17話
午後は特にすることも無いため適当にトレーニングでもすることにした。
午後は体育をしているクラスが多いのかグラウンドも体育館も空いていない。
そのため適当な場所でトレーニングするしかない。
「今日は走ったし、筋トレぐらいにしとくか」
筋トレをするために前に行った倉庫に向かう。
流石に倉庫には誰も居ないだろう。
うん?倉庫から気配がする。一人だ。
「今日はついてないな」
諦めて引き返そうとする。が、気配がこちらに近づいてくる。
数秒後に扉が開かれたため、ちょうど倉庫の前に居た俺とばったりと出くわす形になった。
「あっ!?あなたは!」
こいつはこの前倉庫で虐められてたやつか。
なんでまたこんな所に居るんだ。
「お前は…。またなんかされたのか?」
「先日は本当にありがとうございました!今日はその時の落とし物を取りに来ていたのです」
なるほど。
「あれ以降は特に何もされてないのか?」
「はい!本当にありがとうございます!」
そうか。じゃあこれ以上この倉庫には来ないだろう。
「授業は大丈夫なのか?今は授業中だろ」
「今の時間は体育なんですけど、今日は少し体調が悪いので休ませていただいてました!」
見る限り元気そうなんだが……。まあ事情があるんだろう。
「あのあの、名前を教えて頂けないでしょうか!」
「名前?」
「ですです」
目を輝かせながら聞いてくる。
「俺の名前はゴン・キーブリって言うんだ」
「え?本当でしょうか……」
「なんだ俺のいう事が信じられないのか?」
まったく名前を聞いておきながら信じないなんてとんだ奴だ。
「いえ......そうではないですけど…」
何やら腑に落ちない顔をしている。
「気軽にゴキブリとでも呼んでくれ」
「絶対嘘ですよね!?」
「まあ嘘だな」
「揶揄わないでください!」
顔を真っ赤にしながらぷんぷんと怒る。
「連理ってんだ。お前は?」
そういえば此奴の名前を俺は知らない。
「あ!名乗るのを忘れてました!私は麗って言います。烏丸麗です」
意外と抜けてそうだ。こういう奴は揶揄い甲斐がありそうだ。
「あのあの、連理さんはここの学生じゃないって言ってましたけど、誰かの護衛とかされてるんです?」
「まあそうだな。そんな大層なもんじゃないけどな」
「あの.....誰の護衛をしているのかって教えてもらえたり....?」
まあ別に隠している訳では無い。教えても問題は無いだろう。
「高等部のカマ・ドーマってやつなんだけど」
おっと。思っても無いことが口から出てしまった。
「……あの、嘘ですよね?」
「すまんすまん。翼って知ってるか?そいつ」
「え!?あの飛鳥先輩……」
なにやら絶望した顔をしている。
「あのあの、お礼なんですけどなにか欲しい物とかってありますか?」
またお礼の話か。別になんも求めちゃいないのにな。
「欲しい物ねぇ、なんもねぇな」
「そうですか......。では他に何かしてほしい事とかでも....」
何が何でもお礼はしたいらしい。
「考えておくぜ。今日は体調悪いんだろ?」
もう会うことは無いかも知れないがな。
「でも.....。あの、今度の土曜日か日曜日お時間ありますか?」
時間はあるが、下層区域に行ってみたい気持ちもある。どうしたものかな。
「時間はあるが…夜でも大丈夫か?昼からしたいことがあるんだ」
夜までに帰ってこれば大丈夫だろう。
「はい!では土曜日の18時にショッピングモールの入り口で待ってます!」
約束が出来たからか、上機嫌で倉庫から出ていった。
「今週はやることが多くなっちまったな」
今週はなかなか忙しくなりそうだな。
ー-------------------------------------
「連理さ~ん!ご飯ですよ~!」
もうそんな時間なのか。
この声は…珍しいな美穂だ。
「わかった。ちょっと待っててくれ」
今ちょうど読んでいる本が良い所だったので一段落したらいく事にしよう。
………ちょっと長引いたようだ。美穂が来てから30分は経っているだろう。
「怒られそうだな…」
飯は食えるだろうか。食べれなくても文句を言える立場ではないが。
「すまん遅くなった」
食堂に入るなり謝罪を入れる。先ずは謝罪だ。そうすれば飯は食えるかもしれない。
「何してたのよ。ご飯は温めなおすから少し待ってて」
咲良が聞いてくる。飯は食えるらしい。ありがたい
「本を読んでたんだが、良い所だったんだよ」
「へぇ、あなたって本読むんだ」
意外そうに咲良が言ってくる。まあ今は必要があって読んでいるのだが。
そう言いながら咲良は厨房に入っていった。
「連理くん学園どう?」
晴香が聞いてくる。
学園に通いだしてから晴香たちとあまり喋ることが無くなったな...と思う。
「結構退屈だぜ?筋トレか図書館に籠るかって感じだ」
「そうなんだ!連理くんはトレーニング好きだもんね~!」
晴香にはトレーニングをしている所を何度か見られている。
「好きって言うか、訛ってんだよな体が。勘を取り戻すためにトレーニングしてるってわけだな」
「今でも凄い力持ちだけどね!」
「それほどでもあるな!」
「連理くんって自信家というか、ナルシストだよね~」
じとーとした目で見られる。
「自信を持つことは悪い事じゃないだろ?」
「まあ.....そうですけど」
なんとなく不服そうな目だった。
「そういえばお前らは学園に通わないんだな。お前まだ15とかだろ?」
メイド達は学園に通っていないが、晴香は年齢的に学園に通う年齢の筈だ。通っていないのは聊か不自然だ。メイドの業務を優先していると言われたらそれまでだが。
綾香の机の引き出しにあったあれが関係しているのかもな。
「学園ですか......私たちはメイドだから…」
「メイドだって学園に通うだろ?」
そんなことは無いのだろうか。
「通いたければ通うって感じだと思うよ!私たちは今のままで十分だから」
「そんなもんなんだな。すまないな変な事聞いて」
「全然大丈夫だよ!ちょっとは学園に通ってみたいって思ったこともあるしね~」
晴香と色々話していると咲良が戻ってくる。
「おまたせ。次からはなるべく遅れないようにね」
「おう、すまないな」
結構勝気というか気が強いと思ってたが、意外と優しいというかなんというか…。
やるべきことは色々ある。
例えば下層区域の調査、土曜日のデート(デートと言って良いのだろうか?)、メイドの机にあった紙の調査等など、挙げればキリがない。
優先順位を付けるならば、下層区域の調査だろうか。優先順位は完全に自分の興味があるかどうかだが。
少し計画を立てた方が良いだろう。
「うーん。土曜日は下層区域の調査と麗との約束で一杯だからな……。メイド達の秘密の調査は…来週以降だな」
っと、そろそろ風呂だな。
「自分の事すら分からないのにな……。自分の手掛かりが無いからどうしようもない」
そういえば自分の事を調べるのを辞めてしまっていたな。
夢に出てきた女の顔だってもう覚えちゃいない。
自分のことは相当先になってしまうんだろうか、誰も知る由はないな。
取り敢えずは土曜日に下層区域を調査することだ。それに備えて準備をしなければいけない。
下層区域への調査は俺しか知らない。準備も悟られなければならない。
「必要なものつっても、どんなとこか知らんから知る由もないけどな!」
取り敢えず食べ物さえ持っていけばいいだろう。金なんて俺が持っている訳もないしな。
ああ、あれは持って行っとくか。一応な。
そんな訳で土曜日までは大人しく過ごしておこう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます