第14話

初日から色々あった気がする学園生活だったが、なんとか初日を乗り越えることが出来た俺は現在屋敷に戻っていた。


翼は屋敷に着くなり、自分の部屋に直行していった。俺はと言うとメイド達が現在不在なのでメイド達の秘密を知るべく調査をしている所だ。


メイド達がいつ帰ってくるかも分からないため、悠長にしている暇はない。今はただメイド達に関する情報だけを探そう。


やはりメイド達の寝ている部屋を調べるべきだろう。流石にあいつ等のことだ、鍵は必ず掛けてから出かけているだろう。そうなったら侵入できるのは窓くらいだろうか。しかしながら、メイド達の部屋は2階である。窓から侵入しようとするには普通ならば梯子などが必要だろう。


だが俺には必要が無い。そのままよじ登れば可能だ。


「まあ、窓の鍵が閉められていたら諦めるしかないけどな」


窓の鍵が閉まっているならば諦めるしかないだろう。部屋に侵入するには窓のガラスを割って入るくらいだ。ガラスを割るのは難しいことではない。しかし、メイド達は俺を怪しむだろう。自分たちの居ないときに限って窓が割れるなんて普通起きないからな。


窓の鍵が開いていることを祈りつつ屋敷の外に出て外壁を上り始める。監視カメラもあるだろうが、いちいち確認することは無いと思いたい。この屋敷に来て初日にも思ったが、そもそもセキュリティが甘すぎる気がする。俺は他の屋敷を知らないため、あくまで予想というか、ふとそう思っただけだが…。


「っし。空いてっかな?」


そんなこんなでメイド達の部屋の窓まで来た。勿論部屋の電気は点いていない。


窓に手を掛ける。


「なんだ不用心じゃねぇか。あいつ等」


意外なことに窓の鍵は閉められて居なかった。特にテープなどで空いたかどうかを調べる罠なども見当たらない。


窓の外から暫く部屋の中を観察し、特に問題が無さそうなので中に入る。


メイド達は全員同じ部屋で過ごしていると聞いた。


このデカい部屋を見る限りあの言葉は真実だったのだと感じさせられる。


「にしても秘密って形として有るものか?」


ここに来て俺の馬鹿さに呆れる。


それこそあいつ等の部屋に血だらけのナイフなんてあったらそれこそ秘密なんだろうが…。


そんなことは無いだろう。そうなると俺のしていることは非常に無駄なことではないだろうか。


「まあいい。調べるだけ調べるか。どうせ暇だしな」


暇つぶしには丁度いいだろう。いつもの夕食まではまだかなり時間はある。あいつらがいつ帰ってくるか知らないが、すぐに帰ってきても窓から飛び降りればいい話だ。


「まあ定番なのは引き出しだよな」


机自体はメイドの数だけある。すべての机を開けてもいいが、晴香と優菜の机に秘密につながる物を入れるとは考えにくいな。


となると、咲良か綾香の机を調べるのが良いだろう。


「どれが誰の机かわからん…」


という事なので全ての机を開けることにした。


「これは優菜だろうな…。分かりやすいもんだな」


初めに開けた引き出しは優菜のものだろうと予想ができた。引き出しの中には少女漫画がいくつか並んでいた。ほかにもカチューシャやヘアゴムなどが散乱していた。


これで優菜じゃ無かったら逆に怖い。


特に何も無さそうだったため次の引き出しを開ける。


「これは咲良だろうな。料理本なんてあいつしか読まなそうだ」


引き出しの中は料理本でいっぱいだった。


その他は特に何かあるわけでもなく、料理一筋の引き出しだった。


「次は誰の引き出しかな」


次の引き出しは翼の写真やメイド達の写真で一杯だった。なんだこれストーカー??


と思うような写真の量だった。


美穂?だろうか。


消去法で行くならば美穂だろう。これは見なかった事にしておこう。触らぬ神に何とやらだ。


あの有り余る母性はメイドと翼に向かっているようだった。


「気を取り直してっと」


これは…..舞だな。ファッション誌と思われる雑誌が多い。その他には意外なことに読書家なのか、小説があった。ここにも秘密につながる物は無さそうだ。


「ってことは残りは晴香か綾香か」


次の引き出しは……これは晴香だな。優菜と同じくヘアゴムなどが散乱してる他、植物図鑑?いや、花の図鑑があった。確か晴香は業務が庭の手入れだった筈だ。花が好きなんだろうな。


「残りは綾香のみか」


これは望みが薄いな…。と思いつつ綾香の引き出しを開ける。


「これは……?契約書か?」


引き出しの中には色々入っていたが、クリアファイルが目に留まる。そのファイルの中には契約書と思わしき紙が入っていた。


この屋敷との契約書とも思ったが、そうでは無い様だ。


「これは……。なるほどな」


この内容が本当のことならば、あいつ等がここに居る理由がなんと無く予想が付く。


にしてもこんな紙を引き出しに入れておいて良いのだろうか。綾香の性格からしてこんな不用心なことはあまり考えられないが…。


「孤児院ねぇ。物騒な世の中じゃねぇか」


契約書の内容にはメイド達が孤児院で育ったという事などが記載されていた。その他の部分がなかなか気色が悪いが。


「そろそろお暇するかね」


収穫はあった。もうここに居る必要もないだろう。


最後に箪笥の引き出しを開ける。箪笥の中にはメイド達の下着類や靴下がと入っていた。


「ここでいいか」


俺はその中に手を入れる。


ガサゴソと中を弄り獲物を引き上げる。


俺の手には誰かのパンツが握られていた。俺はそのパンツを顔に近づける。


「くっさ!!!!!」


…………。虚しくなってきたのでやめる。パンツを箪笥に戻した。


実際は洗剤の少し甘い香りが鼻を抜けていったため臭いなんてことは無かった。


この奇行は俺以外知る由もなかった。


流石に時間も時間なのでそろそろ自分の部屋に戻る。

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