第12話
「いい汗かいたぜ。汗も滴るいい男ってな!」
誰もいないグラウンドで独り言つ。
そろそろ翼のもとに向かおう。確か本棟の三階だとか言ってた気がする。
俺は楽しみの一つである咲良のご飯を求め翼のもとへ向かう。
行く途中でいろいろと見られたが気にしないでおこう……。
本棟に着くといよいよ視線が気になってくる。特に女からの視線が多いようだ。
「何だってんだ。おい、翼どこに居るか知ってるか?」
俺の方を見てひそひそ喋る女に聞く。
「はひっ!?」
はひってなんだはひって。
「翼の居場所知らないか?そこに行きたいんだが」
顔を赤くしながらどもる女。
これは…俺の美貌にやられてしまったようだな!!
罪な男だぜまったく(自画自賛)
「つ、翼ってあの飛鳥翼さんでしょうかっ!」
「そうそう。案内してくれ」
もう面倒くさいので案内を頼む。
「はひ!!任せてくださいっ!」
名も知らない少女よ。
翼のもとに向かっている最中に色々質問攻めされたが、まあいいだろう。
翼の許嫁なのかとか、彼女は居るのかだとかだったし。
「いやぁ助かったよ。ありがとうな」
そういい名もなき少女と別れを告げる。
「おーい翼-!飯!!!」
教室に入るなり言い放つ。
教室に居る奴らがぎょっとした顔で見てくるが無視する。
「連理さんあまり大声を出さないでください!」
翼が慌てたように言う。
「良いだろ別に。昼休みだろ」
「そういう問題じゃありませんが…。まあいいです。お昼にしましょうか」
「どこで食うんだ?まさかここで?」
弁当は翼が持っているためどこで食うのかは翼次第である。
「ここでも良いですが、視線が気になるので中庭で食べましょうか。」
という事なので中庭で昼食を食べることが決定した。
周りの奴らがぽかんとした表情で俺らを見ていた。
「おい!お前!」
この声は明石何某とか言う奴の声だったか。
「なんだお前。喋りかけてくんじゃねぇよ」
「なっ!?お前飛鳥とどういう関係なんだよ!」
俺と翼の関係?
何故こいつに教えなければいけないのか。
「なんでお前に教えなきゃ行けねぇんだよ」
「なんでって…お前使用人にしちゃ随分飛鳥に馴れ馴れしいじゃないか!」
「俺が翼に馴れ馴れしくてお前になんの問題があるんだよ」
「うるせえ!質問に答えろ!」
なんだこいつは。頭がおかしいんだろうか。
まあでもこの感じはこいつ翼のことが好きなんだろうな。
俺は面白いことを考え着く。
「俺と翼ね……。そうだなセフレだセフレ。悪かったな愛しのお姫様を奪っちまって」
こいつからすると一番ダメージがデカいだろう。
なぜか女子の顔が真っ赤だが…。お嬢様には刺激が強すぎたかも知れないな。
「嘘をつくな!!飛鳥がお前なんかとそんな事するわけないだろ!?」
答えろと言ったり嘘をつくなと言ったり、忙しい奴だな。
「なんで嘘って言い切るんだよ。翼に確認とったのか?ああ?」
「そんなこと確認するまでもない!だろ飛鳥!?」
確認しやがった此奴。本当のバカなのか。
「あなたには関係の無いことですよ明石さん。早く行きましょう連理」
ぶった切られていた。南無さん明石。
「俺は悪くないぞ。絡まれたんだ」
「そんなの相手にしないでください」
怒涛の連続で明石もクラスの人間もポカンとした顔で立ち尽くしていた。特に男子が。
女子は黄色い声を上げていたようだが…。
「なっ!?ちょっと待てよ!!」
後ろから明石何某の声が聞こえてくるが俺たちは無視して教室から出る。
「連理はもう少し言い方を覚えた方がいいのかも知れませんね。敵を多く作ってしまいそうです」
「あいつだけだ。鬱陶しいからな」
ああいう奴らに下出に出るのは俺のプライドが許さない。俺プライド高いから!
「あと変な冗談は辞めてください。変な噂が立ったら厄介じゃないですか…」
「それはほら、明石何某を困らせたくてだな……」
やはり気になっていたようだ。俺も少し言い過ぎたとは思うが。セフレはアウトだったか。
気が収まらないのかムスっとした顔でこちらを睨んでくる。
「………………すいませんでした」
「よろしい。今度からはご主人様って言ってくださいね」
やっぱ翼ってサドの毛があるような……。
「俺がご主人様な」
一気に翼がマゾになってしまった。
「バカなこと言ってないでご飯にしましょう」
お前から言い出したんだ……。
まあ飯が食えるならいいけど。
「わーったよ。早く弁当くれ」
咲良手づりの弁当を受け取る。
弁当箱は結構大きく、お重と言われてる部類の奴じゃないだろうか。
翼の方は通常のサイズだったが…。
お重を開けると鶏肉を主軸にタンパク質豊富な料理が所狭しと入っていた。
「あいつ俺のこと大好きかよ。ツンデレめ」
昨日は弁当のリクエスト却下されたのにな。優しいところもあったもんだ。
「連理に文句を言われたくないからじゃないでしょうか」
俺の自意識過剰を横から刺してくる。
「あいつの作ったもんなら文句なんて言わねぇんだけどな」
「咲良の作る料理は格別ですよね。感謝してもしきれません」
翼も咲良の料理をべた褒めする。たしか俺が来た初日には咲良に料理を教わっていた記憶がある。
そんなこんなで弁当を食べ始める。
中庭は人気が少なく、俺たち以外は来ていないようだった。
学食が人気らしいからそっちに集まっているのだろう。
「そう言えば、九折坂唯って知ってるか?今日図書室で知り合ったんだ」
そういえば図書室で少女と出会ったことを翼に報告する。
「はい。昔なじみですよ。中もそこそこ良いと思います」
「家の付き合いってやつか。大変そうだな。」
学園で知り合った可能性もあるだろうが、なんとなく家の付き合いな気がした。
「そんな事ないですよ。唯はいい子ですし、家同士の付き合いと言っても親が仕事の話をしている間は二人でよく遊んでいましたから」
「あいつも似たような事言ってたよ。九折坂って聞いたことあるんだが、有名なのか?」
どっかで聞いたことある気がするんだよな。
「有名もなにも、優秀な政治家を輩出している名門ですよ」
思い出した。確か前読んだ本に出ていた名前だ。
異能に関する法律を作ったって言う。
それで聞き覚えがあった訳か。
「とんでもねぇ大物じゃねぇか!」
俺はそんな奴に、お前って声を掛けたのだと思うと恐ろしくなる。
ナニが縮んじゃうぜ。
「連理と唯が会っていたのは意外です。唯って生徒会ですから忙しいのに…」
生徒会って言ってたな。とても忙しいようには見えなかったけどな。
「今度は口の聞き方に気を付けよ…。消されたら嫌だし」
「大丈夫ですよ…。唯は優しいですから。言葉使いでどうこうする子じゃありませんよ」
たしかに。それは話してるとなんとなくわかった。
とても温厚で接しやすかった。お嬢様はもっと傲慢なイメージだったが、そんなことも無いようだ。しかも巨乳。そう巨乳である。顔を埋めたくなるような。翼にはない物だ。
「連理。今変なことを考えましたね」
変なとこで勘が鋭い女だな。
「ああ。今晴香にどんな悪戯をしようか考えていたところだ」
尻でも叩いてバンドを組もう。それがいい。
「あまり晴香を揶揄わないで挙げてくださいね。確かに困った顔が可愛いですけど」
あのチビはなかなか揶揄い甲斐がある。リアクションが面白いからな。
「俺の唯一の趣味なんだ。止めないでくれ」
「悪趣味ですよ。ほんとにもう……」
「悪趣味とはなんだ悪趣味とは。だったらいい趣味ってなんだよ」
今の俺に趣味なんてものは有るのだろうか。筋トレは趣味というより日課だ。
何か趣味を作るのもいいかも知れないな。
「そんなことより、学園であまり無茶しないでくださいね」
無視とは中々。無茶とは喧嘩やトラブルのことだろう。
確かに今のままだったら明石とか言う奴に喧嘩を売られるだろう。
「まあトラブったらそれは俺のせいじゃないな。俺は喧嘩は買うタイプなんだ」
「まったく…。もしかしたら学園に連れてきたのは良くなかったかも知れませんね…」
全くって言いたいのはこっちだぜ。全く。
俺は命令を聞いただけだというのに。
「まあ何があってもお前に迷惑は掛けねぇよ。誓ってな」
心からの言葉だ。今の暮らしを邪魔されたくない。うまい飯、毎日入れる風呂、ふかふかのベッド、どれも翼から離れたらもう手に入ることは無いだろう。
「ほんとに…口が軽いんですから」
満更でもなさそうだ。嬉しそうに口元を覆っている。
「俺は有言実行する男だ安心しろ」
「そういうところです」
という事らしい。
口の軽さは体に染みついているらしい。
そんなやり取りをしつつ昼食を満喫した。
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