第3話 いちごの約束

数週間が過ぎ、賢治は「ベリーチャーン7」での経験を積み重ねていった。松原さんが戻り、通常の業務が再開されたが、賢治は以前よりも多くの仕事を任されるようになっていた。彼の自信と技術は日々成長し、店のスタッフや常連客からも一目置かれる存在へと変わっていった。


春の訪れとともに、町では毎年恒例の「春祭り」が開催されることになり、松原さんは特別なショートケーキを祭りで提供する計画を立てた。賢治にとって、これが大きな試金石となる。松原さんは、賢治が祭り用のショートケーキの主要な部分を任せると決めたのだ。


「君のいちごが、祭りをもっと特別なものにしてくれると信じているよ」と松原さんは言う。賢治はその言葉に応えるべく、祭りの日が近づくにつれ、準備に熱心に取り組む。彼は特別ないちごを選び、一つ一つ丁寧にケーキに配置していく。


祭りの日、多くの町民が「ベリーチャーン7」のブースを訪れる。賢治が手掛けたショートケーキは、見た目の美しさと味の素晴らしさで、訪れた人々に笑顔をもたらす。子供たちは特に、彼のいちごが乗ったケーキを指さし、「また食べたい!」と喜びを表現する。


その日の終わりに、賢治はひときわ大きな満足感を感じる。自分の手がけたショートケーキが、多くの人々の特別な日をさらに彩ることができたのだ。松原さんも賢治の成長を誇らしげに見守り、「よくやった」と彼を褒め称える。


夜が更けていく中、賢治は星空を見上げながら、これからも松原さんのような素晴らしい職人を目指し、いつかは自分が教える側になることを心に誓う。そして、彼にとっての「いちごの約束」—いつも心を込めて、最高のものを提供するという決意を新たにする。


この物語の終わりは、賢治が一つの専門分野での自己確立と成長を達成した瞬間であり、彼のこれからの旅の始まりを告げるものでもある。

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