追放されたのでギルド潰してみた

萎びたポテト

追放は別に悪い事ではありませんが、そりゃ報復される可能性があるんだからコレは自業自得でしょう

「ギル、お前をこのギルドから追放する」


 目の前に立つ筋骨隆々のギルドマスター、メッサー・クォロサレッドが告げた言葉はこの俺ギル・スラッシュを人生のドン底に突き落とすものだった。


「そんな!!どういう事ですかマスター!!」

「お前は用済み。だからここを追放するという訳だ」

「でも、この“ロールストロー”を支えてきたのは他でもない俺なんですよ!!」

「それは昔の話だ。今は新しく入ってきたシュートの方が強いだろう」


 ダン・シュート。

 ギルドに新しく入ってきた新参者だが、最近ギルドでの依頼の達成率が俺を超えただ。

 異邦の人間らしくどうも思考が世間離れしているという。


「だからってどうして俺を追放するんですか!?!?」

「だって、お前の特技剣術だけだろ」


 マスターのその言葉は、さらに俺を絶望させた。

「確かにお前は依頼をしっかりこなしている。だが、お前は魔術のリソースを全て剣技に関する事にしか使っていない。剣術しか取り柄のないお前より、お前と同じぐらいの魔術師に変えた方がギルドの評価も上がる」


「俺より……どこの馬の骨かも分からない人間にした方が評価が上がるんですか……」

「前衛としても動ける魔術師というのは強いからな。だから大人しく——」


 しかし、これ以上マスターの言葉が続くことはなかった。


 

 鮮血が弧を描いて壁に散った。


「なっ……!?お前……!!」

「残念ですよ、マスター。俺はあなたに憧れていたのに……結局は周りの評価ばかりを気にしている」


 喉元からとめどなく溢れる血を抑えるメッサー。

「分かって……いるのか……!!これは……ギルドに対する……は——」


 大きく開いた口の中に剣を突き刺す。

 その言葉は予測出来ている。

 “反逆”。それがどれほど重大な事かも分かっている。

 だからこそ、やってしまったからには最後までとことんやりきる。


「マスター、どうしたんで——!?」

 部屋の扉を開けていたのはギルドの受付嬢。


「あ、ああ……」


 みんなに可愛がられていた受付嬢。

 いつもクエストに出るみんなを応援していた受付嬢。


 それでも、この瞬間を見られたからには殺さなければならない。


 だから俺は、最大にこのギルドを去るために血塗れの顔で笑う。


「ごめんね」


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