第13話 早く寝たら早く起きる
翌朝、ライサが慌ててあたしの部屋に駆け込んできた。
「オ、オ、オリンッ!」
「おや、ずいぶんと早いねぇ」
「早いねぇ、じゃないわよ。何をのんきに……って、身支度はできてるのね」
あたしは基本的に早寝早起きだ。「姐さんは夜働きの後でも、早起きなのはおかしい」と、本業(駕籠かき)に遅刻して大目玉をくらった巳之吉っつぁんが、たんこぶを押さえながら、そう言っていた。
「仕事にはまだ早い時間だけど、何か用かい?」
「あ! そ、そうだった。隊長と副隊長がお呼びなんだよ」
「またかい」とうんざりしながらも、昨夜は話が途中だったので、また呼ばれることは分かっていた。
――あたしも暇じゃないんだから、さくさく話をしてもらいたいもんだねぇ。
「早く、早く」
追い立てるライサとともに、あたしはまた昨日と同じ隊長の部屋へ向かった。
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「ひっ」
ライサが声を上げたのは、隊長と副隊長の不機嫌そうな顔を見たからか。それともふたりの目の下にくっきりと存在する
「それで、何の話だったっけね」
「何のじゃないよね! 話の途中でいなくなるとか、一体どうやっていなくなったのかも聞かせてほしいところだけど」
挨拶もなしで、続きとばかりに話を始めたあたしに、副隊長は怖い顔をしているし、隊長はあからさまにイラっとしている。
「え? 普通にそこの扉から出て行ったけど」
「……影もふたりいたのに察知できてなかったけどね」
「ん?」
「何でもないよっ!」
がっ、と叫ばれても、あたしはどうということはないが、ライサが大きな身体を震わすほど驚いているようなので、止めてあげてほしいと思う。
それよりまた話が進んでいないように感じるのだが、隊長と副隊長というのはそんなに暇なのだろうか。
「あー、もういいよっ! とにかく、君が会いたがっていた上の人間に会わせる」
「え?」
「くれぐれもあの方には無礼のないように。この前やってた上品な感じでね」
きょとんとしてしまったのは、今となっては、あたしには上の人に会う必要がないからだ。
――え? だってあたしを裁くのはその人ではないんだろう? あたしは今、働いて六文銭を稼いでいるところだし……?
「あたし、別にその人に会わなくてもいいや」
「そうじゃない!」と、揃って声を大にして怒られた。隊長に副隊長とライサ、そして天井のほうからも声が聞こえた気がする。どうやら天井に忍びの者でもいるらしい。
とりあえず、食堂の仕込み開始前までに終わるといいな、とあたしは思った。
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