第2話 少しでも一緒にいたいから 少しでも話したいから

僕はカナのことをほとんど知らないまま、カナは僕のことをほとんど知らないままなのに、唐突に両想いということで友人たちの興味と親切心?で始まったお付き合い。


カナが僕を意識したのは、まだ夏休みに入る前。

別の女の子と歩いてるところを見かけ、グラウンドでも見かけたことから、だんだんと目で追いかけるようになったらしい。


僕たちが通っていた高校は山の斜面にある住宅地の一角にあるもんだから、ほとんどの生徒が途中まで自転車か電車かバスで坂の下まで来て、高校までの坂道はバスを使って通っていた。


家から高校まで8kmくらいあるので、僕も最初のころ電車とバスで通っていたけど、カナと付き合い始めてからは登校方法が変わった。6~7Kmある坂の前のバス停まで、自転車で行くことにしたのだ。

僕の家とカナの家は方向が違うから、それでも一緒にいられる時間は5~10分増えるくらいだったけど、それでも僕はそれを選んだ。


毎朝の「おはよー」から始まり、一緒にバスに乗りながら高校へむかう。

それだけでも、1日頑張れた。


自転車はしょっちゅうパンクした。今思い返すと、誰かが穴開けてたんじゃね?というくらい、パンクした。あまりにパンクしすぎて、自転車のオジサンが気の毒がって値下げしてくれたことがあったくらい。

それでも自転車で通い、少しでもカナと一緒にいられる時間を増やしたかった。

少しでも一緒にいるために、わざわざ高校から歩いて坂道を下ったこともあった。


カナとの付き合いで覚えたことは、「手紙」だった。

ほぼ毎日、レターセット1枚から2枚の手紙が届く。

折り方も様々で、ちょっと手の込んだ折り方だと元の形に戻せなくなるので、慎重に開かなければいけなかったことも。

僕も僕で、毎日のように手紙を書くようになり、お互いに交換していた。

好きなもの苦手なもの、自分の生い立ち、今日あった出来事など。

今と違って携帯もスマホもないので、電話は「家族」を通す必要があったから、そうしょっちゅう使えない。家に帰ってあれこれ考えながら手紙を書くという行為は、正直楽しかった。


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