだねぇwww』

『はっ、ちげぇし。普通にキモいって思ってるだけだから。これだから童貞は…』

『死ね』

『落ち着けお前ら』


男女で好悪の差が激しい。クルーシャを巡って少し炎上していた。


「まぁでもぉ、私は寛容ですからぁ、ダメダメな先輩にはぁ特別に武器を作ってあげますよぉ」


「すまねぇ…いつも、ありがとう」


「はいはぁい」


そういうや否や、別の部屋に移動した。時間にして一分くらい。そして、すぐにばたんとドアを開けて、戻ってきた。


『はええなwww』

『さては既に準備してあったなwww?』


「今回は双剣にしましたぁ。名前は干将/莫邪かんしょう/ばくやですよぉ』


「ええ!マジかぁ!」


『ええええ!めっちゃ名刀やんけ!?』

『いいなぁ新ちゃん!』

『双剣無双楽しみにしとるで?』

『新ちゃんも嬉しそうやな。俺も嬉しいわ』

『というか新ちゃん、双剣もいけるのか』


双剣、両利きであることが条件とされるがそれはそれ。両手に剣を持つなどカッコいいことこの上ない。夕霧とセフィさんが生温かい視線を送ってくるが、それでもロマンなのだ。


「今回もスキルを付与しておきましたぁ。しかも出血大サービスで~す!なんと今回は二つほどスキルを付与しておきましたぁ」


「えええ!」


一応驚いたフリをする。クルーシャの話はほとんど入ってこない。正直、スキルなんてどうでもいいのだ。早く、双剣がほしい。


「はい、どうぞぉ」


「わ~い…え?」


渡されたのは二つの木刀だった。ただ、大きさがめっちゃ小さい。大体十五センチほどだった。


『割箸じゃねぇかwww』

『確かに双剣で二刀一対やけど、これはないwww』

『新ちゃん、戸惑ってるやんけwww』


俺はとりあえずもらった双剣の触り心地を確かめる。中々いい手触りだ。後は振り心地だ。席を立ってみる。そんでそれっぽい舞をしてみよう。イメージは蝶。ぶんぶん振って武器の感じを確かめた。十五秒ほど舞うとパチパチと拍手をもらった。そして、


「軽いな…」


『ったりめぇだwwwシリアスな顔で何を言ってるんやwww』

『一体何をやっとんねんこのおっさんwww』

『アカン、天然すぎて腹がねじ切れそうwww』

『裸のおっさんが股間に葉っぱつけて、超絶絶技を見せつけてくるんやがwww』

『もうやめてええええwww』


とても振りやすいし、重量もほとんどない。ただ、


「クルーシャ、もう少し長さが欲しいかな。これじゃあ殴った方が早いよ?」


『違うねんwww割箸だってことに文句をいえwww』

『ちゃんと性能にマジレスすんなwww飯を食うもんだぞwww?』


すると、アルフさんが難しい顔をして話に入ってきた。


「クルーシャね「なぁに、アルフお兄ちゃ~ん?」…もう少ししっかりした武器を与えたらどうだ?アレではすぐに壊れてしまうぞ?草薙の剣にしてもそうだがあれでは…」


『おお!助け船!ナイスフォローやな』

『言ったれお兄ちゃん!』


「もぉ!私が手を抜いたと思っているのぉ?」


「い、いや、そういうわけじゃ…」


「そうだよねぇ!信じてくれてありがとう、お兄ちゃん♡」


アルフさんの正論にプンプンと頬を膨れませて、腕をぶんぶん振るクルーシャ。ただ、心なしかアルフさんの体調が悪そうだ。山登りが辛かったのだろうか?


「私は毎回本気で武器と向き合っているんだよぉ?壊れちゃうのはセンパイがざ~こだからだよぉ?ね?センパイ?」


「ああ、その通りだよ。全部俺が悪いんだ」


「それならいいが…」


アルフさんが庇ってくれるのはとても嬉しいが、俺が未熟だからいけないのだ。クルーシャにも俺が強くなれば武器の欠損はなくなると言われているのだ。ただ、俺はその逆だった。


「年々武器の欠損が酷くなるんだよなぁ。三日に一回も新しい武器を作ってもらわなきゃいけないって、どんどん弱くなってるのかなぁ」


「…さぁ?」


『おいwww何かやってるなこの女www』

『とってもいい笑顔だなwww』

『隣の夕霧さんの顔よwww』

『なぁアルフさん大丈夫か?顔が真っ青なんだが…』

『セフィさんもだよ。さっきからため息が止まらない』


そこから軽く二時間くらい話した後、俺と夕霧は退出した。帰りはアルフさんが送ってくれた。全裸で山下りなんて怖くてやりたくなかったから、本当に良かったよ。


家に帰ると、夕霧がご飯を作ってくれると言ってくれた。


夕飯を食べるにはいい時間だったのでとてもありがたい。そういえば夕霧ってこれからどうするんだ?居候させてほしいって言ったけど、マジでおれの家で花嫁修業をするのだろうか?実地訓練をした方がいいのに…


「新也。服は…」


「クルーシャとも離れたし、いいでしょ?」


「そう…」


家に帰っていの一番にしたことは服を着ることだった。ただ、夕霧が不満そうにしているのはなぜなんだ?


「…実は鬼族にも正装は全裸っていうしきたりがあってね」


「はは、それは嘘だって分かるよ」


「ちっ」


ん?今夕霧から舌打ちが聞こえたような…気のせいか。ご飯を作っているのでこっちを見ることがない。夕霧がご飯を作ってくれていると俺も暇だ。ポストでも見に行こうかなぁと思っていると、気が付いた。


「あれ?ドローン君はどこに行ったんだ?」


ドローンが消えた。


━━━


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