初めてのボトルキープは紫煙とともに
@tsuji-dou
第1話 始まりは前触れもなく
僕がカナを意識したのは、高校に入学して初めての夏休みだった。
僕はサッカー部で、カナはソフトボール部。
同じグラウンドで活動していたけど、ソフトボール部は部員が少なく、カナの代はたった2名しかいなかった。うちの学校は進学校で、3年生は5月ころにはほとんど部活に出てこなくなる。だから、カナたちはいつも2人で部活をしていたけど、できる内容は自ずと限られる。
「よく続けられるなあ」というのが最初の印象で、あとは自分の部活で精いっぱいだった。
夏も終わり、2学期の夕暮れ時にグラウンドの隅で座っている2人がいた。
カナたちだ。
ランニングをしていると、ただ座っているだけじゃなかった。
ひざに顔をうずめ、2人とも泣いていた。
「いつも一生懸命やっていたけど、やっぱりしんどいんだろうな。」
気になったのは、多分その時から。
実は隣のクラスだったこと。
実は朝同じバスに乗ることがあること。
「視界に入れば気付く」から「視界にいるか探す」に変わるまで、そんなに時間はかからなかった。
初めて言葉を交わしたのは、帰りのバスの中。
あまりに混雑してた中、たまたま空いてる席に「座る?」の一言。
その日は「話せた」ただそれだけが嬉しかった。
それからしばらくたったある日の部活終了時、同じ部活の同期が声をかけてきた。
「おーい、ちょっと来て」
「なん?」
「ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「?」
「お前、カナのことがスキだろ?」
「!!! ??? 何で知ってる??」
ニヤっ「やっぱり」
「・・・ひっかけかよ」
「ちょっとこい」
帰り支度をして友達についていくと、そこにはうつむいているカナが立っていた。
「え????どーいうこと?」
「そーいうことだ。両想いオメデトウ!!!あとは頑張れ?」
「ちょっと???」
「・・・/////・・・」「・・・/////・・・」
「/////とりあえず帰ろうか?」
「はい・・・/////」
(・・・・どーすんだよ この状況!)
話さないままバスに乗り、バスから降りて、それぞれ自転車に乗って帰路に就いた。
帰ってから唯一カナのことが気になっていたことを知っていた友達の家に電話をした。
「そっかー、良かったやん」
「いや良かったけど唐突すぎて」
「今から今から」
これが始まりの日。
今も懐かしく思うカナと一緒にいた日々の始まりであり
いずれ訪れる、今も少しばかり胸が痛くなるその時に向けての、始まりの日
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