肝心の元凶さえいなくなればあとは自由なのですが、果たして報われた事による結末はあるのでしょうか

「ギルドが壊滅した?」

 その噂がダン・シュートの耳に入ったのは、ギルがギルドを追放されてから2週間後だった。


「はい、何者かによってギルドメンバー全員が殺されたみたいです」

 悔しそうに下唇を小さく噛む女剣士のナナ。

「僕がいない間に何が?」


「俺が殺した」

 ダンとナナの前に現れたのは血塗れの男。

 そしてその男の事を彼らはよく知っていた。

「ギル・スラッシュ……」


 鋭い視線でギルを睨め付けるダン。


「良いんだ……どうせ俺はただの剣術バカだ。お前とは違っていくらでも代わりはいる存在なんだよ」


 そう言ってギルは手元の剣を後方腰元に構える。


「だから、ギルドを潰した。皆殺しだ」 

「ギル・スラッシュッッッッ!!!!」


 懐から黒い物体を取り出すダン。

 それが彼が最強である理由。


「それが、お前の強さの秘訣か」

 だが、ギル・スラッシュには無意味だった。

 ギルには彼の手に持っているものが何なのか、全く分からない。

 だがであるダンは知らない。


 ギル・スラッシュは地獄怪獣リンフォン や全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れをその剣で薙ぎ倒してきた稀代の傑物。


 いくらダン・シュートがその手に持つ【拳銃】を使おうとも、ギル・スラッシュには勝てやしない。


「スゥゥゥゥゥ………」

 ギルの足元に展開される領域。

 

「簡易結界……?」

 剣を後ろに構える持ち方、簡易結界による領域の展開。

 ダンは彼の行動にはっきりと既視感を持っていた。

「まるで居合だな」


 居合。その技術を異世界の人間であるギル・スラッシュがどうして習得できたのか。


 ただ一度だけ、他ならない。


 ダンは何も言わずに銃口をギルに向ける。

 居合とは待ちの構え。

 即ち、カウンター。


 だがそれも剣の間合いでなければ勝てない。

 ダンの手には拳銃。

 それも彼が立っているのは簡易結界の範囲外。


 ダンの銃が火を噴く。

 刹那に閃く一太刀。

 弾丸がギルの簡易結界に到達すると同時に剣先が弾丸を弾く。


 「キャアッ!!!!」

 悲鳴が上がったのはダンの横にいたナナ。

 彼女の腕から溢れるばかりの血が流れている。


 弾を跳ね返し、ダンの隣のナナに当てた。

 

 それの意味することは3秒後に起きる。

 ナナの肘から先が爆ぜた。

「ぐぅっ……!!」

「ナナッ!!!!」


「やっぱり、その飛び道具に何か仕込んでいたな……」

 その通り、ダンの拳銃には魔弾と呼ばれる魔術付与が行われている。


 だが、弾丸を弾く剣技を持つ彼にはそれも無意味に等しい。


「終わりだ。仲良く消えてくれ」

 

 再び構えるギルの足元の簡易結界が拡張される。

 次は仕留めると言わんばかりの威圧がダンを襲う。


「さよなら」


 魔力を剣に込めた最大の一撃が振われた。




 



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