第15話
部屋に戻り日課になりつつある読書に耽っていた。
思っていたより集中していたのか、メイド達は既に屋敷に帰ってきており、夕食の用意が出来たと言う報告があった。
食堂に着くと既に翼を含め全員揃っていた。
なにやら翼とメイド達で話していた様子だったが、俺が来るなり会話が終わったのか席に着いた。
「そういえば連理は学園初日はどうでしたか?楽しかったですか?」
俺が席に着き飯を食おうとしたら翼から問いかけがあった。
「あん?図書館に籠ってた俺にそんなこと聞くのか?」
嫌味で返す。本当は色々とあったが、ここで言う必要もないだろう。
実際図書館に居た時間は午前位なもんだ。
「そうですか。でも毎日図書館ばっかでは退屈かもしれませんね」
それはそうだ。知識を求めている俺でも毎日学園にいる間ずっと図書館で読書は退屈だろう。
「じゃあ学園に行かなくても!?願ったり叶ったりだ!」
まあ偶には図書館に行ってやってもいいだろう。
どうせ学園に行ったらいざこざが起きそうだしな。あの明石くんとか言うやつとかね。
「いえ、そうではなく少し調べてほしい事があるんです」
厚かましくも調べて欲しいだぁ?良かろう。
「調べて欲しい事?なんだそれは」
「下層区域のことなんです。下層区域に関する書物はあまり多くないのですが、何でもいいです。分かった事があれば何でも教えていただけると助かります」
下層区域か。なんでまたそんな所について調べるんだ。まあ暇だし良いんだけどね。
「断らぬ!」
「古いですね」
な!?古いだと……。
「それではよろしくお願いします」
「ったくしょうがねぇ奴だな」
ふんぞり返りながら言う。
「夕飯のステーキ一枚で手を打とうじゃないか」
「えー。じゃあ良いです」
その程度の依頼だったの!?
ステーキ一枚に勝てない依頼やったんか!?
「じゃ、じゃあステーキについてくるポテトで…」
「それも嫌ですね…」
ポテトにも勝てないんか!?
「じゃ、じゃあサラダ……」
サラダなら許してくれるだろう。
「サラダは取り放題ですよ」
………。そうだったな。
「強欲な奴め」
「それでは明日からお願いしますね!」
笑顔が眩しい。ったく、がめついお嬢様なこった。
そんな訳で当分の間の暇つぶしが決定した。
。
。
。
先日頼まれた下層区域について調べろと言う依頼を現在遂行中である。
といっても今は図書館で下層区域などについて記されている本を読んでいるだけである。
時間があれば下層区域に行くのも悪くないだろう。実際俺は下層区域に行ってみたい気持ちが強い。
「あんま詳しいことは分かんねぇな」
やはり書物で得られる内容はあまり多くない。そもそも下層区域について記されている書物が少ない。まだ全て読めている訳では無いが、有用な情報が得られるとは思えなかった。
「あら?連理さん今日も図書館で本を読まれているんですね」
九折坂唯だ。最近は図書館にずっと籠っていたため唯と会う機会も増えていた。
唯は学園初日にも異能について色々教えてもらっていた。
下層区域についてもなにか知っているのでは無いだろうか。
「ちょっと下層区域について調べているんだ」
「下層区域…ですか?」
まあ物好き以外調べる事なんて無いだろうな。
「ああ。ただの興味だけどな。何か知ってたら教えてくれると助かる」
「私もあまり詳しくはありませんね……」
「まあそれが普通だよな。悪いな変な事を聞いて」
「いえ、大丈夫ですよ」
「まあ、暇があったら直接行って確かめて来るよ」
「えっ!?行くんですか!?」
何か可笑しいのだろうか。確かに治安が悪いことも知っているが、そこまで驚くことでは無いだろう。
「危ないか?」
「そうです!あそこは人が立ち入る場所ではありません!」
「俺…実は人間じゃ無いんだ……」
「え!?本当ですか!?」
「嘘に決まってんだろ。こんなイケメンな人外が居てたまるか」
「………。」
「なんか言えよ!俺が変人みたいだろ!?」
「変人じゃないですか……」
「そんなことはない。因みに趣味は翼のパンツを食べる事だ」
「変人じゃなく変態でしたか…。救えませんね」
「冗談だ。真に受けるな」
此奴らは疑うことを知らんのか。
「本当に下層区域に行くのはやめた方が良いですよ」
やたら警告をしてくる。なにか下層区域であったのだろうか。
…無駄な憶測はよそう。
「そこまで言うならもう行かねぇよ」
「それなら良かったです!本当に危ないんですから!」
そんな危ない所ねぇ。俄然興味が出てくるというもの。誰にも知られずに行けば良いだろう。
今度の土曜か日曜あたりに行ってみよう。
「ああ分かった。そうだ、昼飯は一人で食うのか?」
「いえ、生徒会室で生徒会の人たちと食べる予定ですよ」
「そうか、良かったら翼と一緒に食べようと思ったんだがな」
此奴には色々聞いておきたいことがあったんだがな。
「むむ…。翼ちゃんと一緒ならば良いかも知れませんね」
「大丈夫なのか?勝手にほかの奴と飯を食べるのは」
「まあ連絡を入れておけば問題は無いでしょう。翼ちゃんとご飯なんて久しぶりです~」
という事らしい。幼馴染ってやつだから仲は良いんだろう。
「じゃあ昼休憩に裏庭のベンチに来てくれ」
いつも翼と食べている場所を教える。
「わかりました。ではまたお昼時間に」
そういい図書館から出ていった。
俺は特に昼まで暇なので下層区域について調べておくことにした。
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