2話

検査という名の拷問を何とか切り抜けた俺は現在翼とデート中である。


デートと言っても携帯を買いに行くだけだが。


「連理は連絡取れないととんでもない所に行ってそうなのが怖いです」


人聞きの悪い。


一応下層区域には行ったがいちいち言うほどの事でもないだろう。いった所でもう既に済んだ事だ。


「毎晩3時に電話かけてやるよ」


「なんでそんなことをするんですか....」


「嫌がらせに決まってんだろ」


俺がそう言うと翼は心底呆れたような顔をする。


「連理に携帯は必要ないのかもしれませんね」


「いやいや、俺にこそ相応しいだろうが」


「どこからそんな自信が出てくるんですか...」


「町ゆく美女を片っ端からナンパしにいくんだろ?」


「はぁ…やはりいりませんね」


ほんの軽いジョークだ、ジョーク。


携帯があれば便利は便利だが、そこまで欲しいという訳では無い。


この外出が携帯を目的としている以上言い訳に聞こえるかも知れないが、携帯は無くたって生活できるしな。


「冗談だ冗談。そんな事よりメイドとどこで合流するんだけっか?」


検査前にメイド達とは一旦別れたため、合流するとかなんとか言ってた気がする。


「もう少しした処のカフェで待ってるから急ぎますよ」


そこで昼食を済ますという事だろう。腹が減ってるため、足が速くなる。


「何してんだ翼。早くしろ」


「検査をごねてたのはあなたですけど...。」


そんなやり取りをしながら俺たちはカフェへと向かった。


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「おっそー-い!!連理くん絶対要らないことしてたでしょ!」


開口一番失礼な事を言うチビである。


「なんだチビ。お子様ランチでも食べてたか?」


「チビじゃないし!お子様ランチも頼まないよ!」


ギャーギャーと喚いているが無視しよう。俺は腹が減ったんだ。


「飯だ飯!俺は腹が減ったぞ諸君!」


「メニューはこれです。翼様はいつもので大丈夫ですか?」


「それでお願い」


いつもの?何やら気になるな。


「おれもいつものにするわ」


「翼様と同じものということですね?」


「ああ。頼む」


いいとこのお嬢様がいつも頼む料理は美味しいだろうな。実に楽しみである。


「連理は検査どうだったの?」


舞が聞いてくる。


因みに大テーブルに8人で囲んでいるが、隣は舞と翼である。


「地獄だったぜ?聞くか?あの出来事を……」


「聞かせて」


「騙されないでね舞….」


騙すとは人聞きの悪い。


「これは一人の好青年と、サイコパスの女医の話なんだが」


「いきなり不穏だね…。絶対嘘だよ~」


「ええい!外野は口を挟むでない!」


なんて馬鹿な事をしている間に料理が到着した。


「なんだこれは」


届いた料理は今までに見たことのない類の料理であった。


先ずは色が可笑しい。深紅に染まっているのである。唐辛子をふんだんに使っているのだろう


見た目から辛いであることが見て取れる。


「タンタンメンです。ここのタンタンメンは人気なんですよ?」


意外だ。実に意外。翼は辛い物が好きなのか?


「大事なのは味だからな。見た目で決めるべきじゃないよな」


俺は自分にそう言い聞かせ、タンタンメンに手を伸ばす。


「「「「「「いただきます!」」」」」」


ズルズルっ!


「……….。」


…………………。


「ぶっふぉ!!!」


俺は涙目になりながら咽かえった。


「辛すぎるわ!限度ってもんがあるだろ!」


これは人間の食い物ではない!


「連理くん辛いの食べれないんだ~可愛い~!」


周りから茶化されるが、これは人の食べ物ではない。


「なんでお前らはそんな大丈夫そうなんだよ!」


「私たちのは唐辛子の量が通常量ですから」


綾香が言う。


「俺が食べてるのとお前らが食べてるものは違うのか?」


「そうよ。あんたのは唐辛子が10倍の奴」


「翼様と同じものと言われましたので(キリっ)」


「ばっかやろう!なんで翼は食えるんだよ!」


「私昔から辛いのが好きなんですよ」


好きで食べれる辛さなんだろうか。


「だ、だれか交換しないか?」


俺の唯一の楽しみの食事が...。


「え~辛いの苦手なんだもーん」


優菜は辛いのが苦手らしい。


「舞はどうだ?辛いの食えるだろ???」


「食べれない。連理、諦めて」


無慈悲な宣告をされる。


「騙したな翼ァ!」


「勝手に頼んだのは連理です」


にやりと勝ち誇った顔をする翼。


「罠だ!これは罠だ!」


「しょうがないですね~私が交換してあげます」


そう申し出てくれた女神は美穂だった。


「マジ?これ食えるん??」


交換は割と冗談だったが、交換してくれるならしてもらおう。


「気分でたまに食べてるので大丈夫だよ~」


「それは助かるぜ。全く、翼は反省しろよな。迷惑を被るのは他人だぜ?」


「あなたが言いますか、あなたが」


心底うんざりした様子だが、危機は脱出できたので良しとしよう。


辛くない方もしっかり辛かったが、食べれない程では無かった。


平気な顔で食べる此奴らはもしかしたら違う惑星の生物なんじゃないかと錯覚する出来事だった。

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